「７日にも逮捕」と「７日にまた逮捕」は同じ意味？: 新聞記事の解読法

2018年02月07日

「７日にも逮捕」と「７日にまた逮捕」は同じ意味？

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　本日は、昨日に続き、新聞記事の変な日付表記法について書きます。

　前回説明した「～日までに」と似た独特の日付に関する言い方として「～日にも」があります。

　例えば、本日の毎日新聞の「『てるみ』社長を再逮捕へ　警視庁」の記事は次のように始まります。
　
　格安旅行会社「てるみくらぶ」（東京都渋谷区、破産手続き中）を巡る詐欺事件で、破産を見越して個人資産を隠したとして、警視庁捜査２課は７日にも、同社社長の山田千賀子被告（６７）＝詐欺罪などで起訴＝を破産法違反（詐欺破産）の容疑で再逮捕する方針を固めた。

　日本語の新聞を読み慣れている人にとっては、よく目にする表現なので特に違和感はないかもしれません。
　この文章は「早ければ７日に警視庁が『てるみくらぶ』の社長を再逮捕する」という意味です。つまり、「７日に再逮捕するかもしれないし、８日か９日になるかも分からないけれども、今のところ再逮捕する方針であることは間違いない」ということです。
　新聞がこのような書き方をするときは、相当な確率で「７日に再逮捕する」のですが、１００％の自信がないのでこのように逃げを打ちます。

　この「にも」は「早ければ」という意味ですが、辞書を見ても載っていません。
　文法的には、格助詞「に」＋係助詞「も」ということなのでしょう。
　辞書通りであれば添加や並列などの意味で使われますが、「早ければ」という意味はないようです（ここは日本語の専門家が見ると間違ったことを書いているかもしれません。もし文法的な正しい解説をご存じの方がおられたら教えていただけるとありがたく存じます）。

　私は日本語が堪能な外国人に新聞記事の説明をしていたときに、「相模さん、この日本語は間違っていますね」と言われて、この「～日にも」がおかしな日本語だと気付きました。

　「正しい日本語」の解釈に従えば、この毎日新聞の記事は「すでに逮捕されている社長が、７日に再び逮捕される」という意味になりそうです。

　この辞書に載っていない「にも」が新聞記事に頻出するのは、文字数を減らすためです。
　「早ければ」を書く必要がなく、「１００％の確証はないけれど、取材の結果、ほぼ７日に再逮捕があります」と書くよりも、はるかに少ない文字数で書き表すことができます。

　普段の会話でこの「にも」を使う人はあまりいないと思います。
　大会社の社長や役員が自分の予定を多くの部下の前で話すときなどに「私は来月にも欧州に出張し、大型案件の契約を行います」と言うことはあるかもしれませんが、かなり堅苦しい場面でしょうね。
　それとやっぱり話し言葉であれば、「先月も欧州に行ったけれど、来月もまた行きます」と言っているように聞こえそうです。
　家族や友人同士で、「今度の土曜日にも遊園地に行こう」と言ったら、やはり「先週の土曜日も行ったけれど、今度の土曜日にまた遊園地に行こう」という意味でしょうね。

　しかし、ニュースの世界では完全に定着しています。
　ざっとしらべたところＮＨＫや民放も「早ければ」という意味で「にも」を使っています。

　「五輪」と同じように、新聞記事がつくった日本語の表現かもしれません。

　引き続き質問をお待ちしています。
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