BC州全域で働く腎臓ソーシャルワーカー達は、毎月一回電話会議を開いて、腎臓ソーシャルワーカー達が直面する問題を提議したり、役立つ情報を交換したり、勉強会を開いたりします。私、この電話会議、実は大の苦手なんですよ。まず、電話会議って集中しにくいんです。参加者が好き放題に会話に出たり入ったりして紛らわしいし、おばちゃん独特の甲高い声が電話のスピーカーからピィーピィーって響くのも耳障りだし(おば様たちゴメンナサイ)、なんか知らないけどみんな怒っているみたいで雰囲気怖いし、やっぱり電話越しだと上手く気持ちが伝わらない気がして、私はいつも会議中は電話のマイクはミュートにして、聞くだけに徹してます(・・・って言うより、聞くフリをして目を閉じて寝ている 笑)。ところがなんと!こんな私が腎臓ソーシャルワーカー電話会議グループの「交通委員会副委員長に急遽任命されてしまったのです!!!

 

 

 

そもそもなぜ、突然私が交通委員会の副委員長になってしまったのか?それは交通委員会の委員長である同僚Rさんに泣き頼まれたからです。現在、この交通委員会の会員は2人・・・私とRさん(涙)。心優しい私は、1人だけで寂しいというRさんを慰めるために、このなんだかよく分からない「交通委員会」に副委員長として参加したのでした。

 

 

 

Rさんが「交通委員会」を立ち上げた理由。それは彼女が最近直面したハンディーダート乗り合いバスの問題が起因しています。ハンディーダート・・・このブログを長く(?)読んで頂いている皆様にはすでにお馴染みのキーワードなんですが、これは高齢者や障害者専用の乗り合いバスで、多くの透析患者さんはこのハンディーダート乗り合いバスを使って透析に通っています。さて、このハンディーダート、援助が必要な人には付き添いの人を無料で乗せてくれます。ところが・・・この付き添いの人がハンディータートの利用者でもあった場合は有料になってしまうのです。そして、Rさんは担当の患者さんAさんから、彼女の付き添いの母親がバス料金を支払っていないとハンディーダートから毎日取り立ての電話攻撃にあっているとの相談を受けたのです。

 

 

 

Aさんは40代半ばで、透析科ではずいぶんと若い患者さんの部類に入るのですが、このAさんは数年前に脳溢血を患い、右半身が不自由で、そして癲癇や新たな脳溢血を起こす危険性を抱えています。Aさんの高齢の母親は、そんな娘の癲癇や脳溢血のサインを熟知していて、また娘の日常の手助けをしているので、必ずAさんの透析には付き添って娘の安全確保に努めています。ただAさんの母親も体は不自由なので、自分の医療診察時にはハンディーダートを使って病院に通っています。これをハンディーダーとは問題視したのです。ハンディーダートによれば、Aさんの母親はハンディーダートの利用者であるのだから、Aさんの付き添い者ではなく、ハンディーダート利用者としてお金を払うべきだと主張。それに対してAさんは、母親は自分の世話の為に透析科へは付き添っていて、母親本人の医療診察時はきちんと別にハンディーダートの予約をしてお金を支払っているから問題はないと主張。その真ん中に立たされているのが私の同僚Rさんなのでした。

 

 

 

しかし私たちが不可解に思うのは、なぜハンディダート利用者でもある付添い人はお金を払わなくてはならないのか?ハンディーダーからは「利用者が付き添い人になる場合でも、ハンディーダートには利用者への責任が生じるからだ」と言うのですが、普通の(ハンディーダート利用者ではない)付添い人をつける場合は、ハンディーダーとはその人がどういう人かも聞かずただ予約者に加えるだけ・・・この付添い人にはハンディーダートは責任を負わないから無料ってことなの???なんだか腑に落ちません。だってハンディーダートを利用してない付添い人だって健康な人とは限らないから突然バスの中で具合悪くなる可能性だってあるし、そもそもハンディーダートが事故起こしたら車内の人全員に責任を取らなきゃいけないはずだし。やっぱりなんだかおかしな話です。

 

 

 

私とRさんからすれば、健常者である付添い人は無料で、障害者である付添い人は有料っていう差別的設定にしか思えないのです。さらに、障害を持っている人には付き添いなど出来ない!という偏見を前提としているようにも思えるのです。Aさんの母親のように、足腰が弱く車椅子でハンディーダートが必要だからと言って、イコール「彼女は他者の世話は出来ない」とはなりません。Aさんの母親は、認知的にAさんの介護は出来るし、また自らの手を使ってAさんの不自由な右側の援助をしているのです。また援助とは必ずしも物理的なものだけとは限りません。Aさんの母親が付き添うことでAさんに安心感を与えているとすれば、この心理的援助も立派な援助と言えるのです。そう考えると、やはりこのハンディーダートのルールはおかしいと思えてなりません。

 

 

 

そこでRさんはこの「交通委員会」を立ち上げて、この問題を解決する糸口としようと決めたのです。そして先日、私とRさんが4月の腎臓ソーシャルワーカー電話会議に「交通委員会」委員長・副委員長という肩書きで参加したのですが、早速みんなから「交通委員会の目的ってなんなの?」と聞かれました。そしてRさんはAさんの例を挙げたのですが、みんなからは「そのケースの問題は理解できるけど、それがこの腎臓ソーシャルワーカー電話会議とどう関係するの?そもそも交通委員会の目的ってなんなの?」と、おばちゃん達の厳しそうなキンキン声が電話口から響き渡ってRさんと私を緊張させます。委員長Rさんは「えっと、えっと、だから、あの、目的は・・・この問題をなんとかしようと・・・あの」としどろもどろになっています。そんなRさんにさらに「うん、だからそれは分かったから、交通委員会とこの電話会議グループとの繋がりは何?目的は?」とキンキン声が畳み掛けてきます。交通委員会はやくも存続の危機か!?

 

 

 

・・・とビビッていたら、他の優しげな声の参加者から「実は私も同じような問題があって、老老介護で付き添う夫婦がハンディーダートからバス料金を請求されて財政的に困るケースが急増している」と私たちに助け舟を出してくれたのです。あ~ありがたや~。でもそうなんです。高齢化がどんどん進んでいるここカナダにおいても、老老介護が標準化していて、ハンディーダート利用者である高齢夫婦がお互いの付添い人となるケースも普通にあります。あとはハンディーダート利用者である高齢者の母親が発達障害のある子供の付き添いでハンディーダートに乗る、なんてケースも増えています。でもこの場合も、両者にバス料金がかかるのです。やっぱりおかしいハンディーダート!

 

 

 

という訳で、Rさんと私、キンキン声の怖いおば様参加者達には、来月の電話会議までには交通委員会としてこの問題をグループ全体が協力して解決できる方法・指針を考えてきます!という先送り対策で、なんとか乗り切った(許してもらった?)のでした。しかしこの問題は、ハンディーダートという企業の政策が関わる大きな問題なので、やはりグループ一丸となって嘆願書なり意見書なりを出すのがベストな方法だと私は思うのです。という訳で、ここはR委員長に頑張ってもらうべく、私は影の支えとなって尽くしたいと思います・・・だって、おば様たちが怖いから矢面には立ちたくないんだもん(笑)。あ~来月の電話会議、気が重い・・・そんな気分にさせるハンディーダート許すまじ!!!!!!