在外邦人と印鑑証明

登記実務

暑いのか寒いのか、はっきりして欲しい坂口です、こんにちは。
朝の冷え込みに応じた格好をしていると、昼間は溶けます。

外国に居住している日本人と売主

日本に不動産を所有しているまま海外に行かれてそのまま在住している方が不動産の売主だったときに、通常ではあまり意識しない不具合が発生します。

印鑑証明書と住所

不動産を売却するにあたって、売主の権利証(登記済証または登記識別情報)だけではなく印鑑証明書も必要です。

日本の役所で印鑑証明書を発行してもらうためには印鑑登録が必要となりますが、住民票上の住所を管轄している役所で登録する必要があります。

裏を返せば海外に住まわれている方は、日本の印鑑証明書を発行してもらうことができません。

売却するとき印鑑証明書が必要なのにどうしたらいいのでしょうか。

在外公館(領事館)と証明書

署名証明

日本に住民登録をしていない海外に在留している方に対し,日本の印鑑証明に代わるものとして日本での手続きのために発給されるもので,申請者の署名(及び拇印)が確かに領事の面前でなされたことを証明するものです。

(外務省 在外公館における証明ページより引用)

署名証明とは、印鑑証明書の代わりとなるものです。
委任状などと綴りあわせで証明してもらうことにより、売主の印鑑証明書の提供に替えることとなるのですが、少々具合が悪いところもあります。

一般的に不動産の売買においては、残代金全額を支払ったときに所有権が移転するという「所有権移転時期特約」が付されています。
決済現場において、不動産の名義を移すための書類(所有権移転登記に必要な書類)が調っていることを司法書士が確認した後に、残金の支払いを行ってもらい、そのまま法務局へ申請書を持ち込むことが通常です。
従って決済の現場で委任状に署名・捺印してもらうことになるのですが、基本的に未来の日付を委任することはできないことになっています。

領事による署名証明を事前にお願いすると、未来の売買日付についての委任状を証明してもらうことになるため、実務上は登記が通る取扱いとなっているみたいですが、少々気持ちが悪いのは私だけでしょうか。

次の証明を使えば個人的にはすっきりします。

印鑑証明

冒頭で印鑑証明書を交付してもらえないという話をしましたが、あくまで日本の役所では登録されていないので交付できないということです。

在外公館でも印鑑証明を取り扱っていますので,同証明を希望される場合には,申請先の在外公館に必要書類等あらかじめお尋ねください。

(外務省 在外公館における証明ページより引用)

実は外務省が正式に在外公館において印鑑証明を取り扱っていると謳っています。

法務局へ照会したところ、この印鑑証明を用いて登記申請の添付書面とすることは可能だという回答をいただいています。
通常の印鑑証明書と同じく3か月という期間制限はありますが、この取り扱いも通常の印鑑証明書と同じです。

従って、在外公館において印鑑登録をし印鑑証明書を発行してもらったら、通常の売買における必要書類と同じ準備で足りることになります。

前提としての住所変更

一般的に不動産の所有権登記名義人住所変更登記を済ますことなく海外に行かれていると思います。
前提として住所変更登記申請を行う必要があるのですが、こちらについてはまた別の機会に。

さいごに

参考とした外務省のページを載せておきます。