團菊祭五月大歌舞伎・夜の部@歌舞伎座 | 明日もシアター日和

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観たもの読んだものについて、心に感じたことや考えたことなど、感想を綴ってみます。

「弁天娘女男白浪」

菊五郎/左團次/海老蔵/松緑/菊之助/團蔵/橘太郎/松也/市蔵/梅玉/種之助/寺嶋眞秀

 菊五郎の弁天小僧はやっぱり良い~。小気味好いセリフ回し、キマるのに自然に見える所作、円熟という言葉しか出てこない自分の語彙不足がなさけないです がーん 女・男の演じ分けは今回も気持ちいいほど見事。お嬢様のときの恥じらう可憐さ柔らかさ、ほんのり漂う武家の娘としての格など、身体に染み付いているというか、内側から滲み出るというか……。手代たちに袋叩きにあってから額を抑えてずっとうつむいているの、大変だろうなと余計な心配を。正体を表す前の、クーッとタメ、かんざしポトリ、ガクッまで、完璧な間合いです(この流れが好き ニコ)。盗賊に戻ってからのサバッサバした演技(袖をたくし上げたりキセルを口にしたりという一連の動き)が、かっこいいという感想しか湧きません。そして、もちろんあの名ゼリフ、名調子。

 左團次との掛け合いがまた限りなく自然でコミカル。数十年らいのお付き合いから生まれた鉄壁の信頼関係、子供の悪友同士のような可愛らしさがありました。

 極楽寺屋根での立ち回りは、正直なところ、さすがに無理を感じてしまった Queenly(この秋76歳を迎えるお方汗)。型で見せるものとはいえ、やはり弁天小僧としての若さ、勢い、キレはほしいから。そのあとの、立ち腹からひっぱってのがんどう返しは豪快なスペクタクルで、菊五郎、頑張ったなーと感涙ですパチパチ

 

 日本駄右衛門は海老さんです。声が今までより通って響く感じがしたけど、気のせい? 浜松屋では菊五郎の存在に負けて大盗賊ぶりはちょっと弱かったものの、山門での所作は華やかで立派、背景と一緒になった絵面が美しいです。全体的にもう少し團十郎さんのようなおおらかさがあるといいのかな。

 菊五郎の話では、今回は十二世市川團十郎五年祭なので海老さんに駄右衛門をやってもらったのだと。で、鳶頭を松助が演っていたこともあったので、そのお役を息子の松也に、と思ったのだそうで、菊五郎、本当にいい人だなー 号泣 松也はやはり声に艶があっていいけど、鳶頭としての威勢の良さより綺麗さが勝っていました きゃぁ~

 番頭さん以下浜松屋手代たちのチームワーク、反応のテンポがすごく良くて、当人たちは真剣なのに滑稽味が出ていていい。

 眞秀くんが丁稚役でした。出番が終わると玄関先の奥、日よけのれんの陰に引っ込みます。そこは私の席の角度から丸見えで、次の出番までちょこんとお行儀よく座っているのですが、口をグニュグニュ動かしたり目をクリクリさせたり、その百面相がキュートでついつい目が行ってしまった キャッ でも菊五郎じいじがセリフを言うときはしっかり見ていましたね、サスガです。

 稲瀬川勢揃で、菊五郎&左團次の名コンビに加えて、海老蔵、松緑、菊之助という、かつての新・三之助の5人が並んだのが豪華。この景色はもう見られないかもしれない。そう思ったら何か込み上げてくるものがありました しみじみ

 

「鬼一法眼三略巻」菊畑

松緑/團蔵/時蔵/児太郎/坂東亀蔵

 浅黄幕が落ちると、縁台に腰掛けている松緑/鬼三太が。頭が小さくて、文楽人形のようでした 冷や汗   稲瀬川勢揃ではあまり気にならなかったから、衣装のせいかな。まあ、言ってもしかたないですが。でも奴姿がホント似合って「ねい、ねい」っていう返答が可愛い。セリフ回しはやっぱり気になったけど、切れモノらしい雰囲気ありました。

 鬼一法眼は團蔵で、初役だそうです。敵役では渋さと色気とがいい塩梅に出てすごく好きなのですが、この鬼一はちょっとあっさりした感じで、重厚さ、貫禄があまり感じられなかったです。見た目は立派なんですが、セリフに説得力がないような……何故だろう。鬼三太と鬼一の、腹を探り合うやりとりも淡々としていて、松緑と團蔵がまだがっつり噛み合ってない感じでした(見たのは初日近く)。時蔵はちょっと女方を感じさせる柔らかさが残るものの、牛若丸としての品性は十分。坂東亀蔵の湛海は、もちろんセリフの歯切れは良くて好きなんですが、悪モンとしては弱い。ニンではないお役だと思うので、ちょっと気の毒でした 凹

 児太郎は若さがあって可愛いなーと思いながら見てましたが、実は早々に意識が薄れる時があって、鬼三太と虎蔵が何やら相談してるな……と思ったあたりから記憶がない がっかり 意識が戻ったときは湛海が知恵内に、まさに切られているところでした Queenly こういう、様式で見せる作品は嫌いではないんだけど(むしろ好き)、今回あまり印象に残らなかったのは、単に、途中で意識が飛んだせいです 苦笑

 

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