2018年6月、メジャーリーグで活躍中のエンジェルス大谷翔平選手が、右ひじの靭帯損傷で、PRP(血小板血しょう)と幹細胞治療を行ったと報道がありました。

実は大谷選手がPRP治療を行ったという報道は、2017年10月にもありました。

同じくメジャーリーガーのヤンキースの田中将大投手も2014年に右肘靭帯の部分断裂でPRP治療を行い復帰しています。

今回の報道で新しいのはPRPに合わせ、幹細胞治療も行ったという点です。

幹細胞は、脂肪組織などから抽出される細胞で、組織の修復促進や抗炎症作用を持っているため、近年、日本では、再生医療法という法律に基づいて安全確保の観点から認可された施設のみで実施されており、自由診療で行われています。

この治療で大谷選手は、故障者リストに載ってから、わずか、1ヶ月足らずという予想外の早期復帰を果たしています。

 

一般にメジャーリーグで行われるのは、トミージョン手術という外科手術ですが、この手術は、移植した腱が靱帯として患部に定着するまでには時間がかかるため、術後には長期に渡るリハビリを行う必要があります。

通常、ここまでの投球を再開できるまでの回復には、約7か月を要するため、実戦復帰には12か月から15か月が必要となり、一般的には術後18か月で故障前と同レベルの投球ができるようになると考えられています。

そのため、完全復帰は早くとも1シーズン、場合によっては2シーズンを要することもあります。

トッププレイヤーのピークでの選手寿命を考えれば、この期間は決して短いものではありません。球団やファンに取っても大きな損失です。

 

そこで、選ばれたのが自分の血液(PRP)や脂肪(幹細胞)を用いる細胞治療です。

これらの治療は、体への負担が少なく、ダウンタイム、つまり治癒に要する期間が、大谷選手の例を見てわかるように圧倒的に短くて済みます。また治療の負担やリスクも非常に少ないので、まずはこの治療で様子をみようというケースは、これからも多くなってくると思われます。

 

メジャーリーグのみならず、ヨーロッパのサッカーリーグの年俸数十億というトッププレーヤーを複数抱えるチームでは、シーズンオフに選手たちの脂肪幹細胞を保存し、シーズン中の故障に備えているという話も聞いています。

このPRPや幹細胞治療は、トップのスポーツ選手だけの治療ではなく、多くの高齢者が罹患する変形性膝関節症の治療の選択肢としても近年急速に普及が進んでいます。

人工関節などの大手術を避けて、早く復帰したいという思いは、事情や立場が違っても、誰にでも共通の願いと言えますね。