2018年7月14日

 この秋四十年の法定寿命を迎える東海第二原発(茨城県)が、施行から五年の新規制基準に「適合」と判断された。運転延長の審査はより慎重に進められるべきなのに、どうしてそんなに急ぐのか。

 原子力規制委員会とは、福島第一原発事故の反省に基づいて、巨大な危険をはらむ原発を、名前の通り「規制」する機関ではなかったか。その規制委が、日本原子力発電東海第二原発は、3・11後に改められた原発の新規制基準に「適合」すると判断した。

 東海第二は一九七八年十一月に運転を開始した。この秋、四十年の法定寿命を迎える古い原発だ。

 ただし、より厳しい審査に通れば、一度限り二十年の運転延長が可能なルールになっている。

 東海第二の再稼働には、このあと十一月までに、運転延長の審査にパスする必要があり、それには三、四カ月かかるという。スケジュール的にはぎりぎりのタイミングで出た適合判断だったのだ。

 十数基の再稼働審査が並行して進む中、規制委は最優先で事を進めた。その上審査の中身も甘い。 例えば総延長千四百キロメートルにも及ぶ電気ケーブルは、本来すべて燃えにくいものに取り換えるべきなのに、原電側が示した対策では、交換するのは四割弱。残りは防火シートなどで覆うという。それでも“合格”なのである。

 東海第二が認められれば、延長はすでに四基目だ。そもそも運転延長は極めて例外的な措置だったはずである。これでは、再稼働の後押しだ。3・11以前への後戻りとの批判が出ても仕方あるまい。

 原電は、原発による電気の卸売事業者だ。保有する四基の原発のうち、東海と敦賀1号機はすでに廃炉作業中、敦賀2号機は直下に活断層の存在が指摘され、再稼働は非常に困難な状況だ。東海第二は最後の砦(とりで)である。

 電力会社の台所事情への“忖度(そんたく)”が、もし働いているのなら、規制委への信頼も地に落ちる。

 原電は地元東海村だけでなく、県都水戸市など三十キロ圏内の周辺五市とも安全協定を結んでいる。そこに暮らす百万人近い住民の理解を得なければ、再稼働はありえない。

 規制委も原子炉の機械的な安全性だけでなく、避難計画の是非など人間の安全と安心にも踏み込んで、規制機関のあるべき姿を国民に示すべきではないか。本来それが、国民が期待する規制委の役割なのではなかったか。
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