トーキング・マイノリティ

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セクハラについて

2018-04-19 22:10:18 | 世相(日本)

 昨年からセクハラ疑惑で、各界の名士や政治家などが相次ぎ辞任に追い込まれた欧米諸国。その動きはついに日本でも本格的に連動したらしい。ここ数日前から、財務次官や新潟県知事のセクハラ疑惑を取り上げないメディアは皆無といってよい。社会的地位を傘に着て、セクハラしまくっていた男どもが失脚することに、快哉を叫んだ女たちも多かっただろう。
 一見、女側の“前進”にも思えるが、セクハラというものは実に複雑な問題であり、多くは泣き寝入りとなっているはず。また今後は権力闘争の手段としても利用されるようになるだろう。

 セクハラという言葉か日本社会に広まったのは、'80年代後半だろう。私が社会人となったばかりの'80年代前半は、まだセクハラという言葉は存在せず、その概念さえなかった。当時職場では男性上司や先輩は触りまくりだったし、抗議どころか声も上げられない有様。職場でお触りに遭わなかった若い女性は、ひょっとして少数派だったのか?
 触られる身体の部位の殆どは臀部と思われるが、胸だったケースもあっただろう。お触りされても笑って耐える他なかったし、怒りを表せば返って女の方が「大人げない」と非難される、そういう時代だった。

 私も社会人になったばかりの頃にお触りに遭ったが、尻を触れるくらいで済んだし、性的関係を強要されたのではなかったから、“被害”としては軽い方だった。現代は違ってきたかもしれないが、かつて被害に遭わない女は余程性的魅力がないとさえ言われていたほど。私の友人(女)はセクハラ視されるのは人による、と言ったことがあるが、嫌な相手に触れられるのは男でも不快のはず。

 wikiのセクシャルハラスメントに目を通したら、この言葉は、「1970年代初めにアメリカの女性雑誌『Ms』の編集主幹でラディカル・フェミニストグロリア・スタイネムらが作り出した造語とされる」とか。米国でセクハラ行為が人権法に違反する性差別であると認められたのは1986年、意外にこの国でも遅い。
 往年のフランス映画ファンなら、ジャン・ギャバン主演の『ヘッドライト』を憶えているだろう。ТVでこの作品を見た時、雇い主か客だったかは忘れたが、ウェイトレスの尻を思い切り叩くシーンがあった。しかも2人きりではなく、人のいる店内での行為なのだ。このシーンには驚いたが、制作が1956年の映画だし、公衆の面前で女の尻を叩くのは問題にもならなかったのか?現代フランスは違うかもしれないけど。

『ヘッドライト』とは対照的に、米映画『ディスクロージャー』は女がセクハラを仕掛けている。女上司の誘いを断った主人公は、逆にセクハラされたと女が訴えるストーリー。完全に濡れ衣だが、女の立場を利用しての攻撃に主人公は追い詰められていく。セクハラ被害者=女の固定観念を覆した作品は、制作が1994年だった。
 現実には被害者の大半は女にせよ、男もセクハラ被害に無縁とは限らない。wikiのセクシャルハラスメント解説には次の一文もある。
一方で仕事や人間関係で対立していたり、自分が気に食わない人間を陥れるためにセクハラをでっちあげ、悪質な場合は痴漢冤罪(虚偽告訴罪)などで貶める事例も存在する

 21世紀の日本にはセクハラで辞めた情けない村長もおり、宮城県・大衡村跡部昌洋氏がそう。当然地元紙・河北新報は報道しており、2018年02月07日付電子版によれば、判決は4月24日で仙台地裁で結審とある。前村長は「関係を強要したことはなく、互いに好意があった」と主張、セクハラやパワハラ行為を否定しているそうだ。
 被害者の女性職員の訴えによれば、計10回以上に亘って性的関係を迫られただけでなく、2014年7〜11月にかけてメール約1,300通を送られたという。これが事実とすれば、1日につき数回はメールしていた計算になり、田舎村長ってそれほど暇なの?と呆れたものだった。平成元年に芸者とのスキャンダルで、在任期間が69日となった総理もいたが、こちらはセクハラとは言わない。

 性的な面が強調されるセクハラだが、実際はパワハラの一環なのだ。男が加害者、被害者は女とは限らなくなっているのも、問題が複雑化してきたといえる。一昔前のお触りなら分り易いが、どのような行為がセクハラと定義されるのか、判断も難しい。キスや性的関係の強要は論外だが、猥談もセクハラに含まれるとすれば、職場では雑談にも気を使うようになってしまうかも。これが仕事にどう影響するだろう?
 セクハラ加害者といえば中年男性を連想する方が多いだろうが、2018/01/11付 Forbes JAPANの記事「職場のセクハラ、米国の加害者は大半が「30代以下の同僚」」は興味深い。意外なことに調査結果では、米国の一般的な職場におけるセクハラ加害者の7割以上が40歳未満の男性だったという。そういえば、かつて私にお触りした男性上司は30代だった。

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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
藤原頼長 (スポンジ頭)
2018-04-21 10:40:23
 おはようございます。

 セクハラ・パワハラと言えば、日本で言えば藤原頼長ですね。この場合相手は同じ男性、しかも権力闘争に結びついて日本の歴史も動かすので非常に影響が大きいのですけど。
 近頃は大河ドラマでも描かれるようになったので知られるようになりましたけど、その当時は逃げ道もなくどうしようもなかったでしょう。

 吉川英治の「新・平家物語」にも登場し、学校の図書室にあったので読んだことがありますが、執筆された時代が昭和30年代前後だったので、さすがに頼長のそのような面は一切描写がありませんでした。

 研究者が頼長の日記を読んで困り果てたそうですが、そのような問題に興味のない人にとっては大変だっただろうな、と思います。
Re:藤原頼長 (mugi)
2018-04-21 22:40:42
>こんばんは、スポンジ頭さん。

 そういえば、藤原頼長がいましたね。思いのままにセクハラ・パワハラを行った人物でしたが、このような権力者では周囲の男性は、さぞ気が休まらなかったでしょう。当時は男色にそれほど厳しくはなかったと思いますが、彼に目をつけられたら逆らえなかったと思います。

 吉川英治の「新・平家物語」は未読ですが、大河ドラマになりましたね。父の付き合いで見たのは子供時代だし、殆ど憶えていませんが、藤原頼長の政敵・信西の最後が印象的でした。

 研究者にとって頼長の日記は貴重な史料ですが、困った内容もあった。当人もまさか自分の日記が後に庶民に読まれることになるとは、想像も出来なかったでしょう。
この議論は拡散するばかり (のらくろ)
2018-04-22 10:43:33
まぜっかえすバカどもが多すぎて、男の側も女の側も落ち着いて議論できない。誰もかれも、己のために性的被害者を利用し様とするヤツばかり↓
ttp://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1964773.html
ttp://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1964763.html
ttp://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1964654.html
ttp://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1964654.html

リンクが難しくてUPできなかったが、この話題の討論番組MCが、生放送中に女子アナのケツを堂々と触ったヤツってことでもって、真剣に議論するのがバカバカしくなる。
Re:この議論は拡散するばかり (mugi)
2018-04-22 21:13:27
>のらくろ さん、

 そもそもメディアに出ている男女は、落ち着いて議論する気は端からないでしょう。「マスコミによるパワハラ」という主婦ブロガーさんの記事がありますが、全く言い得て妙でした。
https://blog.goo.ne.jp/hahasaurs115/e/df4ed2b4cb59ab62c72c0086b77467f5

>>この話題の討論番組MCが、生放送中に女子アナのケツを堂々と触ったヤツってことで

 ひょっとすると、み○も○たのことでしょうか?以前動画で見ましたが、堂々とお触りしていましたよね。これをセクハラと言わずして、何をセクハラと言うのか。
 この件で鋭い記事を書いた男性ブロガーもいます。マスコミ各社の幹部連中など、「若い女を派遣して利益を得る女衒(ぜげん)とちっとも変わりない」。
http://kurokiyorikage.doorblog.jp/archives/68712787.html
youtube動画から (のらくろ)
2018-04-23 23:16:31
この動画(というより静止画と音声ファイル?↓https://www.youtube.com/watch?v=Wc43Jq3XuVI

6分30秒あたりからの、杉田水脈議員のオピニオンは一聴に値する。というか、これが普通かつまともな主張だろう。動画冒頭の夜盗のアホながなり立てにはうんざりする。
Re:youtube動画から (mugi)
2018-04-24 22:15:24
>のらくろ さん、

 ご存知でしょうけど、既に財務省の「セクハラ問題」でテレ朝の被害女性やその上司の顔や名前がネットで挙げられています。そのきっかけを作ったのが夜盗議員だから、端からハメるつもりだったと疑われても当然ですよ。
 杉田水脈議員の主張は、同性からも納得です。セクハラのような和製英語ではなく、性犯罪、性被害というべきというのは大変結構。強姦をレイプに言い換えるのも不愉快です。

 前回に続き、この件で読ませられるブログ記事をリンクします。「「私も!」という女の議員/便乗する斜陽左翼」のタイトルが全てを物語っている。
http://kurokiyorikage.doorblog.jp/archives/68713360.html
ダブスタ極まれり (のらくろ)
2018-04-26 12:52:34
開いた口が塞がらないとはこのこと↓
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1965233.html

夜盗、ジャニー&メリー喜多川の辞任、引退要求はどうした?
Re:ダブスタ極まれり (mugi)
2018-04-26 21:43:32
>のらくろ さん、

 実は今日の河北新報・社会面でも、「山口達也メンバー」と報じています。コメントを見ると、news every.では「山口メンバーの所属先事務所」と報道していたそうですね。しかも事件が起きたのは2月。↓のコメントが全てです。

174: 名無しさん@恐縮です 2018/04/25(水) 21:00:55.74 ID:YIQEb9g30
テレビマスコミは大手芸能事務所には忖度します!

 自民党が関係していないため、夜盗はダンマリ。テレビマスコミは大手芸能事務所+野党には忖度します。
古い記事にどうかと思ったが (のらくろ)
2018-05-26 12:04:18
最近の記事ではここがよくフィットするかなとカキコした。
ttp://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1968256.html

「この議論は拡散するばかり」で取り上げた野盗議員のうち、フクシマとかエダノとかの弁護士上がりは「ショウネンホウガー」とか喚くのだろうが、私は投稿にあるように名前、大学名は勿論顔写真も晒し、当然死刑、しかも首吊りなんて生易しいものではなく、火炙り程度の刑にすべきと考える。
Re:古い記事にどうかと思ったが (mugi)
2018-05-26 22:40:06
>のらくろ さん、

 一ヶ月近く前の記事は全く古くはないので、御気兼ねなく。名無しで十年以上前の記事にカキコしてきた者までいますから。

 件の記事は私も見ております。小学3年の女児の前でわざと財布を落とし、財布を拾って追いかけてきた女児を脅してコトに及ぼうとしたヤツですが、やり方が卑劣すぎますよね。コメントでも散々罵倒されていますが、↓のカキコに同意する人が殆どでしょう。

239: 名無しさん@1周年 2018/05/24(木) 18:36:08.26 ID:cqxvo/4V0
顔と名前と住所と大学を出さないとまた被害女児が出るだろ
未成年に配慮するより地域社会に配慮しろよ

 幸いなことに女児が途中で泣き出したため、今回は未遂で終りましたが、この類はまたやるはず。同じ19歳でも彦根警察官発砲殺害事件では、実名と顔写真を掲載した大手メディアもあります。
https://www.asahi.com/articles/ASL4D61QRL4DPTIL018.html

 上司を射殺する現役警官は論外ですが、女児のいる親にとって19歳の大学生の方が遥かに危険人物です。野盗議員の女児が標的にされたら見物でしょうね。