今、持っている僕の携帯電話は、もう10年近く使っている。　いわゆるガラケーというやつだ。



　相変わらず持ち歩くことはせず、家に置きっぱなしで、もはや携帯電話とは呼べないかもし



れぬが、理由はある。　まずかかってこない。　かけない。　そして、電車の中など、皆、いた



るところでスマホをいじったり見たりしているが、そういうことができないのである。　というのも



以前、よく考えると、携帯電話というのは使わない機能がたくさんあるな、と思った僕は、使わ



ない機能を取っ払うべくショップに行き、そのことを店員に相談。



　「この機能は使いますか？」　「使いません」



　「この機能は使いますか？」　「使いません」



　「この機能は使いますか？」　「使いまへん」



　などという会話の結果、残ったのは、通話機能のみになってしまったからである。　なので



電車の中などで、携帯電話を開いても電話帳くらいしか見るものがなく、また、電話帳を見た



ところで、両親、親戚、従兄弟含めて、登録が17件しかないので、それを順番に読んでいった



ところで暇つぶしにもならない。



　まあ、少々切ないが、月々の料金が1600円ほどになったので、ずいぶん楽になった。　



　だが、しばらく経つと、使わない携帯電話に月々1600円もの大金を払うのはいかがなものか、



という考えがじわじわと浮かんできた。　これは再度ショップに行って、



　「この通話機能というのも使わないので、取っ払っていただきたい！」　



と、女性店員に相談すべきではないか。



　しかし、そうなると、「携帯電話」 ではなく、ただの 「携帯」 になってしまう。　「携帯」 になっ



てしまった携帯電話を持っているとなると、次のような事態が予想される。



　「携帯の番号教えてよ」



　「番号は無い」



　「え？携帯持ってないの？」



　「携帯は持っている」



　「じゃあ、番号教えてよ」



　「番号は無い」



　「だって、携帯……はぁ？」



　という不思議な会話である。　僕は何も間違ったことは言ってないのだが、なんだこのオッ



サン。　変なオッサン。　キモイオッサン。　などと罵られる危険がある。　それはそれで切ない。



　なので僕は、今のところ通話機能の取っ払いだけは思いとどまっている。　そして、携帯の



バッテリー残量が少なくなると、充電したりしている。





　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　亀久