以前にも書いたが、僕の住むマンションの駐輪場は狭い。　屋根のある場所と、無い


場所があるので、屋根のある場所は早い者勝ちである。　そんな狭い駐輪場に、数ヶ


月前から、引っ越していった者が放置していったのか、自転車が一台打ち捨てられて


いる。　一応、駐輪場の脇に止められてはいるが、自転車には植物の蔓が巻き付き、


その箇所は廃墟のような光景になっている。　廃墟好きな僕ではあるが、自分の住む


所が廃墟チックになるのは切ない。　恐らく住人全員が、誰か早く片付けろよ！と思っ


ていることだろう。　僕も含めて……。


　そんなある日、コンビニから帰ってきて、チラッと廃墟スペースに目をやると、いつも


と様子が違うことに気付く。　近づいてみると、なんと蔓に花が咲いているのである。

　どう見ても朝顔である。　朝顔イコール夏休みというイメージが未だにあるので、この


季節でも咲くのかと不思議であった。


　僕は、しばらく自転車に咲く朝顔を眺め、部屋に帰った。　廃墟から一転、アーティス


ティックな場所へと変貌した駐輪場の一角。　僕のお気に入りの場所になった。　




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　亀久