クチビル | もうすこし、生きてみようじゃないか・・・


 夕暮れ、部屋で寝転がり窓越しにボーっと空を眺めていると、ふと、子供の頃のある


日の出来事を思い出した。

 

 




 小学一年か二年生の頃だっただろうか。 あの時も夕暮れで、私はアニメのレコード


を聴きながら自分がアニメのヒーローになっている妄想に浸っていた。


 曲が終わり、もう一度始めから聴こうと、レコードプレーヤーに近づいた時、衝撃は突


然やって来た。、何気なく見た窓に、

 

 

 

 

 




なんと唇が浮かび上がっているのである。

 

 

 

 

 




体中に悪寒が走り、オシッコを漏らしてしまいたい衝動に駆られた。 しかし、あまりの


恐怖のためか、眼を離すことができない。 今、スッと消えてくれれば、眼の錯覚だなと


思い込めるという希望があったのかもしれない。 だが、浮き出ている唇は消えることは

 

 

なく、今にも喋りだしそうである。 限界を超えてしまった私は、オシッコをちょっと漏らし

 

 

つつ、母の元へ喚きながら走っていった。

 

 




 口が! 窓に口! ちょっと来て! うぁー! と、私の支離滅裂な報告に母は、ふ~


ん、と洗い物をしながら8割方無視をする形で聞いていたが、私のあまりの執拗さに、


タオルで手を拭きつつ面倒臭そうについてきた。

 

 




 現場の窓には、唇が消えずに浮かび上がっている。 あ、あれ! 私は浮かび上がっ


ている唇を指さした。 母は、なんやこれ、と呟きつつ窓に近づき、持っていたタオルで、

 

 

 

 

 




拭いた。 消えた。 唇の霊が消えた。 


 母の迅速でシンプルな除霊に驚き興奮した私だったが、あ、これや、という母が指さし


た先の物を見て、ハッとし、徐々に怒りが沸いてきた。

 

 

 

 

 




 リップスティックが転がっている。 これは姉がいつも使っているリップスティックである。

 

 

 

 

 




何を考えているのか、恐らく私を驚かそうとしたのだろうが、姉の仕業であった。 安堵と


怒りで、もう姉を殴るしかないと思ったが、そこは以前にも書いた通り、私は姉にはかなわ


ないので、我慢するしかなかった。 まあ、我慢するどころか、その後、姉の真似をしてリッ


プスティックを唇に塗りたくり、窓に唇の霊を数十体誕生させて母からシバかれることにな


るわけだが・・・。

 

 




 しかし、あの時は驚いた。 窓に唇の跡があるだけで、あれほど恐ろしくなるとは・・・。


お化け屋敷のような、わっと驚かすようなものも恐ろしいが、何気ない日常の中での違和


感、それを自らが発見してしまうという恐怖もあるのではないだろうか。 それはシンプル


なほど怖いと思う。 そういう意味では姉のイタズラは大成功だろう。 

 

 

 

 

 

亀久

 

 

 

 

 

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