昨日のＥテレ「心の時代」では、鈴木大拙を語るという企画でしたが、おやおやおやおや、という展開がありました。
話し手は、実際に鈴木大拙に接していたという鈴木大拙記念館の館長さんだったかな。そういう部分が重要な話ではないので、調べませんけど。（キッパリ！）
館長は鈴木大拙から「幸福とは迷わない事である」と説かれた事があるという。そこがスタート地点です。
鈴木大拙は「猫は何も迷わずに、スゥっと動いたでしょう。あの猫のような在り方が正しいのだ」と続けたという。テレビ画面には猫を胸に抱いている鈴木大拙の写真――。
猫というのは時として、人に物凄いインスピレーションを与える動物だよなって、かねてから思っていたので、改めて、「へぇ。鈴木大拙も猫を…」と感じました。伊丹十三監督も同じように猫を胸に抱いた写真を残しており、最近、そんなことを思い起こしていたばかりだったのですが、これはホントにホントですかねぇ。おそらく、偶然ではない。猫という動物の存在の仕方というのは、自己中心的であるが故に観察していると思いもよらぬインスピレーションを与えてくれるのだ。いやいや、野坂昭如も『吾輩は猫が好き』なんて著書を残していたりしてね。
猫がスゥっと迷う事もなく移動した。我が家の猫を観察している限りでは、実は迷っている様子も観察しているのですが、言わんとしている事は分かる。猫がスゥっと動く様子から感じ取るべきは、それは猫が自然と一体化している動物である事を指している。自然と一体化しているから迷わない。外部の自然と、その自然とは別個の自己という風に認識していると、自然と自己とを一体化できていないんですね。
他人に声を掛けて返事が在れば、それは外世界が反応し、自己に返事をしてくれていることの証明である。
机を触ってみて、そこに机があったなら、それは外世界が反応してくれている証拠である。
当たり前といえば当たり前の事なのですが、もし仮に、机を触っているのに、そこに机の感触が無かったり、声を出しているのに声に対しての反応がなく、自分で自分の声も聞きとることが出来なかったなら、そんな場合は、外世界はあなたに反応していない証拠となる。つまり、あなたは死んでる可能性がある。
館長の話も、その認識論的な流れのものとなりました。
「自己」と自己以外の「自然」という風に考えてしまい、それを二元論というが、ホントは一元論なのだ、と。つまり、自己と自然とは一体である、と。
赤ん坊についての研究でも、似たような事が言えるという。赤ん坊が最初に認識するのは、�犲�己�瓩箸いΔ發里瞭販�を知るという。それは、つまり、母親との分離ですかね。胎内に在るときは母体と胎児とは一体化している。しかし、生まれ落ちると、分離するんですね。母親に要求をして、その要求が満たされる事で、自己とが外部世界との関係性を知る。一元論だったものが二元論の世界になっている。
鈴木大拙は二元論ではなく一元論だと説いた後、「有」は「無」から生じたという具合の説明をしたという。これは西田幾多郎的な「無」の話でもある。しかし、私個人は、ここには異論がありますかねぇ。一元のものが二元になるのは分かる。しかし、無から有は生じない。無は無と考えないと混乱させらえてしまう。それは数字の「０」に似ていて、この「０」という概念が持っている本質自体は変化のしようがない。０に１を加算してしまうと１になりますが、これは０が変化したのではなく、ただ１が１としてやってきて、１になっただけだろう、と。
【０】というのは厳格、厳密に定義すれば定義するほど、無である。「0.00000000000001」という数字は「０」に極めて近いので、これを【０】だと都合よく解釈してしまうと、【０】という数字自体が持っている本質が変わってしまう。
なんだかバカみたいな話ですが、現代人の虚をつく話であると思う。一元から二元へ、そして多元へというのはＯＫなのですが、数字の「０」が意味する絶対的な無は何かに変化したり、生起させたりはしませんやね。変化や生起があるのであれば、それは「０」ではなく、「０に近い何か」だ。だから「無から有は生じない」と考えることにしている。
宇宙も無から生じているのではないと思う。偉い学者先生の仮説が無から宇宙が生じたという具合に展開されても、それは揺らぎませんかねぇ。無じゃなくて有。一元の有であったと思う。しかも、それが我々が自然と呼んでいるものの正体であろうと思う。
猫がスゥっと移動する。当たり前に、迷う事もなく。それは猫はヒトのように余計な事を考えないからであり、自分が自然の中の一部であることを知っているから。自己と自己以外の区別そのものは勿論、猫でもついている。しかし、自己以外の自然と自分が切り離せないという事の自然原理なり宇宙原理なり、そういう原理を当たり前のように知っている節がある。
小賢しい「ヒト」という生きものだけが迷う。何故なら自己を過大な存在だと認識してしまっており、自然を支配することが許されているという自己尊大に在り、自己尊大であるが故に苦しむ。実際、この一元論哲学、二元論哲学、多元論哲学の話というのは複雑ではない筈なのに、その概念を掴むまでに苦しめられる。
鈴木大拙に戻ると、猫のように自然と一体化できていないのが頭で余計な事を考えて行動してしまうヒトであり、実は、そこから悩みや煩悩が生じているという。彼よりもこうであるとか、彼女よりもこうありたいとか、そんな風に比較、差別化をはかる訳ですが、それは、もう二元化どころではなく、怖ろしいまでの多元化の出発点でもある。元々は一元であった事を忘れて、優劣で判断し、序列をつけるという身勝手なコードで物事を認識し、その挙げ句に他者を支配し、自然を支配することを是とする思考体系の文明に現代人はある。悩んで当たり前といえば当たり前ですかね。
鈴木大拙は「分別」することによって「悩み」が生じると言ったのだったかな。一元であれば悩みも苦しみもない筈だが、ヒトという生き物は分別をして二元化、多元化させてしまうから、悩みも苦しみも尽きない。いっそ、自然に同化してしまえば精神的に開放され、幸福な境地に到れる筈なのに、と。
仏教や禅というのは、精神的な幸福の境地を模索する事ですが、つまり、浮世のヒトの悩みも苦しみも、そうした分別をつけるヒトの煩悩から生じているという。
やはり、鈴木大拙は王道ですなァ。これ、ホントに西洋の哲学や宗教に負けているのかなぁ。
面白い逸話にも触れられていました。過激なジョークなので鵜呑みにしてはいけませんが、或る時、鈴木大拙は言ったという。
「ここから飛び降りて見なさい。飛び降りてみれば、きっと、柔らかな蓮の葉の上に落ちる筈だ」
だって。
勿論、鵜呑みしてはいけませんよ。アスファルトの上に落ちちゃうだろうから。
しかし、そうなると霊魂は、いや、今思惟している自分の意識というのは、どうなんだろう？ 意外とホントに大きな蓮の葉の上に落ちるんだったら、有難いけどね。
猫も迷っている事がある。複数の穴の開いた板の下にマウスのオモチャを入れると、どの穴から手を突っ込んでオモチャを取り出すことができるのか考えねばならないワケですが、まるで人間のように小首を傾げながら思案する姿なんてのを目撃した事がある。或いは階段を昇って自分だけの秘密の場所で昼寝にいくのに、階段を昇るのに踏ん切りが必要なようで、迷っている。行くべきか、行かざるべきか。本格的な昼寝タイムにすべきか、もう少し、起きているべきか。ハムレットですな。
また、用事があるときに、うちの猫は「ちょん（一拍）ちょん」と肩を叩いたり、腕を叩いたりするのですが、それは猫なりに考えて繰り出しているサインであり、猫パンチではない。誤解されないように、ゆっくりとした動作で手を伸ばしているから、「ちょん（一拍）ちょん」という具合に一拍が入る。また、猫が「ニャー」と鳴くのは人間に対して、そう鳴くのであり、猫同士の世界では「ニャー」という言語さえ存在しないのが科学的な考察であるという。つまり、猫はヒトを反応させる為に、ホントに試行錯誤をし、「ニャー」と泣いてヒトを振り返らせているのだ。鼻先を近づけてくるのは、仲間の確認。うろうろとパトロールをするのは危険がないのかの確認。くつろぎたければ、くつろぐ為に、くつろげる場所を探し出すし、人間が仕事で忙しそうにしていて構ってくれそうもないなと見極めれば、さっさとお気に入りの場所で昼寝をする。人間がくつろいでいて、一緒にくつろぎたいなと欲すれば、狭い隙間を縫ってでも膝の上に登ろうとする。猫というのはワガママな動物であるようでいて、ちゃんと環境（自然）に適応してくれている。
何故、イヌではダメでネコなのかというと、イヌの場合は主従関係としても関係性を理解している。自己と、御主人様（飼い主）という認識コードなんですね。しかも、何故、コイツが御主人様でオレがイヌやねんという「精神の覚醒」がない。ネコの場合は自分勝手であるが故に、御主人様と自己という関係性の認識コードではないんです。オレとアイツ。コイツとオレ。序列で関係性を認識しておらず、同格の友達とか仲間という風に御主人様のことを認識していると思う。ここですね、この同格であるという認識こそが、一元論哲学の出発点になるので、インスピレーションを与えてくれるのだと思う。イヌとネコとでは犬の方が利口なのだけれども、それでいて主従関係を疑わない。まさしく、イヌのオマワリさんであり、「あれ？なんでオレ、こき使われてんの？」という覚醒がない。
話し手は、実際に鈴木大拙に接していたという鈴木大拙記念館の館長さんだったかな。そういう部分が重要な話ではないので、調べませんけど。（キッパリ！）
館長は鈴木大拙から「幸福とは迷わない事である」と説かれた事があるという。そこがスタート地点です。
鈴木大拙は「猫は何も迷わずに、スゥっと動いたでしょう。あの猫のような在り方が正しいのだ」と続けたという。テレビ画面には猫を胸に抱いている鈴木大拙の写真――。
猫というのは時として、人に物凄いインスピレーションを与える動物だよなって、かねてから思っていたので、改めて、「へぇ。鈴木大拙も猫を…」と感じました。伊丹十三監督も同じように猫を胸に抱いた写真を残しており、最近、そんなことを思い起こしていたばかりだったのですが、これはホントにホントですかねぇ。おそらく、偶然ではない。猫という動物の存在の仕方というのは、自己中心的であるが故に観察していると思いもよらぬインスピレーションを与えてくれるのだ。いやいや、野坂昭如も『吾輩は猫が好き』なんて著書を残していたりしてね。
猫がスゥっと迷う事もなく移動した。我が家の猫を観察している限りでは、実は迷っている様子も観察しているのですが、言わんとしている事は分かる。猫がスゥっと動く様子から感じ取るべきは、それは猫が自然と一体化している動物である事を指している。自然と一体化しているから迷わない。外部の自然と、その自然とは別個の自己という風に認識していると、自然と自己とを一体化できていないんですね。
他人に声を掛けて返事が在れば、それは外世界が反応し、自己に返事をしてくれていることの証明である。
机を触ってみて、そこに机があったなら、それは外世界が反応してくれている証拠である。
当たり前といえば当たり前の事なのですが、もし仮に、机を触っているのに、そこに机の感触が無かったり、声を出しているのに声に対しての反応がなく、自分で自分の声も聞きとることが出来なかったなら、そんな場合は、外世界はあなたに反応していない証拠となる。つまり、あなたは死んでる可能性がある。
館長の話も、その認識論的な流れのものとなりました。
「自己」と自己以外の「自然」という風に考えてしまい、それを二元論というが、ホントは一元論なのだ、と。つまり、自己と自然とは一体である、と。
赤ん坊についての研究でも、似たような事が言えるという。赤ん坊が最初に認識するのは、�犲�己�瓩箸いΔ發里瞭販�を知るという。それは、つまり、母親との分離ですかね。胎内に在るときは母体と胎児とは一体化している。しかし、生まれ落ちると、分離するんですね。母親に要求をして、その要求が満たされる事で、自己とが外部世界との関係性を知る。一元論だったものが二元論の世界になっている。
鈴木大拙は二元論ではなく一元論だと説いた後、「有」は「無」から生じたという具合の説明をしたという。これは西田幾多郎的な「無」の話でもある。しかし、私個人は、ここには異論がありますかねぇ。一元のものが二元になるのは分かる。しかし、無から有は生じない。無は無と考えないと混乱させらえてしまう。それは数字の「０」に似ていて、この「０」という概念が持っている本質自体は変化のしようがない。０に１を加算してしまうと１になりますが、これは０が変化したのではなく、ただ１が１としてやってきて、１になっただけだろう、と。
【０】というのは厳格、厳密に定義すれば定義するほど、無である。「0.00000000000001」という数字は「０」に極めて近いので、これを【０】だと都合よく解釈してしまうと、【０】という数字自体が持っている本質が変わってしまう。
なんだかバカみたいな話ですが、現代人の虚をつく話であると思う。一元から二元へ、そして多元へというのはＯＫなのですが、数字の「０」が意味する絶対的な無は何かに変化したり、生起させたりはしませんやね。変化や生起があるのであれば、それは「０」ではなく、「０に近い何か」だ。だから「無から有は生じない」と考えることにしている。
宇宙も無から生じているのではないと思う。偉い学者先生の仮説が無から宇宙が生じたという具合に展開されても、それは揺らぎませんかねぇ。無じゃなくて有。一元の有であったと思う。しかも、それが我々が自然と呼んでいるものの正体であろうと思う。
猫がスゥっと移動する。当たり前に、迷う事もなく。それは猫はヒトのように余計な事を考えないからであり、自分が自然の中の一部であることを知っているから。自己と自己以外の区別そのものは勿論、猫でもついている。しかし、自己以外の自然と自分が切り離せないという事の自然原理なり宇宙原理なり、そういう原理を当たり前のように知っている節がある。
小賢しい「ヒト」という生きものだけが迷う。何故なら自己を過大な存在だと認識してしまっており、自然を支配することが許されているという自己尊大に在り、自己尊大であるが故に苦しむ。実際、この一元論哲学、二元論哲学、多元論哲学の話というのは複雑ではない筈なのに、その概念を掴むまでに苦しめられる。
鈴木大拙に戻ると、猫のように自然と一体化できていないのが頭で余計な事を考えて行動してしまうヒトであり、実は、そこから悩みや煩悩が生じているという。彼よりもこうであるとか、彼女よりもこうありたいとか、そんな風に比較、差別化をはかる訳ですが、それは、もう二元化どころではなく、怖ろしいまでの多元化の出発点でもある。元々は一元であった事を忘れて、優劣で判断し、序列をつけるという身勝手なコードで物事を認識し、その挙げ句に他者を支配し、自然を支配することを是とする思考体系の文明に現代人はある。悩んで当たり前といえば当たり前ですかね。
鈴木大拙は「分別」することによって「悩み」が生じると言ったのだったかな。一元であれば悩みも苦しみもない筈だが、ヒトという生き物は分別をして二元化、多元化させてしまうから、悩みも苦しみも尽きない。いっそ、自然に同化してしまえば精神的に開放され、幸福な境地に到れる筈なのに、と。
仏教や禅というのは、精神的な幸福の境地を模索する事ですが、つまり、浮世のヒトの悩みも苦しみも、そうした分別をつけるヒトの煩悩から生じているという。
やはり、鈴木大拙は王道ですなァ。これ、ホントに西洋の哲学や宗教に負けているのかなぁ。
面白い逸話にも触れられていました。過激なジョークなので鵜呑みにしてはいけませんが、或る時、鈴木大拙は言ったという。
「ここから飛び降りて見なさい。飛び降りてみれば、きっと、柔らかな蓮の葉の上に落ちる筈だ」
だって。
勿論、鵜呑みしてはいけませんよ。アスファルトの上に落ちちゃうだろうから。
しかし、そうなると霊魂は、いや、今思惟している自分の意識というのは、どうなんだろう？ 意外とホントに大きな蓮の葉の上に落ちるんだったら、有難いけどね。
猫も迷っている事がある。複数の穴の開いた板の下にマウスのオモチャを入れると、どの穴から手を突っ込んでオモチャを取り出すことができるのか考えねばならないワケですが、まるで人間のように小首を傾げながら思案する姿なんてのを目撃した事がある。或いは階段を昇って自分だけの秘密の場所で昼寝にいくのに、階段を昇るのに踏ん切りが必要なようで、迷っている。行くべきか、行かざるべきか。本格的な昼寝タイムにすべきか、もう少し、起きているべきか。ハムレットですな。
また、用事があるときに、うちの猫は「ちょん（一拍）ちょん」と肩を叩いたり、腕を叩いたりするのですが、それは猫なりに考えて繰り出しているサインであり、猫パンチではない。誤解されないように、ゆっくりとした動作で手を伸ばしているから、「ちょん（一拍）ちょん」という具合に一拍が入る。また、猫が「ニャー」と鳴くのは人間に対して、そう鳴くのであり、猫同士の世界では「ニャー」という言語さえ存在しないのが科学的な考察であるという。つまり、猫はヒトを反応させる為に、ホントに試行錯誤をし、「ニャー」と泣いてヒトを振り返らせているのだ。鼻先を近づけてくるのは、仲間の確認。うろうろとパトロールをするのは危険がないのかの確認。くつろぎたければ、くつろぐ為に、くつろげる場所を探し出すし、人間が仕事で忙しそうにしていて構ってくれそうもないなと見極めれば、さっさとお気に入りの場所で昼寝をする。人間がくつろいでいて、一緒にくつろぎたいなと欲すれば、狭い隙間を縫ってでも膝の上に登ろうとする。猫というのはワガママな動物であるようでいて、ちゃんと環境（自然）に適応してくれている。
何故、イヌではダメでネコなのかというと、イヌの場合は主従関係としても関係性を理解している。自己と、御主人様（飼い主）という認識コードなんですね。しかも、何故、コイツが御主人様でオレがイヌやねんという「精神の覚醒」がない。ネコの場合は自分勝手であるが故に、御主人様と自己という関係性の認識コードではないんです。オレとアイツ。コイツとオレ。序列で関係性を認識しておらず、同格の友達とか仲間という風に御主人様のことを認識していると思う。ここですね、この同格であるという認識こそが、一元論哲学の出発点になるので、インスピレーションを与えてくれるのだと思う。イヌとネコとでは犬の方が利口なのだけれども、それでいて主従関係を疑わない。まさしく、イヌのオマワリさんであり、「あれ？なんでオレ、こき使われてんの？」という覚醒がない。
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