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世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

19.お風呂屋さん ③

2018年03月29日 | お風呂屋さん
 私が温泉施設のフロントに立っていると色々なお客さんが通っていく。
 二階に行く階段があるのだけど、初めての若い大男のお客さんで、お金を財布に入れようとして、下ばかり見ていて、階段の角で、思いっきり頭をぶつけた。
 ドォォォンっという音が温泉施設中に響いたので、それは痛かっただろうと思ったが、そのまま暖簾をくぐったところで、早足で、フロントに戻って来て、「ワオッ血が流れてきた。」と頭から血が滝のように噴き出していた。血だらけになるフロント。
 何事かと思ったが、近くにあったタオルで押さえるように言った。
 「大丈夫ですか?。」
 「おしピンが頭蓋骨に刺さって、抜いたら血が噴き出した。」確かに、頭上注意のポスターをおしピンで貼ってあったが、そのおしピンが、頭を打った勢いで、頭蓋骨に刺さって、抜いたら血が噴き出した様子だった。
 「大丈夫。よくケンカして、血が出る事があるから、こんな事は大したことない。」とガハハハッと笑いながら、風呂に入らずに帰って行った。
 次の日に、また大男が笑いながら何事もなかったかのように、頭上注意のポスターが3枚ほど増えた事を指さして、一緒に来た友達に「これ俺のせいでこうなった。」と武勇伝を語るように言っていたので、あんまり大したことではなくてよかった。
 だけど、変なお客さんだったら、店側の責任にして、慰謝料みたいな事を言われたかもしれない。
 本当によかった。気さくで若い人で良かった。

 その後に、久しぶりに大人の男同士のケンカを見た。
 口げんかで、お風呂で、いつも来られる会員さんとお客さんが言い争っていた。
 トイレの前で、会員さんが太ったお客さんに対して、「腹が出てるから切った方がいいんじゃない?」と冗談で言って、ムカッときたらしくて、「警察呼んで」と言われたから、どうしたものかとおもい、電話番号を押したが、どうせ来ても大したことは警察もしないだろうと思い、受話器を置いて、 「どうしても話し合いで何とかなりませんか?」と言ったら、分かってくれたみたいで、30分くらい話し合いで解決したみたいだった。
 まったく大の大人が何をしてるのかと、冗談ですまなかったのだろうかと思ったが、確かに人格を否定されることを言われたら腹が立つだろうなと思った。
 馬鹿に馬鹿と言ったら腹が立つように、太ってる人に太ったねとか言ったら、それは腹が立つに決まっている。殴らせたら気が済むと言っていたが何とか殴り合いのけんかにならなくてよかった。

 それから、いつも来るロシアと日本人のハーフの小学生の女の子がカウンターの所に来た。目が青くて、クリッとして、髪の毛が薄っすらと茶色である。いろんなお客さんから「かわいい、看板娘がフロントにいる。」と言われてた。
 本人も、照れながら「イラッシャイマセ。」と片言の日本語で挨拶を真似をして言っている。お風呂屋さんで、有名な看板娘になっているようだ。
 「お人形さんみたい」と言われてみればそんな感じである。
 毎日お風呂上りに、抹茶のアイスクリームを買い、舐めながら、世間話をするのだけど、大人びいた話し方と「なんしようと?」と方言バリバリの日本語を顔に似合わず話す所がギャップがあり、可愛らしい。
 目がクリッとして、洋服のフードを頭にかぶり、うまそうにアイスクリームを食べる。
 「アイス美味しい?」と聞くと何度か首を縦に振り、大きな目を更に大きくして「これは、うまい」と答える。
 その後、私が掃除してたのを真似をしてるのか、ホコリを取るコロコロを転がして、フロアーの回りを掃除してくれる。
 「ありがとう。」というとまた、照れたような素振りをして、フードを被りまたコロコロと掃除をする。
 爆乳のロシア人のお母さんが風呂から上がると、急いでみんな帰るのだけど、その一時の時間が子供は楽しそうだ。
 そのロシアの小学生が帰った後、次は純朴の半袖、半ズボンの日本の小学生がフロントにやってきて、同じようにメモ用紙に何か書いていた。
 まったくここは、託児所つきの温泉施設ではないと大声を出して言いたいが、親がお風呂から上がってくるまでの間である。
 最近お客さんも忙しいので、子供相手が疲れるのである。
 その純朴の小学生を相手にしていたら、常連のクマモンに似ているおじさんが、ニヤッと笑って帰って行った。 
 
 ハーフの女の子が、大げさに両手を広げて、舌を少し出してとぼけたように「分からない」という仕草をするのだけど、色々なもめ事を見た私が両手を広げて、「まったく、意味が分からない」と真似をしていた。 


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