非国民通信

ノーモア・コイズミ

ないことを証明する、ということ

2014-07-27 23:10:17 | 社会

血液型と性格「関連なし」…日米1万人超を調査(読売新聞)

 血液型と性格の関連性に科学的根拠はないとする統計学的な解析結果を、九州大の縄田健悟講師(社会心理学)が発表した。

 日米の1万人以上を対象にした意識調査のデータを分析した。「A型の人は真面目」「B型は自己中心的」といった血液型による性格診断は、国内で広く信じられているが、就職や人事などで差別される「ブラッドタイプ(血液型)・ハラスメント」の問題も指摘されており、一石を投じそうだ。

(中略)

 血液型を巡っては、特定の血液型の人格が否定的にとらえられる例があり、問題視されている。厚生労働省によると、採用面接などで血液型を尋ねられるケースは後を絶たず、同省は「血液型は職務能力や適性とは全く関係ない」として、血液型を質問しないよう企業に求めている。大阪労働局によると、採用試験の応募用紙に血液型などの記入欄を設けていた企業に対し、是正するよう行政指導した例があるという。

 

 一昔前には「水からの伝言」ですとか近年なら「EM菌」などに代表される似非科学の教育現場への進出は一部で批判を浴びているところですが、しかし本当に似非科学が蔓延しているのは学校ではなく企業の方だと思います。教室ではなく研修の場でこそ、「メラビアンの法則」を筆頭にした根拠のない都市伝説が大々的に教えられているもの、むしろ似非科学の洗礼を受けているのは子供よりも大人なのではないでしょうか。そして今回、取り沙汰されている血液型然りですね。私も何度か面接で血液型を問われたものです。ちなみに大学の成績は、一度も聞かれたことがありません。

 血液型と性格に関連性がないことは、ちょっとマトモな人間なら誰にでも分かりそうなものですが、一方でコミュニケーション能力の高い人は、言説の真偽よりも「皆で同じものを信じる」ことの方を重んじると言えるでしょうか。世に憚る、会社で偉くなる、人事にも影響を及ぼすような地位に昇るような人ほど、いかがわしい教えを真に受けるものなのかも知れません。かくして血液型信仰は日本社会に幅広く浸透してきたわけです。そんな中で「ないことを証明する」という難事に取り組む研究者が出てきたのが今回と言うことですね。

 

先天異常率「全国と同じ」 厚労省、福島の赤ちゃん調査(朝日新聞)

 東京電力福島第一原発の事故後に福島県内で生まれた赤ちゃんは、全国の赤ちゃんと比べて先天異常の発症率がほぼ同じ傾向だったとする報告を、厚生労働省研究班がまとめた。27日に相模原市で開かれる日本先天異常学会学術集会で発表する。

(中略)

 放射線被曝(ひばく)と先天異常の関係はわかっていない。WHOなどは05年、チェルノブイリ原発事故で先天異常が増えた証拠はないとの報告書をまとめた。一方、一部の異常が増えたとする論文が、米国小児科学会誌に10年に発表された。主任研究者の平原史樹・横浜市立大教授は「今後さらに症例数を増やすとともに、解析の方法も検討したい」と話している。(岡崎明子)

 

 「ないことを証明する」ことの難しさは、低線量被曝と健康との関係においても課題になっていると言えます。今さら調査を繰り返さずとも、福島の居住を制限されていないような地域で可能な限り最大限の被曝をしたところで、影響が出たと言えるような前例のないことはわかっているのですが、しかるに朝日新聞記者のようにちょっと頭の足りない人に言わせれば「被曝との関係はわかっていない」ことになってしまうのです。「この部屋にカバはいない」ことを果たしてどうやって証明したらいいのやら……

 まぁ一見するとカバなどいないに決まっているように見えて、それが証明されているかと言えば絶対ではない、もしかしたらどこかに隠れているかも知れない、これから見つかるかも知れない、その可能性が0であることは証明されていないわけです。だからといってカバが部屋の中にいる可能性を示唆する人がいるとしたら、その人は正真正銘のバカであるか相手にするだけ無駄な屁理屈屋であるかのどちらかと言えますが、被爆の影響についてはどうでしょう。屁理屈屋を相手にするために随分と社会的なリソースが費やされてきたようにも思いますが。

 

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