マック、失われた清潔感 なぜピカピカだった店舗がボロボロに?(ビジネスジャーナル)
かつてのマクドナルドは営業が終了すると、清掃専用のキャスト(アルバイト)が店中をピカピカにして、徹底的に清掃を行っていた。客席やガラス窓、植栽など、あらゆるところまで手を抜くことなく清掃していたのである。厨房も同様。営業時間中は厨房のキャストが作業の合間にグリドル(ハンバーガーやバンズを焼く鉄板)をスクレーパーでこすっては焦げ付きを取り除いていたし、閉店後はマックシェイクの機械を分解して水洗いしていた。分解したまま乾燥させるので、朝イチのシェイクマシンの組み立ては、キャストが覚えるべき大切な仕事のひとつだった。
(中略)
しかし、24時間営業となると、それまでのように徹底した清掃作業を行うことは不可能だ。厨房設備も休むことなく使用され続けるわけで、こちらもしっかりとした清掃やメンテナンスを行うことができなくなる。これまでのようなCleanliness意識を持つことが難しくなったのである。
マクドナルドが24時間営業をスタートさせたのは06年5月。原田氏が社長に就任して2年目を迎えた時だ。06年の春、同社は「今後の成長戦略」としていくつかの施策を打ち出しているが、そのひとつに「既存事業のより経済的・効率的な事業展開」のために「24時間営業に向けた深夜営業の拡大」を掲げている。要するに、販売する時間帯を広げて売り上げを伸ばすことにしたのだ。
先月は、今日に至るマクドナルド低迷の象徴であった原田泳幸氏がついに会長を退任したわけですが、多額の退職金に株主からは不満の声も聞かれたとか。この原田氏はベネッセの顧客情報流出問題でも広く知られるところ、まるで疫病神のような人物であるにも関わらず社長の座を託そうとする会社が存在しているのですから、ある意味で凄い人なのかも知れません。まぁ「会社の業績は落としても自分の評価は落とさない」日本的経営者の究極系と言ったところでしょうかね。
マクドナルドと言えばメニュー表を撤廃したり(ほぼ100%の客から反発を買いましたが)、砂時計まで持ち出して60秒で提供云々と言い出したり(元から提供は早かったので客としては店員を無駄に追い込んでいる印象しかありませんでした)、色々と迷走も目立つわけです。そして、マクドの現在の失墜に至る一つの転換点として挙げられているのが、24時間営業化です。これがマクドナルドの哲学を変えてしまったと、些か感覚論的ではありますけれど、上記の引用元では指摘されています。
端的に言えばマクドナルドは「すき家」と似ているように思います。両社共にデフレ真っ盛りの時代には、表向きは勢いがあるように見えたものです。どちらも24時間営業を押し進め、従業員の過酷な労働の上に安価なサービスを提供して顧客を開拓していったわけです。すき家もマクドナルドも、安倍政権に変わって景気が僅かに上向くや隠してきた綻びが次々と露わになっているところですが、二社ともダラダラと放置された景気低迷の中ではデフレ時代の勝ち組と賞賛されていた時期もあった、そのことは忘れられるべきではないでしょう。
デフレ不況(あるいは日本の誤った経済政策)が産んだ負の遺産と言うほかない飲食チェーンは他にもありますけれど、マクドナルドには原田泳幸時代とは違った、もう少しクリーンな時代もあったはずです。自分のノスタルジーの中のマクドナルドは、もう少し牧歌的であったように思うのですが、それは思い出補正の故でしょうか。今のマクドナルドは、お金がない人のための店舗であり、そして職場としても薄給で長時間の労働を強いられる希望のない世界です。まぁ、人々が貧しくなっていく時代には合致していたのかも知れません。しかし……
凋落ぶりに似るところはあっても、提供速度に関してはマクドナルドの圧勝ですね。会社の近くのすき家も、お昼時でも店員が少なくて提供が追いついていないケースが目立っていたところ、しかしそういう無理に無理を重ねた働かせ方で業界トップになれた、そういう時代があった辺りに、我々の社会の不健全性が窺えそうな気がします。