この春、いや、今年2024年大本命の日本美術展、
“雪舟伝説―「画聖」の誕生―”が、いよいよ開幕しました。
会場は、京都国立近代美術館1館のみ。
巡回の予定はありません。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
本展の目玉はやはり何と言っても、雪舟作品。
雪舟は、日本美術史上もっとも作品が、国宝に指定されている絵師です。
その数は、実に6件を数えます(ちなみに、2位の狩野永徳は4件)。
本展には、その6件すべてが集結しています。
しかも、《四季山水図巻(山水長巻)》の場面替こそありますが、
前期後期での入替は無く、会期中、国宝6件は常に揃っているそうです。
これまで開催された国宝展でさえ、
雪舟の国宝6件がすべて揃ったことはありません!
ワクワクしながら、会場に足を踏み入れると、
なんと、いきなり国宝《秋冬山水図》が飛び込んできました。
1皿目からメインディッシュ?!
そう驚いたのも束の間、その後も、
京都国立博物館が所蔵する国宝《天橋立図》に、
毛利博物館が所蔵する国宝《四季山水図巻(山水長巻)》に、
愛知県の斉年寺蔵の国宝《慧可断臂図》、個人蔵の国宝《山水図》と・・・・・
国宝が続々登場。
気づけば、開始早々にして、
すべての国宝作品を目にしてしまいました。
・・・・・・この後、どうするの?
そう不安になった方もいらっしゃることでしょう。
実は、この“雪舟伝説”という展覧会、
タイトルに「雪舟」の名前があるものの、
雪舟の展覧会というわけではありません。
雪舟がいかにして、カリスマ的存在となったのか、
その評価が形成されていった過程や理由に迫る展覧会なのです。
なお、本展では雪舟のフォロワーとして、
狩野探幽や尾形光琳、伊藤若冲といった、
日本美術界のスーパースターたちの作品も紹介されています。
まさに、日本美術のドリームチームが勢ぞろいした展覧会です。
そういう意味では、国宝では無いですが、
雪舟唯一の花鳥画とされる重要文化財の《四季花鳥図屏風》、
あるいは、雪舟の作品ですらなく、
伝雪舟の《富士三保清見寺図》のほうが、本展的には重要な作品といえるでしょう。
と言いますのも、これらの絵に影響を受けた、
のちの絵師たちの作品が多く存在しているからです。
特に、富士山をモチーフにした絵に関しては、
富士山なんてどこから描いても自由であるはずなのに、
画面左に富士山、右下に三保の松原という伝雪舟作品の構図を、
多くの絵師たちが、そっくりそのまま用いて描いていました。
その影響は幕末まで及んでおり、
西洋画を学んだ司馬江漢でさえ、同じ構図の作品を残しています。
さらに、奇想の絵師として知られる曾我蕭白も。
蕭白よお前もか。
奇想の絵師ですら、その影響からは逃れられない。
改めて、雪舟のカリスマ性を実感させられました。
とはいえ、作品の構図がほぼ同じだから、
「=雪舟のフォロワー」とは言い切れないような気も。
たまたま、構図が似ていただけかもしれません。
しかし、本展で紹介されていた絵師の中には、
確実にフォロワーとしか言いようのない絵師も多くいました。
その筆頭が、国宝《松林図屏風》でお馴染みの長谷川等伯です。
彼が描いたこちらの《竹林七賢図屏風》のサインにご注目。
そこには、ハッキリとこう書かれています。
自雪舟五代長谷川法眼等伯筆。
つまり、雪舟から数えて5代目であることをアピールしています。
雪舟とは特につながりがあるわけではないのに。
展覧会では他にも、12代を名乗る絵師や、
13代を名乗っていた絵師も紹介されていました。
そんな絵師が数多くいた国なので、
『ルパン三世』という漫画が生まれたり、
髭男爵の山田ルイ53世という芸人が出現するのも、妙に納得です。
なお、極めつけは、山口雪渓なる江戸時代の絵師。
彼は、雪舟と牧谿の2人の絵師に憧れるあまり、
「雪」と「渓」の字をそれぞれ拝借し、「雪渓」と名乗っていたのだとか。
ただ、そう名乗っている割には、
特には、雪舟風でも牧谿風でもなく、
オリジナリティを追求していたのが何より印象的でした。
なお、会場には、そんな山口雪渓作品だけで埋め尽くされた部屋があります。
本展をきっかけにブレイクするかも。
雪渓伝説の始まりです。
┃会期:2024年4月13日(土)~5月26日(日)
┃会場:京都国立博物館
┃https://sesshu2024.exhn.jp/