色あせない風景 滝平二郎の世界 展 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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絵本 『八郎』 や、

八郎 (日本傑作絵本シリーズ)/福音館書店


『モチモチの木』 の挿絵でお馴染みの・・・

モチモチの木 (創作絵本6)/岩崎書店



滝平二郎の画業を振り返る展覧会、
“色あせない風景 滝平二郎の世界 展” が開催中の三鷹市美術ギャラリーに行ってきました。

三鷹市


お恥ずかしながら、この展覧会を通じて初めて、
“滝平 二郎”(たきだいら じろう) であることを知りました!
今日の今日まで、平幹二朗みたいな感じで、
“滝 平二郎”(たき へいじろうorたき ひらじろう) なのかと・・・。


さらにカミングアウトすれば、この展覧会を通じて初めて、
滝平二郎が切り絵 (正しくは、<きりえ>) の作家であることを知りました!
今日の今日まで、独特の太い線が持ち味の挿絵画家なのかと・・・。

でも、言われてみれば、なるほど。
どうりで、ほとんどの人物の眉毛がないわけです。
どうりで、ほとんどの人物の目がくっついているわけです。

すいか
《すいか》 1972年 176×314 きりえ/和紙・洋紙、墨・水彩 ©JIRO TAKIDAIRA OFFICE Inc.

金魚
《金魚》 1971年 415×142 きりえ/和紙・洋紙、墨・水彩 ©JIRO TAKIDAIRA OFFICE Inc.


どうりで、ほとんどの人物の目が顔から飛び出しているわけです。
・・・・・いや、そこは、あまり切り絵とは関係ないですね。
滝平二郎のオリジナリティが光る表現です。

さて、上で紹介した2点の切り絵はどちらも、朝日新聞の日曜版の連載で発表されたもの。
その連載は人気が高く、1969年から10年も続いていたそうです。
今回の展覧会には、他にも、連載で発表された作品が数多く出展されています。
もちろん、どれも原画です。
ちなみに、当時の連載を目にしていたお客さんは、
声を揃えて、「えっ、原画ってこんなに色が綺麗だったの!」 と驚いているとのこと。
滝平二郎が描いた “色あせない風景” は、
どうやら、当時の新聞の印刷技術では、色あせてしまっていたようです。
そういう意味でも、今回の貴重な機会を逃す手はありません!


個人的には、フルで展示された 『モチモチの木』 の原画を見て、胸がいっぱいになりました。

モチモチ表紙m
《モチモチの木》 1971年 285×485 きりえ/和紙・洋紙、墨・水彩 ©JIRO TAKIDAIRA OFFICE Inc.


子どものころに、何度 『モチモチの木』 を読んだことでしょう。
そして、何度、夜に一人でトイレに行けなくなったことでしょう。
原画を目にした瞬間、まだ純粋だった時の当時の記憶がブワッと蘇ってきました。
今はもちろん一人でトイレに行けますが、
その分、いろんなものを失ってしまったような気が。
大人になるって、こういうことなのですね (←しみじみ)。


さてさて、今回の展覧会では、一般的に知られている滝平二郎の作風になる前、
言うなれば、滝平二郎エピソード0ともいうべき (?) 木版画家時代の作品も紹介されています。
初期は農民 (労働者) をモチーフにした作品が多く、意外とゴッホ風でした。

麦畑
《麦畑》 1953年 360×286 木版/和紙、油性多色摺り ©JIRO TAKIDAIRA OFFICE Inc.


また、箔を効果的に使用した作品も多く、木版画家としては意外とアバンギャルドでした。

わかさぎ
《わかさぎ》 1960年 355×258 木版/和紙、油性多色摺り(タマムシ箔)©JIRO TAKIDAIRA OFFICE Inc.


1周回って知らない話が続々飛び出す?!
いい意味で、滝平二郎のイメージが変わる展覧会でした。
星




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