第21回岡本太郎現代芸術賞 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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岡本太郎の遺志を継ぎ、「時代を創造する者は誰か」 を問うための賞。
それが、岡本太郎現代芸術賞。通称TARO賞。
その第21回目の入選作品が、現在、川崎市岡本太郎美術館に一堂に会しています。




今年の応募総数は、前回の499作品を大きく超えて、558点。
そのうちの26名 (組) の作品が、入選を果たしています。
史上稀にみるハイレベルな戦いだったというだけあって、
展覧会場は、これまでになく 「ベラボーな」 ことになっていました。





ナチュラルに、「何だ、これは!」 が口を衝いて出ます。
星


アルミの空き缶15000個を溶かして梵鐘を鋳造した市川ヂュンさんの 《白い鐘》 や、




実の母親の自死というショッキングな出来事から、
1986年に飛び降り自殺したアイドルOの事件をモチーフにした弓指寛治さんの 《Oの慰霊》 など、




見事、入賞した5作品はどれも、作り込まれたものばかりでした。
「ここまで作り込んでるのか!」 と驚き、感心する反面、
「ここまで作り込まないと入賞できないのか?」 と首を傾げたくなる部分もありました。
岡本太郎のような有無を言わせぬパワーがある作家を選ぶというよりは、
なんとなく、作り込み勝負のコンテストになってしまっていたような印象。
過渡期の仮装大賞を見ているかのようでした。
“いや、それ、スゴイけど、仮装じゃないじゃん” みたいな。


僕個人としては、笹田晋平さんの 「シャカ涅槃会」 ならぬ 《シャケ涅槃会》 や、




キーボードやマウスを使ってボルダリングの壁を制作した細沼凌史さんの 《キー・ボルドウォール》 が、





頑張った感の押しつけがましさがなく、
かつ、バカバカしさが突き抜けていて、好ましかったです。

また、入賞作では、特別賞を受賞した冨安由真さんの 《In-between》 という作品が印象的でした。




一見すると、何の変哲もない扉。
その扉の先には、やはり何の変哲もない部屋がありました。




「???」

しばらく戸惑っていると、急に室内に鳴り響く音。

「!!!」

その後も、ちょくちょく室内でポルターガイスト現象が起こります。
これ、リアルで怖いヤツ (汗)
『アメトーーク!』 の 「ビビリ-1グランプリ」 状態に陥ります。
しばらくポルターガイスト現象を経験していて気が付いたのですが。
驚かす仕掛け (アクション) を喰らったときよりも、
次のアクションを待っている間、つまり、“In-between” の時間のが怖かったです。
それって、よくよく考えると、不思議なこと。
漫才で言うと、実際にボケが飛び出したときよりも、
ボケとボケの間の無音のときが、一番ウケているようなものです。
恐怖と笑いの違いを考えるうえで、大変興味深い作品でした。


ちなみに、栄えある岡本太郎賞を受賞したのは、
こちらの 《芸術はロックンロールだ》 という作品。





作者は、さいあくななちゃんさん。
(↑アグネス・チャンさん、さかなクンさん的な感じになってます)
かつて、「絵、さいあく」 とののしられたことがあり、
それを逆手にとって、自らさいあくななちゃんと名乗っているのだそうです。
制作のエネルギー源は、「さいあく」 と言われた時のナニクソ精神。
そのモチベーションが、このパワフルな作品を生んでいるのですね。
そして、岡本太郎賞の受賞に繋がったのですね。
おめでとうございます!
ただ、今回、受賞したことで、「さいこう」 の気分になり、
今後、何をエネルギー源に彼女が作品を制作していくのか、非常に気になるところです。
さいあくななちゃんさんに、これからの 「さいこう」 の作品を生み出してもらうためにも、
“テッテレー!実は、岡本太郎賞の受賞はドッキリでしたー(笑)” という展開はどうでしょう??




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