中学二年生たちへの手紙 | たまにはTSUKIでも眺めましょ

中学二年生たちへの手紙

今日は味噌作りワークショップを開催し、
19組の方々と楽しいときを過ごした。

麹と大豆を送ってくれた山形新庄のお百姓さんである
高橋保廣さんもトークに来てくれた。
大好きでずっと親しくしてくださっている素晴らしい方。
山形弁が人を和ませる(^^)
「んだ!」ラブラブ
栄養価の高いお米である在来種さわのはな を
トラストで都市の方々に届けている。
遺伝子組み換え反対の運動や、
3.11被災者の支援受け入れなどもしている。





昨晩の来店者にも、農的暮らしに踏み出した女性がいた。
今や、地方に行ったほうがモテる!?
朝日新聞の記事「婚活女性、地方目指す


去年の11月にある都立付属中学で、
二年生120人に100分の授業をする機会を頂いた。
子どもたちの屈託のない笑顔の前でお話しできるのは嬉しかった!
後日、120名の想いの籠った感想を頂いた。

その中に質問がいくつかあったので、
答えとお礼として子どもたちに手紙を書いた。

みなさんにも共有しようかな!

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 みなさん、こんにちは。去年11月28日に授業でみなさんにお会いして以来、もう三ヶ月。時間が経つのは早いものですね。大人になると、毎日が同じことの繰り返しになり、新しいことに出会うことも少なくなり、刺激が減る分、時間が経つのが早く感じられるのだと思います。たとえば、生まれて初めてカレーを食べた時の美味しさは忘れないだろうけど、長く生きているとカレーなど数知れず食べて来たので、昨日カレーを食べたことすら忘れてしまうものです。だから時間が経つのが早い。若いみなさんにはこれから初めて体験することがたくさん待っています。だから希望なんですね。負けずに私も、大人になったからなんて言い訳せず、新しい出会いを大切にしていこうと思っています。

 

 みなさんに会えたことも、私には宝物になりました。中学生の前でお話しすることは初めてだったので、ずっと忘れない記憶として私の心の中に残るものだと思います。みなさんの笑顔の前でお話しできたこと、とても幸せです。だから、あの日、ヘンな人たる私の話しを聞いてくれて、そして、感想も書いてくれて、ありがとう(^^)。大切に読ませて頂きました。

 


 

 疑問や批判もあったし、感謝のお言葉もたくさんあったし、応援していますというメッセージもありました。どれもが私にとっては学びであり感謝です。「幸せとは、人に認められたとき、人や世の中のお役に立てたとき、強く感じるもの」と言った私の言葉を受け止めてくれた方がたくさんいました。想いをバトンリレーしてくれて、ありがとう。

 


 

 さて、いくつか質問もありました。一生懸命書いてくれたものに答えないのは失礼と思いながら、大人の世界の忙しさを言い訳にして、今日に至ってしまったこと、ごめんなさい。やっと昨晩、お店がヒマだったので読み終えることができました。このお手紙にて質問に答えさせて頂きます。

 


 


 

【虫が嫌いだけど大丈夫になれますか?】

 


  はい。実は私も30歳まで虫も土も魚も動物も気持ち悪くて触れませんでした。都会で暮らしているとコンクリートや家の床や壁にいる虫が気持ち悪く感じるのは当然だと思います。虫たちにとっても土や木や葉でないところに迷い込んでしまって困っているかもしれません。自然界に本来ない人工物の上に自然物たる虫がいるから、気持ち悪く感じてしまうのだと思います。私達の近代文明は直角と垂直と直線と水平と均一の固さで構成されるようになりました。でもそれは不自然です。人間の体を見ても直角も垂直も直線も水平も均一の固さもありません。思い出してみて下さい。自然界にも直角も垂直も直線も水平も均一の固さも、ほとんど無いはずです。その非自然な直角で垂直で直線で水平で均等の固い場所に、曲線で歪んでいて柔らかい虫が存在するからミスマッチに見えるわけです。 でも畑や田んぼは、曲線で歪んでいて柔らかい場所です。そこに曲線で歪んでいて柔らかい虫がいても何ら違和感はないのです。虫がいないと健康な作物はできません。虫たちが土を耕し、作物に栄養を与えるからです。人間の五感は正直です。土の上にいる虫は気持ち悪いものではなくなります。むしろ愛おしく思えるようになります。だから、虫が嫌いな人でも、田んぼや畑に行くと、「気持ち悪い」から「可愛い」に変化していきます。



 


 

【大豆は簡単に作れますか?】

 


 

 はい。土にもよりますが、とっても簡単です。6月から7月、指で3センチくらい土に穴をあけて2~3粒入れて埋めるだけです。雨水で大丈夫だし、水がなければあげればいい。雑草が多かったら抜いてそこに寝かしてあげればいいだけです。雑草も役目があります。大豆のためにいのちを絶たれてしまうわけです。だからそこに寝かせてあげます。その下に虫が隠れられます。水も蒸発しずらくなります。そのうち草自身も微生物に分解されて土の栄養になって循環するのです。9月か10月、枝豆として食べられます。そのままにしておけば、だんだん枯れて来て、12~1月にはマメになります。納豆は簡単です。ネットで調べてクサ~い納豆を作ってみてくださいね。

 


 


 

【全員がダウンシフトしたらどうなっちゃうの?】

 


 

 安心してください。全員がダウンシフトにはならないし、そんな必要もありません。逆に全員がアップシフトを強制させられている今の世の中だから、多くの人が「あっぷあっぷ」してしまっているのです。だから、ダウンもありだよ~って選択肢があることが大事です。いろんな人がいるからこそ社会は調和されます。全員がアップを目指せと洗脳されている今の世の中がオカシイからこそ、ダウンもありだよ~って伝えています。1人の人生の中でも、アップ目指したりダウン目指したり、行き来できるほうが楽しいですよね。全員がアップを目指す世の中は、戦争、環境破壊、貧困、飢餓を産み、地球に人類が生き残れない状況を既に作っていますから、そうじゃないベクトルを作って行くことが大切です。アップ目指すことが幸せだと思う人は目指せばいい。それは個人の自由です。でも一つだけ覚えておいて欲しいです。盲目的にアップを目指せば、誰かを、自然を、未来世代を、そして家族や自分を犠牲にすることになりかねないこと(=構造的暴力)。例えば一昨年、みなさんが着ているかもしれない洋服を作っているバングラディシュの工場が崩れて1100人のみなさんと同じ歳くらいの子どもたちが死にました。建物も安くつくり、とても安い人件費の子どもを働かせて洋服を作っていました。そのお陰で、日本にいる私達はとっても安く洋服を買うことができたし、それを作っている会社は儲かっています。その会社で働く人は、罪の意識なく、会社のためにコストを下げようと頑張っているわけですが・・・・・! そんなことを心のどこかに覚えておいてほしいなって思います。

 


 


 

【頑張らないの意味】

 


 

 私は「頑張らない」という主旨のことを授業で話しました。上記にも書いたように、例えばバングラディシュで子どもを劣悪な環境で働かせるような仕事を頑張らないで欲しいと思うのです。構造的暴力とは、自分は家族のために会社のためにと一生懸命頑張って仕事をこなしているだけなのに、その先の見えない遠い場所で環境を壊したり人権を蔑ろにしてしまうことがある、ということ。第二次世界大戦のドイツで、あるお役人はヒットラーからの指示で電車をたくさん調達しました。いい仕事をしたわけです。でもその電車は、捕まえた無実のユダヤ人を収容所やガス室に運ぶための電車でした。そうやって600万人の人が殺されたと言われています。ちなみに太平洋戦争で死んだ日本人の数は300万人です。大組織の中で働くと、仕事部分にはスペシャリストになりますが、仕事外の大きな視野が見えなくなります。だから小さな仕事で顔のみえる関係が大事になります。

 

 人間には向上心という素晴らしいものがあります。頑張ることは大切です。でも間違っていることに頑張ってしまうようなことがないよう、ベクトルを間違えないようにして欲しいと思います。

 


 


 

【ダウンシフターは、海外旅行に行けない?/好きなもの買えない?】

 


 

 結果から言うと、海外旅行にも行けます。好きなものも買えます。ダウンシフターは無駄なものや、世の中に悪いものをなるべく買わない、同じく世の中に悪いことを仕事にしない、という在り方です。良いものや、価値のあるものは買ったり投資します。お金を使わない、使えない、というのでなく、お金を支配下にコントロールすることです。今の世の中では、お金に人が支配されていますからね。

 

 旅に行く場合、お金がある人は忙しいので、休日が貰える短期間(数日から一週間)のツアーに高いお金を払って行きます。ダウンシフターは、休みを自分でコントロールできるので、好きなだけ気まま自由に長い旅をします。お金はそんなに必要ありません。仲介する旅行会社やガイド会社や飛行機会社に手数料を払わず、自分ですべて直接手配できるからです。時間があるからそれができます。お金があるけど時間がない人は、高いお金を払ってそれを誰かにお願いするわけです。結果、決まりきったコースしか行けなく、自由度が少なく、現地の人との出会いも少なく、私にとってはとってもツマラナイ旅です。

 

 実際、ダウンシフターの多くが旅好きで、いろんなところに行っています。私も世界一周、ヨーロッパの古都や、エジプトのピラミッド、ペルーのモアイ島、南米のマチュピチュ遺跡、ニューヨークやワシントンやサンフランシスコ、オーストラリア、インド、ベトナム、ハワイやグアムなどの南の島・・・・いろいろ行っています。その殆どは、会社を辞めてダウンシフターになってからです。日本も全ての県をまわって旅しています。日本のお城はすべて見たし、日本の最北端から最西端から最南端まで行ったし、西日本の名山はすべて登ったし、たくさんの温泉に未だに行きます。

 


 


 

【減速はスローなので、ちょっとなぁ?】

 


 

 スローは実は忙しいんです。サラリーマンは仕事で忙しい上に、家にいる時間が少ないので、休みの日には自分や家族を癒すだけで精一杯。自分で何かをしたり、自分で何かを作る時間も手段も知らないので、例えば前質問のように、高いお金を払ってツアーのパック旅行になってしまいます。でもダウンシフターは時間をコントロールして、自分で食べ物を育てたり、加工品を作ったり、家をお洒落に手作業で直したり、好きな旅をしたり、好きなことや手間隙かかることや時間がかかることで忙しいのです。嫌なことで忙しいのでなく、楽しいことや美味しいことや美しいもので忙しい。それがダウンシフターズです。

 


 


 

【ダウンシフターになるためにどれだけ勉強したか?】

 


 

ダウンシフターという学科も専門家もありません。いわゆる勉強は必要ありません。あるとすれば、疑問に思ったことを自分で調べることだけです。図書館でもインターネットでもいいでしょう。そして、頭だけでなく、自分の目で、手で、現場で、確認することです。

 

「疑問」→「調べる」→「五感で現場で感じる」→「納得する/確信する」→「行動する」

 

が大事ですね。



以上、みなさんからの質問にほぼお応えしたつもりです。またわからないことがあったら、私に連絡ください。メールアドレスをお教えします。スローかもしれませんが必ず返信しますね。 三年生へのアップステップ(ダウンステップ?!)が実りありますよう、お祈り申し上げます。では、またね~、ケセラセラ(^^)/

 


2015.2.27  髙坂 勝






---------【 髙坂 勝 の トーク 出演情報 】----------




■ 3/7(土) 11~14:00 オーガニックいいね at 神田MOM TREE

■ 3/11(水) 13:00~ 月刊「高坂勝」 at 池袋たまつき

■ 3/21(土) 13~17:00 脱成長MTG
          「置賜自給圏構想」について by 菅野芳秀さん

■ 3/21(土) 15~18:00 平井ななえさんとトーク
 「そろそろ人間に戻りましょう! きっかけは農と脳!」

 3/28(土) 14~16:00 at 小平 (詳細未定)

■ 4/6(月) 19 or 20:00 ~ タメになる話し (詳細未定)

■ 7/5(日) ネクスト200年創造学科 by 地球のしごと大學