街並みのようすを辿っていって、先に昼食をとった辺りのことに飛んでしまいましたですが、
実はぐるり街歩き をする傍ら、町外れとも思しき場所にある「ドイツ塩博物館」に寄っていたのでして。


ドイツ塩博物館@リューネブルク


ある意味では、シェーネブルクと言われる街並みを見るというよりも歴史的な部分に目を向ければ、
こちらの方がリューネブルクで外せないところと言えるかもしれませんですね。
何と言っても、塩あってのリューネブルクでありますから。


とはいえ、リューネブルクの塩が中継地点・メルンを通ってリューベックに運ばれ、
ハンザ貿易の一大主力商品となっていた辺りに関しては、メルン博物館 の展示で見ていたこともあり、
わざわざリューネブルクにも立ち寄ってドイツ塩博物館を訪れるまでもないかな…とは少々考えたですが、
このドイツ塩博物館は交易産品としての塩という点に留まらず、
広く「塩」そのものやその産出に関する展示があった点でやはり見るべきものではあったなと。


内部はかなり照明を落としてありましたので、写真は入館時にもらったパンフから借用するとして、
ご覧のとおり展示には結構な工夫がしてあり、

子供たちが触ったり動かしたりして学ぶ工夫がされていました。
ですが、ここで目を引くのは真ん中の巨大な岩塩(6トンあるそうな)ではなかろうかと。


ドイツ塩博物館の館内(ミュージアム・リーフレットより)


岩塩の産地はオーストリアのザルツブルク(Salzがドイツ語で「塩」の意)周辺にもたくさんあるようで、
例えば以前紀行番組で見たハルシュタット(Hallはケルト語で「塩」の意らしい)では
湖水より遥かに高い山の中に岩塩坑が掘削されており、これはこの辺りの山々がかつては海であったのが、
造山運動で隆起し、塩分の結晶が取り残されてできたようのなのですね。


ところが、リューネブルクのある北ドイツでは、先に見たリューベックからの遠望 でも分かりますように、
実に実に平坦な土地が広がっていて、山など全く見当たりません。
もそっと南に行って、ハノーファーやブラウン・シュヴァイクの南の方にはハルツ山地があるくらい。


で、ここで「ハルツ山地」と書いてみて、もしかしてハルシュタットのハルと同じように
こちらも塩と関係があるのかと思いましたですが、こちらは「Halz」でなく「Harz」。
地下資源はあれこれあるも、どうやら塩ではなかったようす。


と、余談に流れたところでリューネブルクに戻れば、平坦な場所で何故岩塩が産出するのかとなれば、
やはり海底の隆起があった点では同じながら、塩分の取り残され方違うようですね。


遥か昔、今のリューネブルクあたりは海の底であったようですが、隆起したのはずっと離れた場所。
ところがこの隆起によって海から切り離された塩水湖のようなものができてしまった。
この部分は長い長い年月を掛けて徐々に干上がっていくと同時に土砂の堆積も重なって
いつしか周囲と変わらぬ平坦な地面となったものの、その地下にはたっぷりと濃縮された塩分が
残された…とまあ、ざっくりいうとこのような次第。


リューネブルクの塩はこのようにして?


館内で取った走り書きのメモでどれほど理解の助けになるかはともかく(笑)、

それが地下水に解けて塩の泉として湧き出していたのが発見され、
リューブルクの塩が日の目を見るようになったてなことのようなのですね。


されど、こうした経緯だったからと言っていいかどうかながら、
この塩水の濃度を比較した展示解説(各地の塩水1リットルあたりの塩の含有量の比較)によれば、
バルト海5g、北海35g、地中海38g、紅海41g、死海250gに対して、
リューネブルクで湧出する塩水は何と306g!と。濃いですよねえ。


たぶん日照時間や日差しの強さで南に行くほど(といって、死海は特別にしても)、
海水も塩分が濃くなっていますが、逆に北の海、取り分けバルト海は何とも塩味が効いていない。

それだけに天日干しで塩を作ることもままならず、リューネブルク産の塩は
「白い金」とも言われて取引されたのでありましょうね。


展示としては製塩過程の工業化のようすなどにも触れておりましたですが、
元来一番の用途は食糧の保存用であったのに対し、
保存方法がいろいろと開発されて塩漬けばかりに頼る必要もなくなった現在は
リューネブルクは工場の音が鳴り響くでなく、シェーネブルクとして静かな観光の町となってますですね。


ただ生産が全くなくなったわけではないのでしょう、
ミュージアム・ショップではいろいろに加工した塩を売っていました。
入館時にも紙の小袋入りの製塩したものがもらえましたですが、
ここはひとつ、岩塩の粒が詰った布の袋(市庁舎のプリントが実に土産物っぽい)を購入することに。


入館時にもらえる塩の小袋

ドイツ塩博物館で岩塩粒を土産に

で、持って帰ってはきたものの、手元にソルト・ミルが無いもので未だ味わってはおらず。
もしかすると何千年、何万年と眠っていたかもしれぬ塩の風味を、
近々試してみようと思っておるところでありますよ。