…ということで、新潟出張から帰ってまいりました。

滞在中は、さすがに新潟はきんと冷えとるなあと思ったものですが、

東京に帰ってくれば、こちらはこちらでやっぱり寒い。


でも、向こうは空気が冷えているのに対して、東京は風が冷たいといったらいいのかも。

ですから、新潟で風が吹いてたら縮みあがってしまうのだろうと思ったりもしたわけです。


と、それはともかく毎年同じ時期に新潟への出張は5~6年続いておりまして、

残念ながらちいとも時間に余裕がないものですから、駅と目的地の往復ばかり。

それが今回はちと寸暇を有効活用して、敦井美術館というところへ立ち寄ることができました。


新潟駅から歩いて2~3分のところにあって、

そこに存在していることはこれまでに気が付いておりましたですが、

北陸瓦斯などの経営者であった方の個人コレクションを展示する美術館として

どうも焼きもの系が多そうな感じでしたので、時間をやりくりしてでも行ってみようという気に

なかなかなれなかったという。


それを今回は何ゆえに?と申しますれば、展覧会タイトルに釣られたわけでして、

題して「12代柿右衛門の東海道五十三次額皿」展が開催中なのでありました。


「12代柿右衛門の東海道五十三次額皿」展@敦井美術館


歌川広重 の保永堂版「東海道五十三次」55枚の全てを白磁の絵皿に再現したものですけれど、

横長の版画を丸い絵皿に写すのは、そもそも広重そもままとはいかないところがありますね。


で、そこには12代酒井柿右衛門が補ったりもしているところながら、

基本的には広重路線の延長で行っているものと思われる。

その一方で細かく原画サンプルと見比べてみますと(全てのサンプル展示はありませんが)、

明らかに原画と違えているところもありますなあ。


絵柄の解釈として、こうでなくてはという柿右衛門のこだわりなのかとも思いますが、

例えば「日本橋」の左手前、空のかごの振れ方は広重よりも振れ幅が大きく、

空っぽだったらこれくらい振れるでしょ…てなところかも。


「戸塚」の茶店の前で、広重は馬から降りようとしている男を描き、

柿右衛門は馬に乗ろうとしている男を描いている。

また、「藤枝」では男のくわえた煙管の角度がずいぶんと異なっている。


こうしたあたり、意図は果たして…?と思うと興味は尽きませんし、

一方で元々の広重五十三次自体もあだや疎かには見ておられんなと思うわけです。


ということで55枚の絵皿をぐるり見て廻り、それぞれに思うところはありますけれど、

(「箱根」の岩肌のように色彩が豊かな表現ではどうしても錦絵には及ばないとか)

この55枚の中から一番の注目作を選ぶとすれば、薩埵峠 を描いた「由比」になりましょうか。


真下に海を見下ろす崖にへばりつくように旅人が進む。

その崖が海から天へと伸びあがる姿は広重の横長画面よりも

縦の長さがとれる皿の円形を活かして、迫力が増しているような気がしたものです。


まあ、訪ねてみればそのコレクションには焼きものばかりでなくって、

日本画や多少ながらも洋画も所蔵されているそうな。

訪ねたときには横山大観 の「…梅咲き初めし枝の鶯…」てな春の気配漂う軸が架かってました。


別途に機会があればまた覗いてもいいかな…と思うような展示だと

訪ねて分かった新潟市の敦井美術館でありました。


ブログランキング・にほんブログ村へ