古代ローマの建築技術 が実に大したものであったとは前にも触れましたですが、
ちょいと前のTBS「世界遺産」でもローマン・コンクリートや地下水道のことを取り上げてましたですなあ。


それ以外にも古代ローマの遺構としては、

野を越え山を越え長く長く伸びる水道橋が有名ですね。
それほどに水の確保は死活問題だったのでしょう、一説によればローマ帝国 の崩壊は
ゲルマン民族によって水道橋が破壊されたことにもよる…となるそうで。


とまれ、目を瞠るべきは古代ローマの建築技術なわけですが、
そうした技術的な伝統は帝国崩壊後も受け継がれていったと言えましょうか。
確かな技術でしっかりした建造物が建てられるとなれば、その先にはただ建てるだけではなくって
人の目を引く装飾にも凝るようになっていったのではと想像されるところです。


元来イタリアでは絵画も彫刻も建築も同じ(あるいは極めて近しい)領域と考えられたか、
画家、彫刻家、建築家という専業的な区分けはなされていないようですね。
例えば、フィレンツェのドゥオモの大天蓋を造ったブルネレスキは彫刻家、
ドゥオモに付属する鐘楼を建てたジョットは画家としてよく知られていますし。


ですが、こうした見られ方に対して「自分は頑として彫刻家だけんね」と考えていたのが
ミケランジェロ・ブオナローティであったようですが、世間では通用しない思いなのか、
画家ではない(と本人は思いつつも)システィナ礼拝堂の絵を描くように求められたりしてしまう。
まあ、天才のなせる業なのか、見事にやってのけてしまうのではありますが。


加えて、建築もまた本業ではないとミケランジェロが考えたところで、
依頼してくる向きはあったようですなあ…と、毎度長い前置きですが、
パナソニック汐留ミュージアム で開催中の「ミケランジェロ展」は
ミケランジェロが手掛けた建築に関わる側面に光を当てた展覧会なのでありました。


ミケランジェロ展-ルネサンス建築の至宝@パナソニック汐留ミュージアム


ところで「ミケランジェロの建築的偉業を本格的に紹介する展覧会は日本で初めて」となると、
そもミケランジェロに建築の業績があったことを知らないとしても不思議ではないところかと。
このほどローマの聖ピエトロ大聖堂のドームはミケランジェロが設計したと知って、
「ほお~!」と思いましたですよ。


もちろん他にもミケランジェロが手掛けた建築の仕事は展示にあるとおりですけれど、
ミケランジェロをも翻弄した教会側というか教皇側というか、これの人によって、
気分によって依頼されたり、取り消されたり、他の仕事を先にやれと言われたりという
あれやこれやにはまた興味の尽きないところでありますね。


以前「ルネサンス期イタリアのどいつもこいつも…」 と言った時代に近い頃合いだけに、
手掛けた作品の背景を探ってみると興味深さはひと際かも知れんなあと。
ま、そのこと自体は建築作品のみならず、絵画や彫刻にも言えることなのですけれど。


ミケランジェロの才能を確固としたものとして見せ付けることになった例のダヴィデ像にしても、
「フィレンツェ共和制移行の象徴」と見られたようですが、ミケランジェロの思いとは関わりなく
本来はメディチ家称揚を意図する像が置かれるはずだった場所に設置されることで、
反メディチ家のシンボルのようになってしまったようですし。


印象としては相当に頑固一徹っぽいミケランジェロですが、
生涯を通じた作品造りにあたっては事ある毎に入る横槍の連続でもあったような。
これまたそういう時代だったのだなと思う一方で、そうした面倒に巻き込まれながらも
今に残る数多の作品を生んだとはやはり大変な芸術家であったのだなと改めて思いましたですよ。


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