とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
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思い出の関数電卓(CASIO fx-2200、SHARP EL-586)

2016年06月24日 19時22分19秒 | iPhone、携帯、電卓

左:CASIO fx-2200 (1977)、右:SHARP EL-586 (1987)


人にはそれぞれ思い入れのある品があるものだ。僕にとっては電卓もそのひとつ。ヤフオクでの古い電卓集めは以前ほどではないが、今でもときどき「あ!これは。。。」と思ったのだけ購入し続けている。

今日紹介するのは実際に使っていたので、とても愛着がある関数電卓2機種。どちらもめったに出品されない掘り出し物である。(とはいってもそれほどプレミアがついているわけではない。)


CASIO fx-2200 (1977)



関数電卓は高校1年のときに使い始めた。当時この機種は12,000円もしていたから初めて手にした高級品である。いつも持ち歩いていた。ヨドバシカメラの新宿西口本店(現:マルチメディア東館)は1975年にオープンし2年がたっていたが、電卓はまだデパートの文具売り場でガラスのショーケースの中に陳列して売られていた時代だ。

高校入学祝いに何が欲しいかと親に聞かれて「関数電卓!」と答え、お金だけもらって新宿の京王デパートで買ってきたのだった。

サイズはiPhone5とiPhone6の中間くらいで、縦121mm、幅67mm、厚さ11mmという小ぶりで学生服のポケットに入れるのにちょうどよかった。2年後に発売されたプログラム関数電卓CASIO fx-502P (1979)とサイズをくらべてみた。

左:CASIO fx-2200 (1977)、右:CASIO fx-502P (1979):拡大


この小さな関数電卓で斉田博先生の「天文の計算教室」や渡辺敏夫先生の「数理天文学」そして今年お亡くなりになった長谷川一郎先生の「天文計算入門」を読みながら遊んでいた。

平方根の精度は8桁だったものの、この電卓でのべき乗、三角関数、指数・対数関数の精度は6桁しかなかった。三角関数の値を計算すると1秒くらいかかり、表示は右の桁から左にパラパラと順番に表示される。「ああ、頑張って計算してるなぁ。」と実感できるのがいまとなっては可笑しいところ。



高校生だった僕はこの小さな黄色い窓の中に宇宙を見ていた。でも液晶の背景を黄色にしたのはなぜなのだろう?そういうことも今になってみると不思議だ。その後発売された電卓の液晶のことを考えると、黄色がいちばん見やすかったのだとも思えない。

不満だったのが10のべき乗の指数表示。9桁しか表示できなかったので指数表示になると有効桁数が6桁になってしまう。さらに仮数がマイナスだと5桁になってしまうのだ。仮数と指数の間には1桁ぶんの空白が入る。(べき乗がマイナスのときは空白の部分が「-」で表示される。)



けれどもそんな大きな数や小さい数が現実の計算ででてくることはほとんどないので不便ではなかったわけだが。。。ともかく計算の精度や有効桁数を意識し始めたのはこの電卓のおかげである。

高校2年の夏にはテキサスインスツルメンツ社の高級プログラム電卓「TI-59」を感熱プリンタ付きで買ってもらったので、手帳型関数電卓はもっぱら持ち歩き専用になった。

38年ぶりに同じ電卓を手にとってみると、記憶に残っているサイズより小さいことに気が付いた。写真で見るだけと実際に手元にあるのは大違いだ。

すでに僕は電卓収集家になっているから、捨ててしまうこともない。「科学電卓デビュー」の思い出の品なので大切にしよう。


SHARP EL-586 (1987)


 

これは僕が社会人になった年に発売され、当時持ち歩いていたのはこの電卓だ。CASIO fx-2200 (1977)の発売から10年たっていて、シャープ(株)が元気だったころの製品である。この頃には関数電卓もヨドバシカメラのような家電量販店で現在のようにフックに吊るされて売られていた。

パソコンはすでにMS-DOSのものが発売されていて「このような機種」が買えた時代である。1981年にD.M.リッチーの「プログラミング言語C」の初版を石田晴久先生が和訳して出版してから6年がたち、企業や大学でキャラクターベースのUNIXやC言語が使われ始めていた。

このような超薄型の関数電卓は古今東西この機種と、機能を制限して同時発売されていたSHARP EL-585 (1987)だけである。(キートップを比べるとEL-586との違いがわかると思う。)

CASIO EL-585 (1987)


「カラフルでおしゃれな関数電卓」という切り口でも初めての機種だった。最近になってようやく関数電卓の中にもデザインセンスのよいものが発売されるようになった。(参考: CASIO fx-JP900Canon F-605G

サイズはiPhone6よりひと回り大きく5インチ画面のスマホと同じくらいの大きさだ。この2つの関数電卓は1987年に「グッドデザイン賞」を受賞している。(参考ページ

とにかく薄い。



周囲はゴム製で防水タイプ。ソーラーパワーで動作する。メモリーバックアップのためにバッテリーが内蔵されているが交換はできない。

関数の精度は10桁。



2桁の指数部も小さい数字で独立しているから仮数部の桁数は保たれる。




ひとつだけ難を言えばキー入力の感触が得られないので、早打ちすることができないところ。その後、超薄型電卓が事務用、科学用も含めて普及しなかったのは、そのような理由からなのかもしれない。


どちらも僕にとっては思い入れの強い電卓だ。捨てた覚えはないのだが、こういう物はいつの間にか無くなっている。思い出の品をネットオークションで手軽に買える時代になってよかったなぁと思うわけである。


関連記事:

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70年代の関数電卓:CASIO fx-10 (1974)、fx-15 (1975)、fx-19 (1976)
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https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e462acad2de19fdd92d574078ccff000

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HP 50g for iPhone、for iPad
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/210a9395c06a150769a1d193512ffb3c

HP Prime Graphing Calculator for Android
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/28672920bba216620bd6aa424010ff99

HP社の科学電卓、Windows用の無料エミュレータ(HP 35s、HP-15C)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d2028e32d4c59d3076af838cf24a4ba4

算数チャチャチャ(NHKみんなのうた)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/5f45451ee92873728f3046ed36cdce71


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4 コメント

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Unknown (やす)
2016-07-04 11:24:51
とねさん

SHARP EL-586 は、以前会社の人が持っているのをみて、イイナァと眺めていました。関数電卓では現在までで最も薄いものだと思います。

この当時はFX-602Pを愛用していましたが、今回入手なさったCASIO fx-2200は、同様のデザインですね。当時のCasio電卓は、このようなアルミ板金を濃い色のプラスチックと組み合わせたデザインが多かったように思います。電源スイッチもスライドタイプでしたね。

おっしゃるように黄色のバックに黒液晶というのは、当時は多かったように思います。視認性を確保する(黄色と黒のコントラストが大きいから?)ためなのだろうとは思いますが、海外の電卓ではあまり見なかったようにも思うので、日本国内で調達できる材料や部品の影響もあったのかも知れませんね。

いずれにせよ、懐かしいものを拝見して、しばし当時を思い出しました。
やすさんへ (とね)
2016-07-04 12:30:06
やすさん

コメントありがとうございます。fx-602Pユーザーだったのですね。サイズがわかるようにfx-602Pと同じサイズのfx-502Pとfx-2200を並べた写真を記事に追加しておきました。

> 日本国内で調達できる材料や部品の影響もあったのかも知れませんね。

なるほど、そのような可能性があるかもしれませんね。

余談:fx-2200の発売年を1978と書いていましたが、1977が正しい年だとわかったので修正しておきました。
理系の方なんですね (もの)
2018-08-19 20:15:46
さすが、GO印に目をつけただけのことはありますね(笑)
私も何を隠そう理系です。建設工学ですが(笑)
さて、私が愛用していたのは、SHARP EL-5103Sです。
プレミアムになっているかもです。
デザインの良さと携帯性の良さで、オークションで再購入し、今も仕事で使っています。
昔の日本製は高級で良かった。もうこんな商品作れないですよね。
Re: 理系の方なんですね (とね)
2018-08-20 18:09:01
もの様
はい、大学時代は数学(応用数学)専攻でした。
いまでもSHARP EL-5103Sなどという、古い関数電卓を仕事でお使いなのですね。この時代のシャープの関数電卓はキーのデザインが好きでした。

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