テーマ:歌舞伎大好き!(1103)
カテゴリ:読書
夢み、涙し、耐え、祈る。 梨園の御曹司、雪雄に仕える光乃の、献身と忍従の日々。 雪雄の愛人の出産や、料亭の娘との結婚・離婚にも深くかかわる光乃。 一門宗家へ養子に行く雪雄につき従い、戦中の、文字通り九死に一生の苦難をも共に乗り越えた光乃。 続く戦後の混乱期、雪雄の子を宿していると気づいた光乃の、重い困惑と不安…。 健気に、そして烈しく生きた、或る女の昭和史。 ■きのね(上)■ 雪雄は、金持ちの令嬢と結婚するも、別れた。 原因は、今でいうところのDV、家庭内暴力だ。 殴る、蹴る、二階の階段から突き落とすなど、命を落とすかもしれないといいうくらいに、キレる。 そんな中でも光乃は雪雄を愛している。 そして、たった一人で子供を産むのだ。 しかも真夏の暑い時に、人に知られてはならぬと部屋を閉め切って、蒸し風呂のような中でたった一人で出産する。 座敷を汚してはいけないからと、トイレで出産するのだが、そのあたりが、壮絶で、読んでいて涙が出てくる。 生まれた子供とは、市川海老蔵の父親。 雪雄=光乃の子どもが 十二代目市川團十郎=堀越希実子で、その子が 市川海老蔵=堀越(小林)麻央となる。 また、雪雄には二人の弟がいて、次男が家を継いでいるが、次男の孫が 松本幸四郎、ひ孫が染五郎というわけだ。 それにしても、華麗なる一族だが、梨園の妻になるのも、条件がある。 『役者を立ててでしゃばらず、かつ適度な華もなければならない』。 その上、〇代目襲名などとなると、莫大なお金が必要なので、梨園の妻は金持ちの令嬢がおおい。 現海老蔵の母親も金持ちの令嬢だったというし、 松本幸四郎の妻も令嬢だ。 雪雄は、一度結婚するが、金持ちの令嬢で、乳母を連れて嫁いできた。 とすると、貧しい女中の身の光乃がどれだけ、辛い思いをしたかは、よく分かる。 身内としても、隠しておきたいといいう思いがあったらしく、作者の宮尾登美子は、小説を書くにあたって苦労をしたそうだ。 この小説の中には、歌舞伎の作品が沢山出てくる。 歌舞伎に詳しい人は、倍面白いし、歌舞伎を知らない人は、これを読むと歌舞伎を見たくなるはず。 また、古い言葉も出てきて、面白かった。 ■書き抜き■ ●まるで湯殿に幡随院長兵衛(ばんずいいんちょうべえ)のような様子になるのはよくよくのこと・・・(略) *寝巻の前をはだけたことの比喩。 ●(略)片褄(かたつま)取るなり・・・(略) ●光乃の継母の喋る、東京の方言。 *いつのかまに(方言)→いつの間にか(正しくは) *よまんどしかかんどし(読まん同士書かん同士)→文盲 *みじんまく→身じまい *しょざわいがない→退屈でしようがない。 ●梨園とは、唐の玄宗が梨の木の下で自ら俳優の技を教えたという唐書のなかの古事をひいて演劇界、とくに歌舞伎界を指す言葉(略) ■「きのね」モデル、十一代目市川團十郎の妻・堀越千代の人生が壮絶すぎる…■ ■「きのね」まとめ■ にほんブログ村 ・・・・・・・・・・・・・・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.02.22 11:47:48
コメント(0) | コメントを書く
[読書] カテゴリの最新記事
|
|