フランク

80年録音。プラハ四重奏団のフランク、弦楽四重奏曲です。プラハ芸術家の家、弦のチェコを支えるのは木質のホール。四重奏はすべて、ヴァイオリン属から構成されます。西洋音楽での中心的な楽器であるヴァイオリン。属が同じということはすべて同系統の音であり、音色の差異を出しにくく、それは作品にも、録音会場にも大きく影響するのです。四声、和音は完結し、旋律にそれを支えるものと完全な形。バランスは留意されますが、録音が難儀するのは、そうした現代のマルチ・マイクでバランスを採ることに尽きます。良好なホールに求められるは、オーディオや楽器と同じで、固い床、豊かで、暖色の残響です。優秀なホールはそれらが自然な作為をもって演奏を支えることになります。フランクの曲を特徴づける転調と、半音的音階。音楽は精妙で、とりわけ緩徐楽章は微妙な効果がありますが。フランクは多くの門下にめぐまれ、当時のフランスではきわめて珍しい論理の構築に基づいて構成された楽曲を書きました。代表作である交響曲も、ヴァイオリンソナタも、弦楽四重奏曲もいずれも1曲。それぞれの分野で欠かすことのできない楽曲ですが、フランクの置かれた時代は劇場音楽興隆の時代。劇場での演目も、決してフランスの音楽とは限らない状況でした。サン=サーンスの呼びかけによる国民音楽協会の発足も、普仏戦争後のナショナリズムの高揚が背景にありましたが、管弦楽や室内楽にも光をあてようという試み。そして、構築性に優れたフランクの作品がようやく認められたのが、68歳。協会主催の演奏会での弦楽四重奏曲だったのです。
 弦楽四重奏曲の1890年。それ以前、88年の交響曲は批難を浴びました。現在の傑作とされる作品にあってもほとんど不遇の状態だったのです。86年、イザイに捧げられたヴァイオリン・ソナタも結婚式の祝いという私的なものから生まれました。好事家によって高まる評価。最終的には20世紀に入っての評価の確立です。最晩年である、弦楽四重奏曲の成功の同年、辻馬車の衝突事故。それから復帰を果たすのですが、7ヶ月後には風邪を悪化させて亡くなっています。ブルックナー、ヤナーチェクに並ぶ音楽史上、稀にみる晩成の例です。カペー四重奏団はピアノ五重奏曲の録音を残しましたが、弦楽四重奏曲は録音せずに終わったことが悔やまれます。フランス産ではパレナン四重奏団。構築性ではドイツ、ゲヴァントハウス四重奏団など。残された室内楽も、ピアノ五重奏曲、ヴァイオリンソナタと、弦楽四重奏曲と3曲のみで、いずれ劣らぬ名品ですが、ヴァイオリンソナタ以外は録音の点数も限られます。フランスお家芸の循環形式。ダンディの談によると、創作の机にはベートーヴェン、シューベルトのスコアが置かれ、その影響を受けていたとか。直截的、表層からそれらを読み解くのは困難ですが、循環する主題。終楽章では、主題が回想され、全体が振り返られるのもベートーヴェンでいえば第9交響曲的。全体の標準演奏時は50分に近い重厚な大作です。当盤は、快速で進められ、全体の見通しもよいもの。晦渋でありながら、初演時に成功を収めたのは、叙情と終楽章に収束していく構成です。作品も陽性で叙情は光るものがあります。

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César Franck - Quatuor à Cordes
Quatuor Ysaÿe

Dvorak, String Quartet No 12 , Prague Quartet