アルバン・ベルク

74年録音。アルバン・ベルク四重奏団。作曲者の名を冠した、その作品集。テルデックの初回の録音です。EMIへの再録音は91、92年と、20年近くを経過してのもので、そこには成熟がありました。とくに「叙情組曲」に錬り込まれたものの多層を拾い出したこと。鋭利なだけではない柔らかな響きが全体を包み込みます。この種の音楽につきもののぎすぎすとした乾いた響きではなく、響きはロマンの成熟の延長にあります。新ヴィーン楽派といわれるように世紀末の爛熟から発展した音楽はウィーン出自の音楽であり、アルバン・ベルク四重奏団が当初から目標としていた現代的な視点と、ウィーン伝統の融合が高い水準の中に達成されていました。彼らが学んだラサール四重奏団の熱気とは対照的に、人間的なものを取り込みながら、そこには客観的な視点が保たれ、演奏は精緻です。ここにきて、テルデック盤は役割を終えたのではなく、どのようにクァルテットが出発し、演奏を成熟させていったかを確認する上で欠かすことのできないものとなっています。現代的なものを取り込むことでは、アルバン・ベルクの名を盛り込むことをベルク未亡人の了承を取り付け、ウィーンを離れて、アメリカの地で、ラサール四重奏団に機能性と音楽の構造、表現といったことを学んだ。当盤は、日本デビュー盤であり、文化庁「芸術祭」大賞受賞盤。ウィーンの音楽大学の教授によって結成された楽団は、アメリカ的な機能性をも取り込みながら、ヨーロッパの伝統を体現する現代音楽のスペシャリストという位置づけだったのです。
 テルデック、それはテレフンケンとデッカの造語であり、同社が抱える優秀な録音エンジニアが再現するのは、マイクのセッティングから、近年につきもの演奏の情報量。それは、微細なものから、レンジを広くとり多くを引出すことにあります。すでに、第1ヴァイオリン主導の第1世代から、ラサール、ジュリアードといった先鋭的な世代を経てのアルバン・ベルク四重奏団は、先鋭だけでなく、豊潤なものを盛り込もうとしていますが、大きく第1世代と異なる点は、演奏の香りといった顕著なことだけでなく、音量の大きさを最初から求められていることにあります。録音のマジックだけではなく、それを実演でも再現しようとした。のちに、楽曲への意思の徹底が必ずしも達成されていなかったり、ハプニングがあったにしても、実演を発表していくことになりました。スタジオでは、そうしたところまでは確認できませんが、当盤からほどなく来日がありました。実は新盤がより豊潤なものを加えた演奏史に残る金字塔であったとしても、その20年近く前の旧盤の方向性に大きい変化はないのです。かえって、テルデックの音響思想はかえって、作品の先鋭を引出しているかもしれません。アドルノのいった「潜在的オペラ」や、ツェムリンスキーの引用。標題性と盛り込まれた恋愛感情。叙情組曲をひも解く楽しみは多く残されています。

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