シェーンベルク
 
84年録音。74年、シェーンベルク生誕100周年の年にオランダで組織されたシェーンベルク・アンサンブルによる室内楽曲集。「浄夜」「弦楽三重奏曲」「ファンタジー」の3曲を収録しています。「浄夜」は原点にあたる弦楽六重奏版。シェーンベルクの初期作品から、晩年の12音技法に到達。切り詰めた編成の厳しさで知られる弦楽三重奏曲まで、それぞれ編成の違う作品を柔軟に対応できるのでは、シェーンベルク作品に特化したアンサンブル。組織した指揮者、ラインベルト・デ・レーヴの意図が、多様な編成に対応できるようにさまざまな奏者を集めることにあったからでした。ファンタジーはシェーンベルク最後の器楽作品。ヴァイオリンとピアノのための作品で、多様な編成に対応できる柔軟性と、現代の音楽における感性はシェーンベルクにとどまらず集成にあつめられたものはマーラー、ツェムリンスキー、シマノフスキ、ヤナーチェク、ストラヴィンスキー、メシアン、ブーレーズ、シュトックハウゼン、リゲティ、ヘンツェ、カーゲル、ユン・イサン、クルターク、マデルナ、ノーノ、ベリオ、ダラピッコラ、ウストヴォリスカヤ、グバイドゥーリナ、デ・レーウ、J.アダムス、リームほかマーラー以降の音楽の音楽の歴史をたどることのできるものです。現代の音楽の多様を受けて、その編成もさまざまで特殊な楽器をも含みます。当盤も弦楽器を中心に編まれていますが、6重奏から、2重奏までと様々。アンサンブルの名に冠したシェーンベルクが後期ロマンの残照を受けて出立した「浄夜」の弦楽六重奏版。四重奏からの拡大形という点ですでにロマン的ですが、ブラームスの同編成の2曲がすぐに思い出されるように、書法もまたブラームスのところから出発しています。同時に、ワーグナーの「トリスタン」以降の標題的傾向。マーラーはウィーン楽友協会の作曲のコンクール、「嘆きの歌」を選考からおとしたブラームスを恨んでいましたが、初期の弦楽六重奏のロマンは認めていました。シェーンベルクにあって、敵対的と思われていたワーグナーとブラームス的書法の並存。ワーグナーばかりか、ブラームスもまた未来の音楽に向う道の過程にあることを示したのでした。  
 そこから、無調、12音技法の獲得を経て、緊密な「弦楽三重奏曲」「ファンタジー」の音列に則った境地にたどり着きます。ここには「浄化」にはあった標題的傾向は影を潜め、古典的な形を借りるようになりました。それは緊密さに大きく寄与しているともに、無軌道に進む可能性のある12音技法を形式という縛りでもって束ねることに意図がありました。そのため、表現主義の反動としての新古典主義が、同じように形式を用いる意図とは性質が異なります。弦楽合奏版の「浄夜」も、響きの違いだけで、弦楽六重奏版との相違点は大きくありません。あえて原点である六重奏をとりあげることで編成の違いは意識させない構成になっています。だからこそ浮き立つ音楽の相違。当盤のように初期、後期と併せられることにより、シェーンベルクの歩んだ道がドイツ音楽の伝統のうちに出て、その余波を後続に与えていった過程を辿ることになるのです。

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以下、当盤ではなく収録曲をyoutubeから
 Arnold Schoenberg - Phantasy for Violin and Piano, Op. 47 (1949) [Score-Video]


 Arnold Schoenberg — String Trio Op.45 [w/ score] Performed by the Los Angeles String Trio