シューマン
 
クーベリックのシューマン。60年代にベルリン・フィルとの間でも録音していますが、70年代、アナログ末期にバイエルン放送交響楽団に再録音された交響曲全集からのもの、第4交響曲です。さまざまな編集があり、当盤では第3交響曲「ライン」と「マンフレッド序曲」を併録しています。どちらもオーソドックスな定番ともいえるものですが、グラモフォンでのマーラー、ベートーヴェン、ドヴォルザークといった定番に対し、ソニー・クラシカルでのモーツァルト後期交響曲集、ブルックナーといったものと並んで、古典的均衡のあるシューマン像はクーベリックならではのものです。管弦楽の混合色。常に、多くの音がなっていて、そのバランスに留意しながらの効果をあげることの至難。そのために、マーラー版などのおもな作業は編成の刈り込みにありました。指揮者の見識に任される部分も多かったシューマン。同時に、その欠点こそシューマンであり、シューベルトから交響曲の新しい道を見出したロマン派の典型は、色彩的な効果ではなく、まさに混交した和音の固まり、響きを望んだのです。近年、アーノンクールやシャイーの試み、ピリオド楽器のシューマンなども登場し、独自のロマン的な内容と響きの再発見が行われるようになりました。クーベリックのものはモダンで築き上げて来た伝統に添ったものですが、アナログ末期ということ、録音の優秀もあり、音像を積極的に肯定するものとしてシューマン的なトーンを表出しています。第1番から第3番までは、いずれも79年録音。78年録音の第4交響曲は、このチクルスはじめのものとなりました。作曲の順番としては2番目のものであった第4交響曲。集中して一つの分野に特化する傾向のあったシューマンですが、第1交響曲と同じ年に「交響的幻想曲」として構想された曲。つまり、その作曲年の1841年は「交響曲の年」ともいえるものでした。ロマン派で交響曲が一端行き詰まるのは、形式と盛り込む内容である情動との均衡が取れないことにありました。それはピアノソナタ、協奏曲なども同様なのですが、シューマンもしばし、幻想曲として作品を構想したのでした。ピアノ協奏曲もしかり。
 「交響的幻想曲」は初演時の評判が芳しくなく、作品の価値を確信していたシューマンは10年後、おもに金管パートを修整した上で、第4交響曲としたのでした。  古くフルトヴェングラーが揺らぎをもって演奏した定番。録音ということに不審感をもっていた巨匠が、成果物として満足したものの一つとして挙げていたのが、このシューマンでした。内容は、幻想曲出自らしく4曲中、もっともロマン的な内容となっています。初期にはピアノ曲ばかり書いていたシューマン。結婚後の「歌の年」ですが、ここでは文学青年シューマンらしく歌詞を選定し、効果をあげるピアノ書法と歌を融合しました。そこには、ピアノ書法の延長を見る事ができますが、管弦楽も同じように楽器の扱いはともかく、その書法の応用があります。クーベリックのものは、今一度、ロマンの揺らぎではなく古典的均衡に作品を寄せるものですが、決して管を剥き出しにしない弦の書法。そこに立ち上るロマンは覆いようもありません。

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 Schumann Symphonie N°4 & Piano Concerto Wilhelm Kempff, Rafael Kubelik