29年前の震災当日



ワシは

今の仕事とは全く別の業界にいた




ちょうど震度7激震地域に住んでいて

数時間前に眠りにつき

あの時間にはまだ夢の中だった




「ドカーン」

という音とともに、

ベッドごとつきあげられ目が覚めた




一瞬、何が起こったのかわからない

・・・

考える間もなく

続いて激しい揺れが襲ってきた




「ガサガサガサ」




1分ほどだろうか、ほんの僅かな時間なのに




一生のうちで一番長く感じる1分だった




急いで身内に電話を掛けたが
二度目にはもうつながらない




テレビではまだ何もわからない




何度かやってくる余震が血のめぐりを早くする




外へ出てみたが

きのうまでの街は見る影もなく

まるで

映画の「地球最後の日」というシーン




親戚や知人も数多く亡くした




近くで仲良くしていた家族は

6人家族で小さな子供を残し
5人が亡くなった





『丈夫な家をつくりたい』





この年




ただそれだけの理由で

建築業界へ転職した




最初に復興住宅を担当したお宅は

奥様だけが震災犠牲になったご家族




残された子供たちのために

家族のために安心できる家を建てたい

と心から願っていた施主




最後の打ち合わせを終え

「安心できる家ができそうです」

と微笑みと安堵の表情を見せてくれた




その二日後、

家の完成を待たずに彼は「自死」を選んだ




震災で助けられなかった妻の後を追った




ワシは思う




家づくりにおける安全は

宣伝のためのものではない




まずは

家族のいのちを守るためにあるべき




この業界にあって、

ジブンにできる小さなことをひとつづつ




いま、

誓いをあらたに。


2023年1月17日




合掌




熊本地震・東日本大震災.,この度の石川能登震災でお亡くなりになった方のご冥福お祈りするとともに
被災された皆様に心よりお見舞申し上げます。