新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

医師を無理やり地方に送るとどうなるかしら?

2017-11-25 21:34:00 | 医療

こんばんは

 

今日は親戚が集まり、長女の七五三と次女のお食い初めを祝っていただきました。2人とも元気に成長していってくれたら良いなぁと思っています。

 

さて、少し古い記事ですが、フェイスブックで紹介されていて気になったので、僕も紹介させていただきます。

医師不足把握に新指標 地理条件、偏在是正に活用方針

https://mainichi.jp/articles/20171119/ddm/003/040/073000c

 厚生労働省は医師の地域偏在を是正するため、地域ごとに医師がどの程度足りないかを示す新たな指標を導入する方針を固めた。そのデータを基に、医師派遣に関する都道府県の権限を強めるなどして平準化を図る。有識者検討会で年内に対策を取りまとめ、来年の通常国会に医療法の改正案を提出する方針だ。

  (中略)

 不足する地域での医師確保には、都道府県の権限を強める。多くの大学医学部の定員には、一定期間の地元勤務を条件に奨学金返済を免除する「地域枠」があるが、都道府県が定員増などを大学に要請できるようにする。地域枠の卒業生を医師不足地域に派遣したり、病院ごとの臨床研修の定員を調整したりする機能も持たせる。また、地域医療の核となる病院の院長になる要件に、医師不足地域での勤務経験を加え、キャリア形成の優遇を図る

 診療科の偏在も改善を進める。この20年間で、麻酔科や放射線科、精神科の医師は6~8割程度増えたが、激務の外科医や産婦人科医は横ばいだ。厚労省は診療科ごとの各都道府県の需要を予測し、必要な専門医数の目安を示して勤務先を誘導する。来年度導入される新専門医制度でも、研修病院が都市部や大学病院に偏らないよう日本専門医機構が都道府県と調整することを、法律に明記する。【熊谷豪、河内敏康】


医師不足の解決策、なかなか難しいところですが、「時間的距離」を短くすること。これが僕がとりあえずできることと思っている考えです。

 

いきなり人は増えませんし、医師がその地域に集まらない理由は色々あります

 

前も書きましたが、地方に行けば行くほど「子供の教育」などは気になる人には気になると思います。僕は公立、国立の小・中・高・大学ときましたし、特別塾なども浪人した時に予備校に行った他は経験はないです。

 

子供達に関しては、妻と「別に行きたければ行けば良いし、私立の中学とか出なくても良いと思うけどね」というような話をしています。

 

そんな僕でもあまり田舎に行くと「生活や勉強などで子供や妻が大変だよね。」と思いますし、行くのであれば単身赴任だろうなと思います。

 

医師になると必ず「地方で勤務」することが法律で決められたりしたら、医師のなり手もいなくなるかもしれません。というよりは、専門医を取らない選択肢も出てくるかもしれません。

 

医師になった人たちの中には「医師」がどちらかというと副業になっているような方々もいます。昨日、出版社で打ち合わせをしていた時にそういう話が出てきました。「医師の中には・・医師としての勤務は週3回くらいで常勤待遇にしてもらって、他に起業をしていたり、別のことをしている方がいますよね」と。

 

この働き方がおかしいとは思っていません。もともと、人によっては「医師」になったことが「成績が良かった」「ステータスや安定性」などが理由の方がいますので。そういう方々は地域に行くデメリットが大きいと考えて、反発するかもしれません。

 

僕は「医師という仕事が思った以上に楽しかった」ことと「人を残すこと(教育)が最も大事」と思っているので、大学病院などの勤務、人を育てることをいつも考えています。地域医療が大事ではないとは思いませんが、自分が思っているような仕事ができないと、人は抑鬱状態になったりすることがあります。

 

先日も「優秀な方が地方の重役になったら、やることが少なくなってしまって抑鬱状態になった」というような話もありました。

 

「地方に行きたくて、そのような経験をしたい人を優遇する」システムであれば、僕は別に反対はしません。地方に行くことで一時的に収入が上昇し、今まで見たものとは異なる疾患群を見ることは勉強になります。そういう機会を活かせる人は活かせます。ただそれは全員ではなくて、そこに行きたくないのに無理やり行かされたような人がどういう勤務になるかは知りません。

もし地方に行かせたいのであれば、いくつかの優遇(院長になる人は・・・というような寝ぼけた話ではなく。そもそも基幹病院の院長になりたい人が多いとは思いませんし、開業するのに制限をしたら・・・ますますおかしくなると思います)条件を作らないとダメですね。人が足りなくて、オンコールは続くけど、患者自体は少ない。けど、来るかもしれないから病院から離れることもできない・・・。これだと疲れるだけで、なんの経験にもならない。そういう病院も多数あります。

 

また、強制的に「地方に行かせる」という制度であれば、基本的に反対です。それは就業の自由(職業選択の自由)、居住移転の自由の制限を医師のみが受けるのであれば、それに伴う何かが必要だと思います。

 

昔、CBTが始まると知った時に「実際に受けることになる後輩たちのメリットが乏しいから、せめてCBT合格者はどこの病院でも病院実習ができるようにするべきだ」と考えていた僕だから思うことかもしれませんが、デメリットがあってメリットが少ないなら何かを対策を行うべきである・・・と思います。

 

僕は基本的に患者さんが来ない病院は医師に取っても経験値が少なくなり、医師の経験が少なくなれば良い医師がそれだけ少なくなる可能性があると思っています。できることならば、そういう病院に無理やり行かせるのではなくて、病院の集約化と時間的距離の短縮により対応するようにしてもらいたいものだと思います。

 

研修の定員を調整し、地方に無理やり若手医師を誘導する・・・。それは国が行うべき対策としては如何なものか・・・。そこに人が集まる理由はあり、そこに人が集まらない理由もあります。それを無理やりおかしなことをしたら、今の体制も崩れると思います。

 

僕は首都圏の方が結構厳しい体制でやっていると思いますので、人をこうしたら良いのではないかと無理やり動かせば・・・多分、2004年以来またおかしくなるのではないかなと。

 

繰り返しますが、やるのであれば不要な病院をむしろ潰した上で、医師を基幹病院に集約化し、患者もそこに集まるように誘導する(やるなら逆だと)。その上で患者数が増えれば経験値が増えますので、若手医師も集まる環境が作れます。でかい病院ができれば、そこを中心に街を作るのもアリだと思います。働く人が増えれば、それを対象にする職業の方も増え、街を作ることも可能です。アメリカナイズされていますが、地方から患者が集まるのであれば、ホテルも含めて必要です(亀田総合病院とかはそんな感じでしたっけ?)。

 

全ての病院が同じようにできるのは無理です。そのために人を均等割しようとしたら、遊兵が増えてしまいます。その時に「医師」一人一人の能力も低下し、無理やり分散させたことで需要な大きな都市部から崩壊するような気がします。

 

僕は全ての日本医療の情報を持っているわけではありませんので、上の方々がどのように考えてこれを思いつかれたかは存じません。

しかし、いくつかの知人からの話や僕の知る情報を集めると「現場は不安視しているな」と思っています。それは無理やり地方にいかせられる不安視もあると思いますが、考えている人は「思っているほど都会が潤っているわけではない」と思っています。今の人数で「医師が過不足なし」なので良い研修ができます。医師が余っているのであれば、経験値が少なくなるので、そこは研修には不向きな病院です。

ちょうど良いところから医師をとって、医師が不足している(ように見える)病院に移せばどうなるか。

 

そんな気がする今日この頃です。

まぁ、僕がここで呟いたから何かが起こるとは思わないのですが、なんとなく。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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首都圏と地方の差 (Nao)
2017-11-27 01:35:31
こんばんは。
もう北海道へお戻りの頃でしょうか。
無事に七五三とお食い初めのお祝いが出来て良かったですね。
娘さんたちの健やかな成長をお祈りいたします。

医師という職業は、自分の生活を優先出来なくて大変だな・・と入院中いつも思っていました。
ただえさえ時間的拘束が凄いのに、住む場所まで決められてしまったら、若い優秀な人たちが医者を目指さなくなってしまいそうで将来が心配です。
特に最近は、仕事よりもプライベートという若者が増えていますし・・・

子どもたちの教育面ということから考えると、私立と公立は結構差があると思います。
私自身は普通に公立校でしたが、子どもたちは二人共中学受験しました。
そして、教育内容のあまりの違いにビックリしています。私立は深いです・・・
附属校なので受験対策が無いということも大きいですが、授業の内容が全然違います。
そして、この辺りはまだ中受の割合が少ない(3割程度)ですが、都内は7割以上が中受と聞きます。
その結果、公立校のレベルが下がるんです。
地方の公立校とは違うと思ったほうが良いかもしれません。
もちろん色んな考え方があるので、一概には言えないですが・・・

そして、医療における首都圏と地方の差。
同じにするのは現実として難しいですね・・・
先日、Blogで知り合った同じ病気の皆さんとお会いしてきました。とても楽しく、勉強になり、充実した時間でした。
同じような時期に発病したM3患者が5人も集まったんです。
私以外は皆さん東海地方の方たちだったんですが、この病気自体が滅多に無い状態のようで、治療方法や制限についての考え方がかなり違っていました。
慎重になり過ぎていたり、少し古い治療方法だったり・・・
症例が少ないということは、そういうことなんだな・・と感じました。

医師不足の解決策は、何が正解なのか分かりませんが、上の方たちには現場の意見もきちんと聞いてほしいですね。
頑張っている医師の皆さんに、大きな負担が無いといいなと思います。

年末に向けてお忙しいと思いますが、お身体大切にしてくださいね。
ありがとうございます (アンフェタミン)
2017-11-27 19:23:53
>Naoさん
こんばんは、コメントありがとうございます。

北海道に戻りました。日曜日に降った雪で、かなり足元が悪くなっていますが、明後日が最高気温が10度を超えるようなので、また雪が溶けそうな状況です。

娘たちは無事に七五三の祝いができました。長女も妹の写真撮影用の服などを選んで、ご満悦でした。

おっしゃられるように時間的拘束が長い若手医師に、住む場所まで強制されると医師のなり手がなくなるような気がします。

まぁ、医師熱望組はもちろん医師になると思います。ただ、医師以外にも夢がある若手の優秀な人間たちは医師を止めるのかしら・・と。代わりに強制されても医師になれるなら・・・というグループが入るのかもしれません。

私立の中学校に行けば「教育レベル」が高いのかなとは思います。ただ、行くか行かないかは、娘本人が決めて欲しいとは思います。私立に行きたければ、私立に行く勉強をして、私立に行けば良いと思いますし、自分で勉強してそのレベルまで押し上げるならそれでも良いと思いますし。何よりも目標が何かによって、道は異なると思いますので。

どの道を進んでも、娘が後悔しないならばそれで良いなぁと。もちろん、どんな道にも進めるように準備することも重要だと思います。

首都圏は良い教師が私立に集まっているのでしょうか。給与や待遇がよければ、当然そちらに人は集まると思います。そういう意味では、もしかすると中学受験の方が良いのかもしれません。

患者さんの会で「治療の違い」を感じられたとしたら、おそらくそれは正しいと思います。僕も後輩たちによく言います。

「勉強に行った先で、うちとの違いを勉強して来なさい。みんな『自分たちが標準』と思って診療をしているので、細かいところの違いに気がついていないから。僕たちは色々なところに行くので、様々な違いを身につけることができ、それをより良い形にできる可能性があるから」

そんな風に後輩には伝えていました。多分、Naoさんが入院していた頃のK先生はそれを実感したと行っていました。ただ、大きな治療方針は変わらないはずなんですけどね(臨床研究に参加しているか、どうかはあるかもしれません)。

現場の意見を聞かずに進むのが日本の政治だと思っていますが、孫子にも「現場を知らない上役がでしゃばって、現場に口を出すのは良くない」という意味の文章があるのですが・・・。日本人は尊師をよく読んでいるはずなんですけど・・・。

年末年始ということで、どんどん寒くなるかと存じますが、ご自愛ください。

また、コメントいただければと存じます
一箇所訂正 (アンフェタミン)
2017-11-27 19:38:43
前のコメント

日本人は尊師・・・というところは「孫子」の間違いです(汗
国のやり方の謎 (女王様)
2017-11-28 02:43:22
どうも方向が何かおかしい。
おかしいことに気付いてないことがおかしい。
地方に縛り付けると言っても、入学時と6年間意思が変わらずにいる学生が果たしているのかどうか。
それどころか、医学部に受かったところで目標を見失う「ひ弱なエリート」が増えているといいます。
これから何をしたらいいかわからない・夢や希望がない等々で休学したり 辞めて違う仕事のバイトをしたり という学生が医学部に限らず少なくないそうです。
オバサンにはあまりにも理解不納だけれど、今の若い子たちはそんなもんかもしれません。
いくら地元密着を推奨したところで 何か違う とリタイアしたら意味がなくなります。

また 将来どういうお医者さんになりたいのか でも違ってきますよね。
血液内科とか 研究や先端医療に関わりたいと都会の大きな病院を志望するでしょう。 反対に地域医療、よくある疾病 二次救急等で力を発揮したいなら 地方の大学病院でもいいでしょうし‥。
初期研修をして初めて気がついたりするかも知れないですよね。

ムリにでも地方に就職させるには、むしろ研修に出てからでもいいのではないかな?
都会の大学がレベル高いかといえば決してそうとも限りません。
ただ、地方にくらべたら我が神奈川や東京などは医大や医学部が数はあり、成績もピンキリだったりします。
偏差値が若干低くても、都会にたくさんある医学部ならどうにかひっかかるから目指す という受験生もいるでしょう。

どこの大学を出たか?なんてことより、何故医師を目指したのか、どんな医師になりたいのか。
そんな目標意識が重要なはずです。 どこの大学を出ようが、それが患者にとっていい医師じゃなければ全くどうでもいいことです。

そして厚労省や文科省は、アホなバラマキよりもう少し学費を下げることを考えていかないと。
やる気も能力もある受験生が 経済事情で諦めざるをえないのはおかしいし、だからといってバラマキをするのは筋違いでしょう。
どうも日本の教育はカネを納めて 入学試験さえクリアすればどうにかなってしまうようで‥。

私も、中学で補修塾というか寺子屋みたいな塾に通っただけです。
神奈川は公立高校のほうがレベルが高いこともあるし、私学に行かせる余裕もないと言われていましたから。
そのかわりというかなんというか、お稽古事は書道にピアノにバレエに と大忙しで、また何にも役に立っていなくて。
ピアノ教室の先生夫妻が外国人で、英会話教室も兼ねてたかな?と思います。
楽しめれば好きになり 得意になるものですね。 お勉強をムリに詰め込んでもイヤイヤやるのでは無駄になります。

お食い初め、無事に終わってよかったですね。
鯛の尾頭付き でしょうか。
住んでいる地域のならわしなのか、神社で小石を授かって「歯がため」の儀式があったり 梅干を口につけたり。 梅干のようにシワシワになるまで長生きできるように‥らしいですが なんとなくビミョーなしきたりです(笑)。

次に会うのはもうX'masでしょうか。
少し会わないとどんどんお姉さんになりますよね。楽しみですね。
同感です (アンフェタミン)
2017-11-29 06:24:26
>女王様さん
おはようございます。コメントありがとうございます。

おっしゃられるように「医学部入学」が大きな目標で、「どのような医師になるか」「どの診療科に入るか」は医学部に入学してから具体的な目標として上がって来ると思います。それができないと、それまで優秀な成績で過ごしてきた学生も、失速してしまいます。

目標を見失わせないような教育も必要ですし、そもそも医師を目指したきっかけというのはとても重要だと思います。

地方に無理やり就職というのは、研鑽を積んでからでもというのは考え方だと思いますが、僕はどの時期でも家庭の事情などもあるので、あまり良くないと思っています。
そういう変化は「精神的なストレス」になりますし、それがきっかけで優秀な医師が能力を発揮できなくなることもあるかもしれません。

医学部の学費を下げて、より広く人が集まるように・・・というのは大賛成です。

ピアノの先生が外国人・・・素敵ですね。そこで英語も学べるだなんて・・・。素晴らしいと思います。

また、コメントいただければと存じます

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