先日イスタンブール市内のホテルSでディナーをした。

普段家に引きこもりがちの私が
平日の夜にわざわざ仕事終わりのスーさんと待ち合わせたのも、
ホテルSのレストランが謳う「2日間限定・ミシュランシェフミシュラン特別メニュー」のため。

トルコにはミシュランレストランが存在しないゆえ、
自他共にグルメを名乗るスーさんが日頃フラストレーションを溜め込んでいるのは
妻である私もひしひしと感じている。

ゆえに試験追い込み期間であるにもかかわらず、
限定メニューであるのならば、
スーさんが喜ぶのならとバスとトラムを乗り継いで出かけた。

私達のテーブルを担当したのはダルビッシュにそっくりのウェイターだった。
頼んだのはもちろん2日間限定のおまかせコース。

1品目。

「アンチョビ和えでございます」

ダルビッシュはそう言ったが
アンチョビの味、全くせず困惑する。

2品目。

「ポテトと魚のフライのピューレ和えでございます」

一口入れるやフライ、ピューレともにぬるい。
熱くも冷たくもなく、ぬるい

いつ調理したのかと問いかけたくなるほどにぬるかった。

「いかがでございましたでしょうか?」
「うーん、『ぬるい』としか言えません。温かかったら良かったのに」

困惑顔のダルビッシュは笑顔を貼り付けたまま立ち去った。
(彼はこの時点でシェフに通達するべきだった。「あのテーブルの客はめんどくさそう」だと)

3品目。

熱くもぬるくも無く、しかるとて特筆することもない味。
チーズボールと言っていたが、
チーズの味が全くしなかった、とだけ記しておく。

4品目。

30分放置された。

「遅れており申し訳ございません」

ダルビッシュがワインのお代わりをついでくれたが、
その日のレストランの入り、20パーセント。
つまりガラガラ
なのに追いつかない理由とはなんぞや?!

やっと出てきたのはトマトソース和えのパスタで、
味も週末のお昼ご飯に瓶詰めソースで作ったレベル。
ミシュランシェフを名乗るほどのものではない。

5品目。

こっちらもまたしても放置された。

今回はダルビッシュも他のテーブルに忙しいのか、
我々のことは気にしても居ない。

だが繰り返すけどその日の客の入りは2割である。

私はせっかちな父親の血を引いているので
実は4品目のパスタが出る前の時点で
「やってられん、家に帰ろう」と言っていた。

それを「まあ、まあ」と制していたスーさんだが、
そのスーさんが、おもむろに立ち上がって言った。

「ちょっと行ってくる」

この場合は

「ちょっと言ってくる

も含まれていると思うが、
とにかく5品目のカトラリーを置かれてから25分放置された後に
スーさんは受付の方に歩いていった。

この日のスーさんはミシュランシェフに敬意を払うために
普段よりいいカッコウをしていて、
それは同時に威圧感も備わっていたので、
私も「言ってこい!こてんぱにのして来い!」
と送り出した。

見送ってから20分後、スーさんが
暗い顔をしたマネージャーとおぼしき黒服の男性と共に戻ってきた。

男性はただでさえ体全体が暗いのに、
さらに顔を暗くして、
「なにかお飲み物のお代わりはいかがでしょうか」
と力無く私に聞いた。

「笑顔で嫌味をボディーブロー」が得意技のスーさんにかなりのされた模様。

わたしはそれよりも直前に運ばれた最後のメイン、
ラム肉のあまりの乾きっぷりに言葉を失っており、
しかもスーさんの戻りを待っている間に、
さらに肉が乾いていく状態を逐一目で追っている状態だった。

食べてみてやはりラム肉は見た目のまま乾いており、
ラム肉好きとしては非常に残念な結果であった。

落ち着いたところでスーさんに「マネージャーになんて言ったのさ?」
と聞くと、
「思ったままを言っただけ。『ぬるくて、遅い。』ただそれだけだよ」

だけど帰り際、
レストランのマネージャーがひどく恐縮しつつお食事券とスパ券をくれたけど。

スーさん何言った?!

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