残穢 -住んではいけない部屋- | KURI of the DEAD

残穢 -住んではいけない部屋-

作家・小野不由美の第26回山本周五郎賞受賞作『残穢』を映画化。主演は竹内結子と橋本愛。監督は『白ゆき姫殺人事件』『予告犯』の中村義洋。

 

【STORY】

怪談雑誌で読者の体験談をもとにした短編を連載している小説家の「私」。ある日、女子大生の久保さんから住んでいる部屋で奇妙な音がするという手紙を受け取る。久保さんと連絡を取り、調査を開始する「私」。そのマンションには、いくつも人が居着かない部屋が存在した…。

 

【REVIEW】

日本の夏、金鳥の夏、怪談の夏・・・。

夏も終わりかけだが、日本の怪談もの作品。

 

原作は、人気作家の小野不由美の同名小説。監督は『白ゆき姫殺人事件』『予告犯』の中村義洋。我々にとっては『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズの方がおなじみかもしれない。

 

作品タイトルの『残穢 -住んではいけない部屋-』。

文字通り、穢れが残った部屋で怖いことが起きてしまう物語である。

 

主人公の「私」は小説家。怪談雑紙で読者からの体験談を基に短編を連載していた。

あるとき、すべての始まりとなる手紙が届く。手紙の主は久保さん。建築学科の女子大生。JD。ミステリー研究会の部長も務めているようである。

久保さんの手紙によると、学生寮を出て一人暮らしを始めた築10年で5階建ての「岡谷マンション」202号室で、何かを擦るような音がするというのである。

音のする場所は畳の部屋。そこを誰かがずっと同じ場所をホウキで掃いているようだとのこと。

 

それから数ヵ月後、久保さんから続報が届く。擦る音は依然として聞こえているが、畳の部屋を向いて座っているときは音がしないことが判明。しかし引き戸を閉めると聞こえてくるらしい。久保さんが素早く引き戸を開けると、着物の帯のようなものが一瞬目に入るのであった。

 

2人はメールでやりとりを続ける。

上記現象は、着物を着た人が帯締を解き首吊り用の紐に利用。首を吊ったときに帯も解け、死体はブラブラ。解けた帯が畳まで達し、擦れた音を出し続けていると推測される。

 

徐々に興味を持ち始めた「私」。過去にも同じような投書があったことを思い出す。調べてみると、同じ「岡谷マンション」の405号室。2年前。

同じく掃くような音。子どもが天井を指差し「ブランコ」とつぶやく。そして人形の首に紐を通して「ブランコ」といいながら遊び出す。その後引っ越した模様。

 

横並びでも縦並びでもない2つの部屋になぜ共通の現象が起こったのか。

久保さんは、不動産屋に確認へ。202号室でも、その他の部屋でも、過去に自殺や死亡事故は起こっていないとのこと。

その後、久保さんの隣の部屋201号室に家族3人が引っ越してくる。

 

それから半年後、久保さんから作家に知らせ。

202号室の前の住人の消息が判明する。梶川氏。職場へ話を聞きに行くが、1年前に死亡していた。どうやら「岡谷マンション」に引っ越したあたりから人が変わり、「岡谷マンション」から別のアパートに引っ越した後、自殺したらしい。

引っ越した方がよいか悩む久保さん。ある日、マンションに帰宅すると隣の201号室の奥さんがやつれた表情で出てくる。このあたりに空き巣とか放火事件があったか、と聞いてくる。引っ越してきてからイタズラ電話に悩まされているらしい。公衆電話から、今一人ですか、今何時ですか、消化器ありますか、など。

 

これはマンション全体がおかしいのでは、と考えた久保さんは「私」に連絡。マンションが建ってから自殺はなかったが、建つ前に自殺があったのだろうか。

「私」は「岡谷マンション」へ行き、久保さんと初対面。マンションが建つ前のことを調べ始める。「岡谷マンション」が建つ前は駐車場、その前は空き地だが一角に小井戸家。小井戸氏は一人暮らしの老人で、家はゴミ屋敷。知らないうちに死亡していたらしいが、極度に隙間を嫌って空間をゴミで埋めていたらしい。

しかし問題はそれより前。この敷地が2軒の家だった頃。高野家。娘の結婚式の日、式直後に母親が着物姿のまま首吊り自殺をしていた。あの擦る音である。

高野家を調べると、自殺した母親は式の前からおかしかったようである。赤ん坊の声が聞こえるとしきりに訴え、近所ぐるみで赤ん坊を泣かせていると妄想。

202号室の前の住人だった梶川氏も赤ん坊の声に悩まされていたらしい。久保さんは赤ん坊の声は聞いていないようだ。小井戸氏は聞いていたのであろうか。

 

久保さんは原因がわかり部屋を出ることに。

自殺した高野家の母親は、赤ん坊の泣き声とともに、床から赤ん坊の首がいくつも湧いて出ると話していたらしい。

この話を聞いた作家仲間から似たようなエピソードがあるとして、千葉の嬰児殺し事件の資料が「私」のもとへ送られてくる。

 

嬰児殺しの現場は廃屋となり、有名な心霊スポットとなっていたらしい。赤ん坊の首がいくつも出てくるというエピソードで名を馳せた。今は取り壊されたらしい。

この事件の犯人は女。自ら子どもを産んでは殺していたようである。しかもこの犯人は過去にも別の場所で犯行を繰り返していたようで、その場所が「岡谷マンション」が建つ場所だったというのである。やっとつながった。

 

嬰児殺し→高野家→小井戸家→梶川氏→久保さん。

ここまで穢れが連鎖していると、さらに前からも続いているのではと思った「私」と久保さんはさらに調べてみることに。

するとたどり着いたのが、吉兼家。

また作家仲間からの情報。吉兼家には、精神病患者を自宅で監置するための座敷牢が設置されていたらしい。監置されていた人物は、自分に「焼け、殺せ」と命じる声が聞こえるとして、家族に暴力を働いていたようである。また監置されてからも、座敷牢の便所の穴から抜け出し、床下を徘徊するのを好んでいたという。

嬰児殺しの女も、床下から「焼け・殺せ」という声に命じられたという旨の証言をしていたらしい。またつながった。一体どこまで遡るのか? そして「焼け、殺せ」とは何のことなのか? そしてややこしい。

 

吉兼家の墓がある寺へ。住職に聞くと、精神病患者だった人物は墓には入っておらず、最後に墓に入ったのは、その継母である三善(みよし)。彼女の1周忌に嫁入り道具であった婦人画を供養した記録が残っていた。その絵は時おり顔が醜く歪むという曰く付きだった。絵の顔が歪むときは、風の音と多くの人の呻き声が聞こえるという。そして「焼け、殺せ」という声を聞いたものは呪われるらしい。

 

三善の実家は九州の奥山家。炭鉱を経営していたが、100名以上が死亡する火災事故があったらしい。これが元で奥山家は途絶えたとのこと。「焼け、殺せ」はこの事故で焼死した者たちの怨みの言葉だったのである。

最後の当主は家族を皆殺しにして自殺したといわれている。彼も「焼け、殺せ」という声を聞いたのだろうか。

 

奥山家の家がまだ九州にあるらしいと聞いた「私」と久保さんは向かう。作家仲間とその知り合いで心霊マニアの男と一緒に。

心霊マニアの男によると、奥山家のエピソードは奥山怪談と呼ばれ、心霊マニアの間では伝説的な話らしく、ハイテンションで同行しているようである。

 

家に着いた一行。入ってはいけないといわれているらしい部屋へ。その部屋には仏壇とその向かいに神棚。奥の部屋には同じ間取りがもう1セット。さらに奥の部屋。部屋一面に貼られたお札。そして血だまりらしき跡。神にも仏にもすがった当主。それでもダメで日本刀で自殺していたようだ。

見届けた一行は帰ることに。

 

奥山怪談は、様々な形で派生して現在も語り継がれている。

久保さんの隣に住んでいた家族は、引っ越し先で夫が妻と子どもを殺し部屋に火をつける無理心中。

久保さんは、引っ越し先のアパートでまた音がするらしい。その後社会人生活をスタートさせた。

過去に投書した405号室の住人は、引っ越し先ではおかしなことはないといっているが、娘の誕生日のホームビデオにはロウソクを消す瞬間に赤ん坊の大きな顔が映っている。赤ん坊の声も聞こえている。

他の住人も、何事もないといいつつ、子どもたちは天井を見上げている。

久保さんが住んでいた202号室は3度住人が入れ替わり、現在は空き部屋。

そして「私」の家にはイタズラ電話が。

最悪なのは「私」の編集担当の出版社である。夜、社員の一人がパソコンで作業中。気がつくと、手が煤で真っ黒。下を見るとキーボードも真っ黒。焼け焦げたような真っ黒な影が迫ってきておそらくアウト。

梶川氏が自殺したマンションに引っ越してきた若者。擦る音が聞こえ、首吊り状態の着物の女性の姿。絶叫。

 

穢れに触れた者は、すべて呪われていくのであった。

 

エンドロールで住職。婦人画を取り出す。戦災で焼けたといっていたがウソだった。風の音。そして婦人画の顔が醜く歪んでいく。

おしまい。

 

原作は読んでいないが、映画を観ただけでもなかなかの連鎖具合である。

当初の想定を越えたスケールに話が広がっていくのは、なかなか引き込まれる展開。

グロさやビクッとさせるシーンはあまり無いが、日本ホラー特有の想像するとジワッと来る怖さが発揮された作品だったと思う。ジワッと。

 

 

【MARKING】

オススメ度:★★★★★★6

えげつない度:★★★3

なぜ見てると音しないのか度:★★★★★★★7

禍々しい度:★★★★★★6

 

【INFORMATION】

・製作年:2015年

・製作国:日本

・監督:中村義洋

・製作:松井智、高橋敏弘、阿南雅浩、宮本直人、武田邦裕

・製作総指揮:藤岡修

・プロデューサー:池田史嗣

・原作:小野不由美     

・脚本:鈴木謙

・出演:竹内結子、橋本愛、坂口健太郎、滝藤賢一、佐々木蔵之介、山下容莉枝、成田凌、吉澤健、不破万作、上田耕

 

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