これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

クレオパトラとエジプトの王妃展

2015年07月19日 22時07分48秒 | エッセイ
 大学1年の娘はエジプトに関わるものが好きだ。高校時代に世界史を選択していた影響であろう。
 彼女を喜ばせてやろうと、こっそり「クレオパトラとエジプトの王妃展」のチケットを買っておいた。



「わあ、何これすごい! 19日なら予定がないから、早く行こうよ~♪」
 案の定、彼女は食いついてきた。
「ネットで調べたら、小さな展示物が多いみたい。オペラグラスを持っていこうか」
「うん。ちょっと待って。……はいこれ」



 予想通りのはしゃぎようだ。梅雨明けの猛暑の中、上野・東京国立博物館まで足を運んできた。



 さほど混雑してはいない。まずはロッカーに荷物を入れ、身軽になる。筆記用具は鉛筆のみで、シャープペンは認められないから借りればよい。
 チケットを提示し、中に入ったところで気がついた。
「あ、オペラグラス、ロッカーだ……」
「ちょっと、お母さ~ん!」
 せっかくバッグに入れたのに、間抜けなことをしてしまった。私らしいといえばそれまでだが。
 この展示は、5つの章に分かれている。
 第1章 王(ファラオ)をとりまく女性たち
 第2章 華やかな王宮の日々
 第3章 美しき王妃と女神
 第4章 権力をもった王妃たち
 第5章 最後の女王クレオパトラ
 展示品は181あるが、印象に残ったものはさほど多くない。
 たとえば、第2章に「王宮の窓」という作品があったが、柵が牢獄を連想させ、実は似たようなものなのかもしれないと考えさせられた。
 レリーフは素晴らしい。第2章の「王の養育係の長メリラーと王子のレリーフ」、第3章の「プトレマイオス8世とクレオパトラ2世のレリーフ」、「王妃のレリーフ」の前では足を止め、隅から隅までじっくりと観察してみた。
 圧巻だったのは、第5章の「アクティウムの海戦のレリーフ」である。大きさや重量感もさることながら、戦の緊迫感が伝わってくる。ケンタウロスのいる舟にはアントニウスが乗っているが、対峙するオクタウィアヌスに敗れるところなのだ。
「何でこっちがアントニウスってわかるんだろう」
「名前が書いてあるとか」
「体育着に?」
「ははは」
 周りの客は「くだらない会話をしている親子だな」と呆れたかもしれない……。
 ひときわ大きな人だかりで賑わっていたのは、第4章の「アメンヘテブ3世の王妃ティイのレリーフ」である。


(写真右 朝日新聞 記念号外より)
 王妃の肌のなめらかさ、美しさ、清らかさが見事に表現され、「アメンヘテブ3世は何と幸せな男であったことか」と遠い過去に思いを馳せる瞬間だ。説明文には「傑作」と評されており、何も異論はない。
 残念だったのは、彫刻では鼻や腕、足、頭などが欠損している展示品が目立ったことだ。特に、第3章の「ハトホル女神をかたどった柱頭」は、顔が左半分のみで、所有者が誰かと半分こしたのかと想像した。また、王妃に焦点を当てた割には装飾品も少なく、キラキラしていて豪華なものが好きな私には、納得いかなかった。
 満足度としては、「ツタンカーメン展」や「大英博物館展」に比べると、少々物足りない。過度の期待をせず、気楽に出かけることをお勧めしたい。
 出口で時計を見ると、11時15分。ランチの予約が12時だから、まだ時間がある。
「特別展のチケットで、総合文化展も見られるよ。東洋館の2階にエジプト美術があるから、行ってみる?」
「え、ホント? 行きたい、行きたい」
 娘はショップも素通りし、東洋館を目指して歩き出した。ここは基本的に写真を撮ることができる。
「あった、あった」
 まずは、牝ライオンの姿をした「セクメト女神」が目に入る。



 これは、戦を司り、病を癒す女神である。気品があり神々しい。
 少し離れたところに、またレリーフがあった。



「いいね~、東洋館は」
 私も娘も、一気に満足度が上昇する。
 東京国立博物館のよい点は、展示品が山ほどあるところだ。特別展が不完全燃焼でも、他の作品で十分穴埋めできる。東洋館以外に本館もあり、すべてを見るには丸1日程度必要だろう。平成館の2階以外は、撮影禁止品でなければ写真も可だし、カフェやレストランも充実している。一度、開館から閉館まで滞在するのもいいかもしれない。
「さあて、ランチだ~!」
 美術鑑賞と同じくらい、楽しみにしていたお食事タイムがやってきた。
 上野精養軒「天皇の料理番」コラボメニューはこちらから。


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8 コメント

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港ばやしを聞きながらのコメ♪ (片割れ月)
2015-07-20 08:59:44
都会はいろいろな企画展が次々にあるので楽しめますね。
地方はどうしても…てか美術館には全く行かない人間です/(*ε*) アイタタ・・・
公衆の中で妙にテンションの高い会話の母子を見かけることは時々あります(笑)
NHKの上条アナは美術館で寝てしまったというから、それよりはマシです~
今日は東京の娘がお祭りにやってきます。お祭りは同級会のようなものらしいです。
お祭り (砂希)
2015-07-20 20:24:42
>片割れ月さん

まあ、お嬢さんがいらっしゃるんですか。
お祭りが集合のきっかけになるんですね。
元カレが来るのかも(笑)
美術館に全然興味がないという人は、まだいいです。
たちの悪いのは、知ったかぶりやうんちくを語りだしたら止まらない人。
いちいち聞かされるのがダルい。
美術館の椅子に座り、居眠りしている人はいますよ。
休み休みなのか、無理やりつき合わされて疲れたのか。
前者であることを祈ります。
エジプトォ (Hikari)
2015-07-21 07:21:02
どうも、興味がわかないのは、誰が何をしてどうなったかが、ぜんぜん頭に入らないからですな。
私には鳥獣戯画の方が合っているみたいです。
それでも故宮博物院展は楽しかったから、身勝手なものです。
興味のある方には、混雑なしで常設展まで楽しめて、なかなかナイスですね。
「天皇の料理番」は1980年放送のも見たし、原作も読んだし、今回のも毎回録画して見直す気合い。
コラボメニューでランチなんて!
もうひとつのブログも合わせ、充実の1日にうっとり。
『蒼い炎のファラオ】 (心機朗)
2015-07-21 08:20:33
母娘で美術鑑賞が出来るなんていい関係ですね。僕がエジプトという国とピラミッドという存在を意識したのはタイトルにしたマンガの影響かな?昔はもっとテレビでエジプトだ、モアイ像だ、ナスカだ、バミューダだ、UFOだ…と古代に想いを馳せる番組があったように思いますが、最近あまり見ないなぁ。
僕も世界史を選択しました。完全に『ラ・セーヌの星』『ペペロの冒険』等のアニメの影響ですね。
美術の鑑賞と味の探究ですか?
いつもながら知的&優雅なお出かけですね。
ミキちゃんも喜んだようで、さすが娘さんのことよくわかってますね。これなら結婚して家を出ても、人が羨む母娘の関係を続けられるんじゃないかと思いますよ。
見ればよかった~ (砂希)
2015-07-21 18:48:31
>Hikariさん

「天皇の料理番」はリメイクだったんですね。
Hikariさんがそれほど気に入っていらっしゃるなら、かなりの作品なのでしょう。
原作を読んでみようかな…。
今から思い出しても、この日は楽しかったです。
目の保養、知識欲、食欲すべてを満たすことのできるイベントでした。
職場と家の往復だけでは得られない満足感です。
8/1にはガンダム展を見に行きます(笑)
王家の紋章 (砂希)
2015-07-21 18:53:36
>心機朗さん

そうですね、娘の好みはだいたいわかっているつもりです。
食事は私の趣味ですが(笑)
心機朗さんも世界史選択だったんですね。
エジプト関連の漫画で人気だったのは、『王家の紋章』でしょうか。
途中で挫折しました~。
『天は赤い河のほとり』もよかったなぁ。
私の趣味を押しつけて育てたせいか、友達には美術館好きがいないそうです。
しばらくは一緒に行動することになりそうです。
博物館 (ヤッギー)
2015-07-22 09:53:48
博物館好きなお嬢さんがいてうらやましいです。

ウチの息子君はそういうものに無関心です。私は結婚する前には博物館や展示会などによく足を運びました。

エジプトの遺跡など最近ISに破壊されて残念です。
残念 (砂希)
2015-07-22 20:07:17
>ヤッギーさん

息子くんは美術などに関心がないようですね。
男性には多いかもしれません。
うちの夫も同じです。
食べられるわけじゃないし(笑)
娘も美的センスは全然ですよ。
でも、子どものときから連れて行くようにしていたので、習慣なのかも。
ランチつきが効いたとか。

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