April(16) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

梓は4時ごろには仕事を終えて足早に街中を歩いた。


そして、とあるビルの前で立ち止まる。


設楽からここに呼ばれてきたけれど。


自分も彼に自らの決心を打ち明けようと思っていたので、正直ちょうどよかったと思った。


奏に連絡を入れたけれど、電話には全く出ない。


心配はあったけど、とにかく彼に会おうと思った。



「あ、ごめん。 忙しいのに呼び出して、」


部屋に入ってきた梓に設楽は軽い感じで言った。


「・・今日、ちょっと奏が・・具合が悪くて学校を休んでいて・・」


と言いかけて、応接のソファに奏がいるのが見えてしまい


「え!」


びっくりして絶句してしまった。


「・・ごめん。 もうアタマ痛いの治ったよ、」


奏は少し苦笑いをしてそう言った。


「え? え? どうして?」


梓は彼に駆け寄った。


「お昼過ぎごろ。 ひとりでここに来たんだよ、」


設楽が言った。


「奏・・・」


まだわけがわからない彼女に設楽は


「・・きみに。 どうしても伝えなくちゃならないことがあったから。 彼の前で、」


静かに歩み寄った。


「え・・」


そして梓の前にいき


「・・おれは。 きみから・・奏を奪おうなんて・・思ってない、」


ハッキリとそう言った。


「啓輔さん、」


「いや。 ・・実際は・・・正直、少しだけ考えてた。 彼をこれから一流のピアニストにするために、もっと手をかけてやらないといけないって思ってた。 それはおれの責任だと思ってたし、おれがそうするべきだって思ってた。 でも。 間違ってた、」


設楽はぎゅっとこぶしを握った。




「・・結婚してください、」




そして梓の目をしっかりと見て、はっきりとした声でそう言った。


「な・・・・」


梓はもういきなりの展開に思わずよろけてしまった。


奏も驚いて思わず目を見開いた。


「おれが。 するべきなのは。 きみを幸せにすることだ。 今度こそ、」


「ちょ、ちょっと待って・・。 いきなり、」


戸惑う彼女に構わず


「一方的に別れを告げて。 15年経ったら・・きみはおれの子供を産んでいて。 だから結婚するとか、そんなの安易すぎるって思ってた。 彼の父親にいきなりなれるわけでもないし、そんなムシのいい話なんかないって。 実はきみたちと出会った時につきあっている女性がいて。」


「え、」


梓はハッとした。


「・・心が揺れた、というか。 その彼女との将来が見えなくなって。 別れてしまった。 きみたちの存在にものすごく心が動いてしまって。 梓が負った苦労だとか、そういうことを全て考えると。 自分が他の女性と一緒になる未来が・・全く見えなくなってしまって。 今さら、彼氏づらして、なんて・・カッコ悪いだけだと思ったけれど、こうして彼を産み育ててくれていたきみは・・やっぱりかけがえのない存在だ。」


彼のひとことひとことに心が震える。


梓は思わず手で口元を抑えてうつむいた。


「・・奏だけでも・・なんて、思ったのが間違いだった。 おれに必要なのは・・梓なんだ、」


設楽がその思いを彼女にぶつければぶつけるほど


梓はどうしていいかわからず、どんどんうつむいてしまった。


奏は思わず


「お母さん! 自分だけ・・・本当の気持ちを言わないのは・・ずるい。」


母に言葉を投げかけた。


梓はゆっくりと奏に目をやった後、ハンカチを出して目の端をぬぐった。


突然のことに動揺しているのか


その手が少し震えていた。


設楽は奏の思いを知り目が覚めたように梓に突然のプロポーズをします…



ひなたと奏の出会いはこの辺からどうぞ→→→



人気ブログランキングへ


↑↑↑↑↑

読んでいただいてありがとうございました。よろしかったらポチお願いします!