元妻の祐美は
もう休ませてあげたい
と言った。
確かにそうなのかもしれない、と思ったけれど
さくらに熱を持って語られたあの言葉で気持ちが変わった。
可能性があるのならば
本当に再起不能になるまでは、瑠依のそばで寄り添っていてほしい。
きっと。
あの人もそうしてほしいって
願ってる。
葦切はカーテンをそっと開けて、まだ夜が明けきらない紫の空を見つめた。
それから数日後。
さくらが事業部までやってきた。
「・・篠宮先生、」
葦切は驚いて立ち上がった。
「こんにちわ。 早くお知らせしたいと思って、」
さくらはバッグからクリアファイルに入った書面を取り出した。
「・・NYの友人から返事が来て。 修理、受けてくれるそうなんです。」
「え、ホントですか。」
「瑠依くんから写真とか型番などの詳細をメールで送って、何度かやり取りしたんですけど、その友人の会社に以前モリ・シェードの技術部に勤めていた方がいるんです。 その人に相談したら、直してみましょうってことになって。 特別に部品も作って下さることになったんです。 で、これが・・見積もりです。 マウスピースを取り付ける部分もいたんでいたのでそこもお願いして。 全体的にチューンナップしてくれることになりました。 その人も今もこれを使ってくれていると知って大変喜んでくれているそうなんです。」
「そうですか・・・よかった、よかった。」
葦切はホッとした笑顔を見せた。
「NYまで送るのも、丁寧にノウハウを記してくれました。 梱包の仕方とか。 よかったら私の方で手はずします。」
「え、でもお忙しいのに申し訳ないです、」
「いいえ。 なんだか私もうれしいです。 後で瑠依くんにも連絡しておきます。 でも・・先立つものはお父さんにお願いしないといけないと思いまして、」
さくらはいたずらっぽく笑った。
「・・お金ではないです。 本当に、ありがとうございました!!」
いつも落ち着いている葦切が珍しく興奮して大きな声を出した。
さくらはそんな彼をみてふっと笑ってしまった。
「え?」
「・・この前。 直せるかもって言ったときの瑠依くんと・・おんなじような顔してらしたんで、」
葦切は一瞬真顔になった後
「・・似て、ますか。」
とさくらに言った。
「ええ。 最初会った時は似てない親子だなあって思ったんですけど。 笑った時の・・笑顔の余韻っていうんですか。 その感じが、似てます。」
「・・ありがとう、ございます。」
思わず礼を言う彼に
「ま、でも。 葦切さんみたいな人からあんなイケイケな息子が生まれちゃうってのも。 意外ではあるんですけどね。」
さくらはいつものようにやや毒舌を吐いて笑った。
葦切親子の喜ぶ顔を見たさくらはやりがいを感じていました・・
ひなたと奏の出会いはこのへんから→★
奏が北都家に下宿するいきさつからさくらとの出会いはこのへんから→★
お話が長くなっております。よろしかったら読んでやってください・・
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