Trace(16) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「え、直るかもしれないの?」

 

祐美は驚いたように立ち上がった。

 

「うん! ほら前に言った最近知り合ったピアノのうまい中学生の子。 一緒にボランティア行くようになった…。 その子のピアノの先生なんだけど。 前にNYに留学しててさ、その時の友達が請け負ってくれるって言うんだって。 前にモリ・シェードの技術部にいた人と一緒に仕事してる人なんだって、」

 

瑠依は嬉しそうにそう言った。

 

しかし祐美は

 

「ほんとに・・大丈夫なの?」

 

とすぐに信用しなかった。

 

「え? 大丈夫だよ。 その先生もすっごく信用できる人なんだ。 今、藝大の非常勤の講師もしてて。 このサックスのためにすごく尽くしてくれて。 だから・・いいかな。 直してもらっても、」

 

瑠依は真剣な表情になって祐美に言った。

 

彼女はしばらく考えて

 

「・・瑠依が。 そうしたいなら。 もうそのサックスは瑠依のものだから。」

 

と言った。

 

「・・おれのものっていうより。 みんなのものだからさ。」

 

瑠依はにっこり笑った。

 

「だから。 可能性が少しでもあるなら・・絶対に直したい。」

 

サックスの入ったバッグにそっと手を置いた。

 

「・・ありがと、」

 

祐美はようやく笑顔を見せた。

 

「でも修理代。 けっこうかかるでしょ。 見積もりは、」

 

「あ、それは。 父さんが持ってくれるって。 父さんもすっごく喜んでさあ、」

 

「え~? そうなの? また・・いつもいつも。 お金のことはあたしに一切言わないんだから、」

 

「父さんだって、これをまた元通りにしたいと思ってるんだ。」

 

「そう・・。 じゃあ・・その先生に感謝しないとね。」

 

「うん。」

 

瑠依は大きく頷いた。

 

 

「じゃあ。 このスキマに緩衝剤ぎちぎちに詰めて。 動かないようにね、」

 

「え、このくらいかな。」

 

「もっとだよ。 これじゃまだスキマある、」

 

「よしよし・・。 じゃあ、こんなもんか。」

 

翌日には瑠依がさくらの事務所にやってきて、サックスをNYに送るための梱包をした。

 

「じゃ。 これ。 国際郵便の送り状書いたから。 出来上がったら郵便局持っていってね。 修理にどのくらいかかるかわかんないけどー・・。 とりあえず経過はメールで送ってもらうことにしたから。」

 

さくらは送り状を瑠依に渡した。

 

「先生、英語ペラペラなんだー・・」

 

「いちおう5年くらい行ってたから・・。」

 

「いろいろ経験してんだなー。 おれの経験値なんかまだまだだな。」

 

そんな風に言う彼に

 

「まだハタチでしょ。 あたしのハタチから36までの人生。 めっちゃ濃かったから。 これからこれから。」

 

さくらは笑った。

 

 

『みんなのサックス』の意味は・・・

 

 

ひなたと奏の出会いはこのへんから→

 

奏が北都家に下宿するいきさつからさくらとの出会いはこのへんから→

 

お話が長くなっております。よろしかったら読んでやってください・・

 

 
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