そのようなわけで
(どのようなわけかは
過去の記事をご覧ください)
家の詳細の引き継ぎのために
我々はまたも『第4の家』に
足を踏み入れたのであった!

時候の挨拶などを家主さんと
愛想よく交わしたのち
真面目に屋根裏の状態や
配管の位置を確認する夫(英国人)の横で
私はもうひたすらその家の犬猫に
流し目を送っていたのでした・・・

この犬猫が私の物になったなら・・・

それはもうここがパライソ・・・!

今後への布石も兼ねてせっせと
犬猫に愛想を振りまく私をよそに
夫はただただひたすら真面目に
「ええ、次はですね、メインボイラーの
管理方法を教えていただけませんか」

「もちろんよ、電話でも言ったけど
実物を見ながら説明した方が
わかりやすいわ、台所にいらして?」

この家のボイラーはかなり旧式で大型。
夫はガスの点火の方法を確認しようと
「ではここのボタンを押すわけですね」
「そうよ、ほら、着火の音が聞こえるでしょ?
もしも音が聞こえない場合は
目で確認するわけだけど、
その場合の確認用の窓は
床にすごく近い位置にあるの、ここよ」

奥様の指示に従い
ボイラー下部の覗き窓に目を寄せる夫。

当然床に直接四つん這い。

その姿を見たこの家の若犬
(雄、2歳前後、いたずら盛り)が
もちろんこの好機を逃すはずはなく
「兄貴!アンタのそのポーズ、
それは俺にアンタのお尻の匂いを
嗅げってことですね、合点承知ッス!」
とばかりに夫のお尻に鼻先を突っ込む。

そしてこの犬は少々
唾液過多なところがあるため
「・・・妻ちゃん、ちょっとその犬を
押さえてもらえませんか、なんか僕、
嫌な湿り気を感じるんですけど!
ズボンの布地を通して!」

そんな若犬の後ろで
謙虚な眼差しでボール遊びをせがむ
おばあちゃん犬。
素晴らしいコンビネーションです。

猫たちはいつも通り
黒大猫は寝室の椅子の上で寛ぎ
その兄弟猫だという白黒猫は
お客を避けて庭に隠れておりました。

「・・・ところでうちの
犬と猫のことなんだけど」

はい、待ってました!

「もしもの場合は犬猫ニワトリ
すべて引き取ってくれると言ってくれて
本当にありがとう、感謝しています」

「いえいえいえいえいえいえ!
私ども、犬も猫もニワトリも大好きですし!」

「たぶんニワトリのことは
お世話をお願いすることになると思うの、
新しい家はここより手狭だし町中だしで
隣近所の人のことも考えなくちゃならないから」

よしっ!ニワトリ、確保!と
心の中でガッツポーズをしつつ
神妙な顔を崩さない私。

「ニワトリ、お任せください。
で、犬と猫のことですが・・・」

「そうなの。夫とも話し合ったんだけどね」
ここで眼差しを交わす現・家主ご夫妻。

「ご覧のとおり、うちの夫は最近体を悪くしてね、
引っ越しの理由の一つはそれでもあるの。
それでなくても私たちはもう高齢でしょ、
万一の場合に備えて今後のことを考えたいのね。
でもね、前にも言った通り、うちのあの犬、
おばあちゃん犬のほうね、あの子は
一度前の飼い主に捨てられているの。
そんな経験をした犬なのに、あの子は今、
すごく深く私たちのことを愛してくれているのね。
私たちはそんな子に
もう一度悲しい思いをさせたくないのよ」

ああ・・・わかります。

長期的に考えたらここで
譲渡をするのが最善かもしれないけれども、
でも確かにそういう犬に
『自分はまた棄てられてしまった』
という思いはさせたくないですよね。

「それはそうでしょうね、わかります」

「でね、もう1匹の若犬のほうなんだけど、
だからといってここであの子だけの面倒を
貴方たちにお願いするのもどうかと思うの。
若犬とおばあちゃん犬は仲良しだし、
片方だけを引っ越し先に連れて行って
片方だけを残すのって不公平じゃない?」

ぐっ・・・

そう来ましたか・・・

でも・・・わかります!

「なるほど・・・そうでしょうね」

ご夫妻の引っ越し先は町中であるものの、
ちょっと行けば公園があって
そこは犬の散歩コースには最適で、
それにもしも奥様のお加減が悪くなっても
『散歩係』を雇える環境なのだそうです。

また、奥様は口には出されなかったものの、
この2匹の犬とこの家のご主人の関係を見ていると、
もうそれは絵にかいたような『理想の犬と人の関係』。
ここでこの絆を壊すのは犬にとってだけでなく
人間側にとっても大打撃になるだろうな、という・・・

ご主人は最近大病なさったそうですし、
そんな危ない橋は奥様も渡りたくなかろうな、と。

「貴方がうちの犬のことを好きになってくれて
引き取る意思を示してくれて本当に嬉しかったわ、
私たちもやっぱりあの子たちのことが好きなの。
だから犬たちは引っ越し先に連れて行こうと思うの。
ごめんなさいね、わかってちょうだいね」

「いえいえいえ。謝っていただくことでは。
犬たちの気持ちになれば
そのほうが混乱と負担も軽いでしょうし・・・」

「わかってくれてありがとうね。
で、猫のことなんだけどね」

犬のことは諦めた!

しかしそれならばせめて猫だけでも!

続く!


犬たちとご主人のアイコンタクトが
もうなんというかすごいんですよ

「マスター!大好き!構って!
触って!遊んで!大好き!
(以下、永遠に繰り返し)」みたいな

関係の間に入り込む
隙間がそもそも存在しない的な

うん・・・あれを見ちゃったらね・・・

その犬、くださいとは言えない・・・

まあ猫に関しても
それはそうなんですけど・・・

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