ところで投票後に
一緒に食事をした韓国淑女が
ふと私を見詰めて呟くに
「私・・・まだ日本に
行ったことがないのよ」

「あら、そうですか」

「ええ、これは不覚よね・・・
どうして私は日本に
行ったことがないのかしら、
行くべきじゃない!ねえ!
行っていてしかるべきでしょ?」

ど、どうでしょうか!

私が返事をするその前に
彼女の隣に座っていた
スコットランド紳士が
「でもどうして君はそんなに
日本に行きたいんだい?」

もっともなその質問に
彼女はあきれたような視線を返すと
「え?私の話、聞いてた?
私は日本に行きたいって言ってるの、
日本に行きたいのなんて当たり前でしょ、
理由なんて聞いてどうするの?」

いやー、わが母国をそこまで
買い被っていただいて
(注:謙遜表現)
ありがとうございます。

とりあえずここは
スコットランド紳士に加勢するか、と
「いや、でもそこに何か
明確な理由は有ったりするの?
あれを見たいとかこれを食べたいとか」

私の言葉に韓国淑女は
しばし考え込んでから
「そう尋ねられると答えるのは難しいわ。
何もかも見たいし何もかも食べたいのよ。
私の周囲で日本に行ったことのある人は
皆、口を揃えて言うのよ、
『日本はなにもかも完璧だった』って・・・
だから何を見てもいいし
何を食べてもいいんだと思うの、
だって何をしたって完璧なんでしょ?」

韓国淑女のその発言を聞いた
スコットランド紳士は目を丸くして
「へえ、日本ってそんなにすごいの!」

ここでわが夫(イングランド人)が
「まあ正直、日本はすごいと思うね」

あ、そろそろちゃんと謙遜しないと
日本文化的に恥ずかしいところだわ、
と冷静に悟った私はここで
「いや、でも日本は
物価が高いですからねえ」

私の言葉に韓国淑女と
スコットランド紳士は何か
深く納得したかのような面持ちで
「ああ、なるほど、物価ねえ・・・」

しかし私の心配りが
いまひとつ理解できなかったのか
ここでまたわが夫が
「いや、物価が高いといっても
それはロンドンやパリ、
ニューヨークと同レベルでしょ?」

「いや、『同レベル』って君、
ロンドンやパリ、ニューヨークは
相当物価が高い都市でしょ!」

夫は軽く頭を左右に振ると
テーブルに身を乗り出して
韓国淑女とスコットランド紳士に
「いいですか、君たち、確かに
日本の物価はロンドンと同程度。
たとえば電車賃なんかは
ロンドンと東京でちょうど
同じくらいと言えるかもしれません。
しかし!その同程度の値段で
利用者が受けられる
サービスの内容は段違いです!
『電車は9時20分発です』と
日本の駅で表示されていたら
その電車は絶対に
9時20分に発車するのです!
ロンドンのように遅延・運休が
当たり前なんてことはありません!」

「へえー!」

「電車バスだけではありません、
日本のホテルの宿泊代は確かにそれなり、
でも絶対にお風呂ではお湯が出て
掃除はすみずみまで行き届いていて
廊下ですれ違うホテルの従業員は
丁寧にお辞儀をして挨拶をするのです、
ロンドンで『24時間しっかり
たっぷりお湯が出る』ホテルが
何軒あるのか、と僕は問いたい!」

「うん、確かにそれがその通りなら
日本はすごいところだ、完璧だ、
そんな場所には誰だって行ってみたい!」

「よかった、私の気持ちが
貴方にもわかってもらえたのね!」

盛り上がるイングランド人と
スコットランド紳士と韓国淑女を前に
私は静かに食事を続けたのでした。

だって下手に相槌なんて
うてないじゃないですか!これ!


お笑い業界で言うところの
『前フリが厳しすぎる』状態というか

前評判が高すぎるのも困りものな
気がするのは私だけでしょうか
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