母鳥ガチョウに放置されたたまごから
ヒナを取り出すことには成功したものの、
ドクター!患者の体温が上昇しません!
また全身の羽毛も湿ったままです!
という状況のヒヨヒヨ個体を
人はいかにして救うことができるのか!

(ここまでのお話は
これまでの記事をご参照ください)

(なお、この週末に更新がなかったのは
ヒナの運命とはまったく
関係のない事情によるものです)

ガチョウ育成経験者である
わが夫(英国人)いわく、
これは人間でいうところの
『低体温症』と同じ状態、
とにかく温めることが大事です!
とのことなので、ひたすらストーブ前で
己の手ごとヒナをあぶる私。

こんにちは、世界


ヒナはもう全身これ
『冷やしガチョウはじめました』的
涼感に満ちていたわけですが、
「特に君は足が冷たいぞ」

冷え性の方には実感として
ご理解いただけるでしょう、
足先の冷えは致命傷・・・!

本能に基づきヒナの足ヒレを
まずは集中的に温めてみたところ、
あら、この子、だんだん私の手を
蹴り返してくるようになったわ・・・

(最初のうちは足を
思うように動かせなかったらしく
足先の爪部分が
目に引っかかるなどしていた)

「よしよし、体を動かせるように
なったのはいい兆候だ」

ヒナはそのうち私の手のひらの中で
もぞもぞと寝返りを打つような
仕草を見せるようになり、
同時にくちばしで自分の体のあちこちを
ぐりぐりと擦(こす)りはじめました。

そして何度かそうした動きを繰り返すと
しばし目を閉じて休憩。

短い休憩を終えると目を開け
またもぞもぞ・ぐりぐりの動きを再開。

時折小さな鳴き声も聞こえるように。

しかし私としてはもう少し
この子に体温が欲しいところ。

だってストーブで温まったそばから
濡れ羽に体温を奪われているような・・・

人間が低体温症になった場合、
衣服が濡れていたらまずは
着替えを勧めたいところなのですが
ガチョウのヒナの場合はねえ・・・

濡れた羽を毟るわけにもいきませんし・・・

「『生まれたばかりのヒナの
羽毛は濡れています』という話は
テレビや本で何度も目にしているが、
その後その羽はどうやって乾くのかね?
自然に乾くものではないのかね?」

私の質問に答えるそぶりも見せず
(当たり前です)、ヒナはひたすら無心に
もぞもぞ・ぐりぐりを繰り返す。

えーと、もし私が母ガチョウな場合、
こういう時はどうするのかしら?

たぶんヒナは母ガチョウのお腹と
藁(わら)の間に挟みこまれる形で
このもぞもぞ・ぐりぐりを実践する。

その時に母ガチョウのお腹の羽毛が
ヒナの毛の水を吸い取るのかしら?

いや、ガチョウのお腹はああ見えて
けっこう水を弾くもの。

藁もなあ、保温効果はあるだろうけど
吸水効果はそれほどのものかなあ。

一応私もヒナの身体を
ガーゼで拭いたりはしてみたのですが
・・・うーん、どうしても全体の
ぺっとりした濡れ感はそのままです。

「君のこの毛がホワホワになったら
君の身体ももっと温まると思うんだけどなあ」

呟きながらヒナの様子を
じっと観察していたところ、
私はあることに気が付きました。

ヒナは先ほどから翼の下を
せっせとくちばして擦っていたのですが
・・・その部分だけ微妙にこう・・・
羽が乾き始めていませんか、君?

「もしかして『くちばしで擦る』ことによって
孵化した後のヒナの羽は乾くものなのか?」

もしもそうなら私も多少は手伝えるはず。

そして、そう、ほら、母ガチョウって
なんとなく卵から孵ったばかりのヒナを
クチバシでぐりぐりする印象がありません?

あれがもしかすると非常に
大事な動きだったりするのでは?

では試みに、と、ヒナのお腹の毛をつまみ
指でそっと水気を拭ってみる私。

こういう時に乾燥肌は便利ですね、
これで水分が取れる仕組みならば
絶対的に今、水気は
飛んでいるはずですからね!

・・・しかし残念、ヒナの毛は
まだまだくったりと濡れたまま。

えーと、ヒナがそうやっているように
何度も同じ動きを繰り返せばいいのかしら?

しかし何度か毛をしごいてみても
どうしてもあのフワフワ感は出てくれない。

これは何かが間違っている。

というわけでヒナの動きを
もう一度より注意深く観察することに。

ヒナは己のくちばしを
脇の下、というか翼の下に突っ込むと
がしっという感じで濡れた毛を齧り
そして全力で頭を横に振る。

プルプルプル!

・・・私は羽の『毛の流れ』に沿って
指を動かしておりましたが
(つまり習字の筆の水気を
紙で取る時のように
毛の根元から毛先へと
指を動かして水を絞ろうとしていた)、
もしかして
求められる動きはその逆・・・?

物は試し、とヒナの毛を再びつまむと
今度は指先で『こより』を作るような感じで、
つまりヒナの毛が習字筆の毛の部分なら
「そんな扱い方をしたら筆が駄目になります!」
と絶対に先生に叱られる方向に力を加えて
擦るべし!擦るべし!擦るべし!

・・・全国2万人のガチョウマニアの皆様
(数字は適当です)、私のこの発見は大正解!

指を離すと同時に現れる
ホワホワかつフワフワした黄色い毛の塊!

もう本当にね、どういう仕組みなのだか
ポワッとふわふわの花が突然咲くように
しっかり水気のとんだ羽毛が現れるの!

ヒナも何かを感じたのか
このあたりから俄然鳴き声を上げ始め、
もうそこからはヒナと偽母鳥の共同作業。

全身がくまなくホワホワになったところで
私はヒナを小さな箱の中に入れ
(箱の中には湯たんぽ代わりの
温水をつめた瓶と布と新聞紙が入れてある)
己の手を洗うことにしました。

まあ、その・・・

なんだかよくわからない
分泌物が全体にね・・・

そしてこの状況を待っていましたとばかりに
わが夫が外仕事から帰宅したのでありました。

その後の顛末とフワフワ状態の
ヒナの写真は明日に続く!


鼻の粘膜の弱い方はティッシュなど
ご用意なさった方がいいレベルの
凄まじい写真の数々を
明日はご覧いただける見通しです

ヒヨコ教の皆様、お待たせいたしました

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