ある日、夫(英国人)が
至極当然のような顔をして
「そうだ、そろそろ『007』の新作を
観に行かないといけませんね。
来週あたり映画館に行きましょうか」

・・・何なのか、その歯磨きレベルで
『やって当然、観て当然』なスパイ映画の扱いは。

というわけで、行ってきました映画館、
観てきましたよ『スペクター(Spectre)』。

映画館に行くこと自体が久々であるため
チケット売り場で
無駄にキョロキョロしておりましたら
窓口のお姉さんが笑顔で
「こちらの上映回では広告及び予告編は
約20分を予定しておりますのでご了承ください」

・・・はい? 

何が20分ですって?

「すみません、それはどういう意味ですか?」

「チケットには15時40分上映開始と
記載されておりますが、これはつまり
15時40分に映写室が暗くなりまして、
そこから20分間ほど広告や新作映画の
予告が流れることになっております。
映画本編が始まるのは16時過ぎです」

私と夫は16時に席に座りましたが
そこからさらに10分間、
本編とは全く関係のない画像
スクリーンには流れ続けておりました。

これ、子供は絶対に飽きるような・・・

まあ『007』は大人向け作品なので
そこらへんは成人の忍耐を基準にしているのか・・・

それにしたって30分間広告鑑賞って
それはどうなんですかね、広告マニアには
たまらない時間かもしれませんけど
30分あったら人間
色々他のこともできますよね。

ともあれ。

『007』最新作『スペクター』、
主演は当然ダニエル・クレイグ。

上映時間は148分。

・・・さて。

クレイグ・ボンドの魅力の根源は
それまでのジェームズ・ボンド作品にあった
「・・・気持ちはわかるけど
ストーリーはご都合主義だし
アクションは陳腐だし設定は荒唐無稽だし
まあでも身内で楽しむぶんには
それでいいのかしらね?
結局こちらは内輪ウケ映画ですものね?」的
残念感を一気に吹き飛ばした斬新な脚本と
リアリズムを追求した見事な演出と演技、
そして非難のしどころがない
息をのむようなアクションシーン、
そうしたものにあったかと思うのですが、
何かしら、今回のこの作品、その・・・

クレイグ・ボンドがなんとなく
これまでの旧ボンドに似てきちゃったというか・・・

『引きずられちゃった』というのかしら・・・

物語に説得力を与える
クレイグ兄貴の肉体美は健在ですし
アクションシーンのキレは
過去3作に劣ることは決してないのですが、
オープニング曲が流れる場面とか、
わかるんです、旧作に敬意を払おうとした
その意図はわかるんです、でも、でもね、
センスがなんか微妙に70年代臭すぎるというか、
そもそも007シリーズのオープニングって
『今時そう来るか』感に満ちているわけですが、
でもダニエル・ボンド第一作『カジノ・ロワイヤル』では
『古さを抑えつつ絶妙に新しい』印象をオープニングで
観客に与えることに成功していたのが今回は・・・

成金趣味的ゴールド色を背景に
仁王立ちするダニエル・クレイグ、
今回は第4作ということでサービスなのか
乳首もしっかり露出するその背後から
ダニエルにすがりつき肌を撫でまわす美女ふたり、
演出意図はわかる、とてもよくわかる、
そしてその演出の目指すところを
主演男優としてダニエルは追及しただけ。

演出側として狙ったのはたぶん
『ミステリアスさとセクシーさの混在』、
最低でも高級化粧品会社の新作香水の
プロモーション映像程度の出来は!
みたいなことだったと思うのですが、
ああ、何がどうしたというのでしょう、
結果として出来上がった絵面は
香水というよりも制汗剤のテレビ広告、みたいな・・・

あなたの腋の香りにオナゴはトリコ
新感覚制汗剤「スペクター」、新発売


いえ、わかるの!

ボンドが制汗剤を目指したのではなく
世間の制汗剤CMが
ボンドを目指していることはわかるの!

でもね、シルエットで浮かび上がる
美女の肩や腕にタコ足がするする伸びる、
あれを見て『北斎:蛸と海女』を
やはり日本人としては連想せずにはいられない
この逃げ場のなさときたら・・・!

しかもそのタコ足の動きが
それこそ70年代円谷特撮風で、
何故そこにもう少しお金をかけない!

しかしボンド贔屓であるわが夫に言わせますと
「あれはですね、旧作へのオマージュ、敬意、
もしくはパロディですから、あれでいいんです

「いや、でもタコのスミで
セクシーを演出するって発想はどうよ」

「ボンドのオープニングとして
セクシーは演出せねばならないものです、
だからあれで問題はまったくないのです」

「・・・でもさ、絶対的にあれは
『古臭かった』よね?オープニングの
始まりから終わりまで、あますところなく

「妻ちゃん、あれは『古臭い』のではありません、
『レトロ』、懐古趣味です。わかりますね」

夫よ、何なんだ君のその
ジェームズ・ボンドに対する忠誠は!

まあこんなこと書いていますが
お客さん、どうせ観るならこれは
大画面で観るほうがいい映画ですよ。

テレビ画面で観たらせっかくの
豪勢なアクションシーンの迫力が
半減してしまうと思うので。

『007 スペクター』、日本では
12月4日に公開だそうです。

勝手広告としてボンドネタは
明日も続きます。

♪でーれっててって、てんてーん!


もしも映画館に足を運ばれる場合、
可能ならばクレイグ・ボンド過去4作、
少なくとも1つ前の『スカイフォール』は
観ておいた方が
より物語を楽しめると思います

観ていなくても大丈夫なんですけど
途中で過去作品への言及があるので

それにしても夫と
007映画を観ていて何が楽しいって
アクションシーンになると夫の手が
必ず汗ばむ、あの条件反射です

なんかもう興奮して心拍数が上がって
発汗してしまうらしいです

ジェームズ・ボンド、恐ろしい子・・・!
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クレイグ・ボンドは
『男の裸もサービスです』みたいな
潔い開き直りがあって
私はそこは認めているんですが
でも別に無理してまで
脱いでくれなくてもいいのよ、本当


「007/スペクター」オリジナル・サウンドトラック/ユニバーサル ミュージック
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007/ダニエル・クレイグ DVDコレクション(3枚組)/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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過去3作を一気に観れてこのお値段、
というのはお徳とは思うんですけど
でも世のファンは皆、クレイグが
ボンドを引退してからこういう
コレクションDVDを買うんじゃないか、と

・・・まあうちの夫のような
とにかくボンドなら大喜びな人が
こういうものを買ったり
もらったりするのであろう

ジェームズ・ボンドは景気にも優しい

ボンド、本当に恐ろしい子・・・!