11月5日はガイ・フォークスの夜。

 

ガイ・フォークス氏の詳細については

過去にも何度か記事にしておりますので

今回その説明は省くことにいたしまして、

まあとにかくこの日は英国全土で

焚火と花火が夜空を照らすのでございます。

 

山向こうに住むご近所さんは毎年

それはそれは見事な焚火と

花火を主催することで有名で

「今年は19時に焚火に点火の予定だよ。

よかったら見に来ないかい」

 

焚火と花火を愛する私は一も二もなく

お招きを受けることにいたしました。

 

さてご近所さんの家へは

我が家から車で20分ほどかかります。

 

「でもそれは道がぐるりと

山を迂回しているからですよ。

山を突っ切れば移動距離は

もっと短くて済みます」

 

「距離が短くなると言っても

山には車道が通っていないだろ」

 

「そうですね、我が家からあのお宅まで

山を歩いて25分くらいでしょうか。

でも今日はすごくいいお天気で空も澄んでいて

風は少し強いですが山道は木で覆われていて

・・・朧月の下焚火を目指して夜道を行く。

すごくロマンチックな行為だと思いませんか」

 

夫(英国人)のこうした戯言には普段

決して耳を傾けない私ですが

昨日はちょっと焚火と花火に

心を奪われ過ぎており判断を誤りました。

 

最初の15分ほどは何とかなったのです、

街灯もない夜道ではあったものの

地面はある程度砂利で固められていましたし。

 

そこから森林地の防火帯に

入っていくことになったのですが、

背の高い樹木が森林火災の延焼防止のため

短く切り倒されているのはいい

(ところどころに切り株が残っていて

それが足を引っ掛けてくれるけれども)、が、

その跡に人の顎までの高さの雑草がはびこり、

月明かりは森の木に遮られて届かず、

しかもここらへんは雨がちな地域なものだから

そこここに滑りやすい苔が生えていて

・・・ヘンゼルとグレーテルも

心細かったことだろうなあ・・・

 

 

 

 

「あ、妻ちゃん、気を付けてください。

そこ、少し横に大穴があいています」

 

「大穴というかこれは

干からびた沼の跡地じゃないか!」

 

『不幸な事故』『保険金殺人』という言葉が

脳内を駆け巡りはじめた私に夫は

「確かに沼の跡地ですけど、でも

干からびきってはいません、ですので

もっと危険です、気を付けてください」

 

『干からびきっていない沼』の危険性を

私はこの会話の数分後に

体で確かめてしまいました・・・

 

映画『スワンプ・ウォーター』の一場面を

瞬時に思い出してしまう恐怖でした。

 

 

 

道なき道を進むこと15分(気温3度)、

「おい、そろそろ私は限界だ。

この場合の限界とは体力的なそれだけでなく

精神的なそれも意味する。どうにかせんと君は

非常に機嫌を損ねた私と夜道で二人きりという

ある意味とても危険な状態に陥ることになるぞ」

 

「妻ちゃん、もうすぐ、もうすぐです!」

 

「こういう状況における君の『もうすぐ』を

信用するほど私も初心な人間ではない」

 

「いえ、本当にもうすぐ!そこを右に行ったら

目指す先の焚火が見えますよ!」

 

驚いたことに夫の言葉は本当でした。

 

ご近所さんの焚火は本年も物凄く

実際自宅に延焼しかねない勢いで、

それに続く花火は質量ともに申し分なく

何発かは何かの手違いで水平方向に発射され

大騒ぎを引き起こしたのでありました。

 

・・・帰り道は行きより多少楽でした。

 

強くなっていく自分が悲しい秋の夜です。

 

 

ガイ・フォークスの夜は

英国の消防隊が一番忙しい日と

言われています

 

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