スーパーの精肉売り場の

お兄さんの眉毛をまじまじと

見詰めてしまった罰でしょうか、

私の眉毛が行方不明になりました。

 

いえ、ちゃんと以前と同じように

目と額の間に生えてくれてはいるんですけど

眉山ですとか眉尻の位置ですとか

ちょきちょき切りそろえているうちに

何が正しいのかわからなくなってしまいまして。

 

手入れを開始する前に比べ

全体の細さが半分に、

長さが3分の2になったところで

これはもしや危険な領域

片足を突っ込んでいるかもしれない、と

理性の力でハサミを手放し

翌日に某デパートの化粧品売り場へ。

 

 

 

 

基礎化粧品を購入するついでに

売り場のお姉さんに

「あの、ちょっと眉の形を

見てもらいたいんですけど」

 

「はい、ではこちらへお座りください」

 

「高さを揃えているうちに

正しい形がわからなくなってしまって。

眉山の位置はここでいいですかね」

 

「ちょっとよく見せてくださいね・・・

ええ、眉山の位置は正しいです。

『元の眉』の形としてはこれで正解で、

そうですね、お客様の場合、さらに

全体にもっと色を入れて眉を

濃くすればそれで・・・描いてみましょうか」

 

「あ、お願いします」

 

イメージ顔面:

 

「鼻に近い部分と眉山までは

お客様の描き方で問題なしで、そうですね、

眉の終わりの部分、ここはですね、

鼻の小鼻から目じりに向かって線を引いて

その延長に終わりが来ると

一番いいと言われていますね。

あ、ちなみにこちら、新色の口紅と

シャドウになります、お試しください。

で、もっとアイライナーを濃く入れてですね、

上にぼかしを入れて・・・はい、これが

お客様の『正しい眉毛』の形です」

 

 

いや、これ、眉毛

目立ちすぎていません・・・?

 

 

 

 

「・・・もう少し・・・短い方が

自然・・・な感じではないですかね」

 

「いいえ、これで自然で最適です。

お客様の描いていらした眉は

正直長さが足りませんでしたね」

 

「はあ、しかし・・・これは眉毛が

顔の中で非常に目立つというか・・・」

 

「ええ、ですがこれは

『いい目立ち方』ですよ」

 

隣の売り場にいた

香水係のお姉さん達までもが

仕事の手を休めてこちらを向いて

「・・・ああ!これは『いい眉』ね!

お客様、これは会心の出来ですよ」

 

「そ、そうですか?」

 

「ちゃんと流行の形ですし、

しかもお客様の顔の形に

ぴったり合っています。

これがお客様の求めるべき眉です」

 

・・・私、この美人集団に

からかわれているんじゃないかしら・・・?

 

とりあえずお姉さん方にお礼を言って

お店を出たのですが私はもう自分の眉が

気になって気になって仕方がない。

 

すみません、世間の皆さんすみません、

眉毛の主張が激しくて済みません!

 

しかし待ち合わせ場所で顔を合わせた

わが夫(英国人)はそんな私の眉毛の

暴走に気付いた素振りも全くなく

「買い物、終わりましたか?じゃあ帰りましょう」

 

「いや、その前に、君、私の顔で

何か気が付いたことはないか」

 

「・・・これ、僕が何かに気が付かないと

君が怒り出したりする状況ですか」

 

「そんなこともないが・・・うん、君、

私のこの眉毛についてどう思う」

 

「眉毛?眉毛について?どう思うか?

どうもこうも・・・そこにちゃんとありますよ?」

 

訊ねた相手がいけなかったことは

私も重々承知しているのではありますが

しかし私は明日からどんな眉毛を

顔に載せるべきなのか。

 

眉毛の神様のご加護を祈る冬の夜です。

 

 

冬は帽子必須の社会においては

あまりに技巧的な眉を描くのも

危険といえば危険でございまして

 

だってこすれて

取れちゃうじゃございませんか

 

お洒落は我慢と申しましても

物には限度があるのでございます

 

アーティフィシャルな眉が

お好きなあなたも

自然な眉毛をお好みのあなたも

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