雑種犬ボブ（仮名）へのわが恋が
犬のブリーダー情報を集めつつ
某保護犬収容施設に足を運んでは
善意の『お散歩ボランティア』の仮面を被って
実のところは己の犬欲を満たしている
北国スコットランドのひきこもりNorizoです。
施設で運命の子と出会えたら
その子を引き取る気は満々なんですけど
いや、本当にそういう子を
引き取りたいんですけど・・・
いないんです・・・！
ボブを越えるだけの魅力を持った子には
未だ出会えていないんです・・・！
新しい恋を始めるにあたって
ひとつ前の恋の影を引きずり過ぎるのは
良策ではない、というのは
わかっているんですけれども。
わかってはいるんですけれども。
久々に施設に足を運んだその日
「犬の散歩は久しぶりなので
扱いやすい子を紹介してもらえますか」
「いいわよ！あなた、力はあるほう？
ちょっと『引っ張る』癖のある子は大丈夫？」
「えー、そうですね、なるべくなら
『引っ張らない』犬を希望したいかな、と・・・」
私のお散歩相手に選ばれたのは
頭が私の腿まである大柄な茶色の犬で
体は絞り込まれた流線型、短毛、
顔は丸く鼻は低く・・・いわゆる『平らな顔族』で
ちょっとまぶたが重い感じの雄犬君。
小型の土佐犬、みたいな風格さえあり。
そしてまたこの子がこっちと力比べをしたがって
これでもかと綱を引っ張ってくるんです・・・！
負けてなるかとこちらも膝を軽く曲げて
全身の力で相手を制御しようとしたのですが
ちょっと気を抜くとこっちが渾身の力で
かかとを力点に踏ん張っているにもかかわらず
ズルズルズルーと引きずられるような局面もあり
・・・この子は引退した荷役犬か何かなの・・・？
細身なのにえらい力だ！
しかし最初の５分でなんとか相手に
『こっちの言うことを聞かないなら
外出は中止』という基本原則を理解させ、
そこからはかなり楽しく足並みをそろえて
お散歩をすることができたのですが、散策経路が
後半にさしかかった時にそれは起きました。
私の脚が魅力的過ぎたのが
いけなかったのでしょうか、
この駄犬め、
わが右足に欲情しやがり・・・！
「こら！いけません！」
そう言って首輪に手をかけて引き離すと
素直にしゅんとした顔をして見せるものの
その眼は明らかに不満そうで
「ええやないですかい、脚の１本や２本。
そんな脚をこっちの鼻先にちらつかせる
そちらさんが悪いのと違いますかい。
ワシは誘いに乗っただけですがな、
悪いのはお宅さんじゃありませんかい」
・・・お前、万が一我が家に引き取られたら
間違いなくうちの猫たちにも
そういう態度をとるだろう・・・？
「お前が引き取り手を探している犬だとしてもな、
残念ながら私は名乗りをあげないぞ。
お前と私は今日これっきりの付き合いだ。
あともう二度と私の脚にしがみつくなよ」
不満げにこちらを上目使いに眺めつつ
それでも犬はお座りの姿勢のまま
尻尾で２回ばかり地面を叩いたので
それを同意のしるしと散歩を再開した私。
３分後、そこにはまた私の脚に
強烈な執着を示す大犬の姿が・・・！
「お前は！駄目だと言ったでしょ！」
「知りませんがな！そっちが悪いんですがな！
ワシは悪くありません、むしろ被害者ですがな！」
「貴様のそれは性犯罪者の理論だ！」
振り返って考えますに、あれは
本当いったい何が悪かったのか・・・
１．私の犬あしらいが下手すぎた
２．私の脚がセクシーすぎた
３．犬の性欲が強すぎた
真面目に考えて『１』の可能性が高すぎて
かなり落ち込んだ私でございますが、
その後他の犬と散歩をしても
このような問題は全く起きていないため
・・・相手をあまり悪しざまに罵りたくはないけれど
あれはやはり犬側に問題があったとちゃうんかい。
なおこちらの犬は現在
『引き取り手募集中』ではなく
「飼い主が短期的に『犬の飼育が
不可能』な状態になったので
期間限定で当施設でお預かりしているの」
・・・あんな性欲過多犬を
問題なく飼育できる飼い主の器量とは。
明日も私は新しい恋を探しに
保護犬収容施設に向かうのです。
そういえばこの犬も未去勢でした
英国は未去勢犬が多いのか
それとも結果的に
未去勢状態で飼育される犬が
こういう保護施設に
回されてくる傾向が強いのか
それにしても私の運命の犬は
今どこに隠れているのかなあ
わが犬運の向上を願いつつの
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