保護犬収容施設で続けております

わが運命の犬探しの旅。

 

つまり『お散歩ボランティア』なる

素敵な立場を利用して

犬たちと親睦を深めつつ、

これは、という犬がいたら

即座に我が物にしてしまおうという

鉄壁の一挙両得無敵作戦。

 

そんなわけでその日も私は

「えーと、『引き綱を引っ張る犬』は苦手なんですが

かといって『走る気のない犬』もつまらない、いえ、

その・・・歯応えがない、と申しますか・・・

元気だけどマナーは良し、みたいな子がいたら

お散歩相手にご紹介いただきたいんですけど」

 

言いながら私はふと思ったのでございます、

この自分のこの態度、犬相手だから笑い話ですが

結婚相談所か何かでなかなか運命の相手に

出会えない人ってきっとこんな感じなのではないか、と・・・

 

仕事ばかりして家庭を顧みない人は嫌、

あ、でも仕事に対して覇気のない人も嫌、

仕事は好きでしっかり稼ぐけど趣味が家事で

ついでに社交的な人をお願いします!みたいな。

 

しかしこの紹介所、もとい、保護施設はすごかった、

私のこの我が儘に係の人は鼻を鳴らしつつも

「はい、じゃあこの子はどう?」

 

紹介されたのは雄犬で

肩の高さが私の腿くらい、顔は丸顔、

体は絞られた流線型、

短毛、色は白地に茶色のブチ。

 

面差しは例の性欲過多犬

似ていないこともないのですが

この子はもう少しそこに柔和さがある感じ。

 

でもこの大きさの犬が

本気を出して綱を引っ張ると

私の力では対抗できないんだよな、

と思いつつ散歩を開始しましたところが!

 

この雄犬はちゃんとこちらの速度に

合わせて歩ける頭のいい子で

名前を呼べばちゃんと振り向くし

走り出せば楽しげに尻尾を振るし

「止まれ」も「お座り」も理解するし。

 

「君はきっとさっさと

貰われ先を見つけるだろうね。

見た目も聞き分けも非常にいいし」

 

お世辞を言うと

嬉しそうに体を揺らすのもいい感じ。

 

でも残念ながら私の『運命の相手』ではない。

 

何故ならボブ(仮名)にあの時感じた

情熱的な衝撃を私は受けていないから。

 

いや、真面目にいうとこの子はサイズが

私の希望より少し大き過ぎましてね、

私はもう少し小柄な、中型犬がいいんです。

 

でも英国の一般社会においては

君のサイズは理想的であること間違いなし

・・・この子はどうして

まだ貰い先が決まっていないんだ?

 

大きさも見た目も色味も性格も問題なし

・・・問題なしだからこそを疑われる、みたいな?

 

でも『良い子』だよなあ、この子・・・

 

犬の玄人が見ると何かあるのかなあ・・・?

 

唯一気になったのは1回の散歩で

整腸行為を複数回必要としたことで

つまり何と申せばいいんですか、

肛門のキレが悪い、という・・・

 

ただそんなのは散歩の時間を

長めにとればいいだけの話でしょ?

 

そういうものでもないのですか?

 

散歩を終えて彼の引き綱を係に渡しながら

「良い子でした。排泄にちょっと時間を

要する感じであったのが気になりましたが」

 

「ありがとう、獣医さんに伝えるわ。

きっとストレスが原因だと思うけど。

この子、前の診断でそう言われているの」

 

「この子、ものすごく良い子なんですけど、

どうしてまだ貰い先が見つからないんですかね?

すぐにでも売れそうな子じゃないですか」

 

「そうなの、良い子でしょ?まあ貰い先が

決まる・決まらないはそれこそご縁だから・・・」

 

「ストレス以外に『留意点』はない犬なんですか?」

 

「そうね、あえて挙げるとすれば年齢かしら」

 

「はあ。いくつなんですか、この子」

 

「老犬なのよ、この子。19歳

 

じっ・・・十九歳?

 

続く。

 

 

SWEET 19 BLUES SWEET 19 BLUES
2,807円
Amazon

 

 

 

じ・・・十九歳?

の1クリックを

人気ブログランキングへ