2.26.2009

出戻りできない 「シリアの花嫁」



あの高原をごらん・・ などとオヤジギャグを飛ばせないほどに、 ゴラン高原はいま悲痛な状況にあるようだ。 イスラエルがこの地を占拠してから、 '元' シリア人にはイスラエル国籍を取得する権利が与えられているが、 そう簡単に "はい、 ありがとう" とはいかないだろう。 シリア人でもイスラエル人でもない無国籍のパスポートなんてものが存在するのだ。 一旦イスラエル人になればシリアへの入国は難しくなり、故国であるシリアへ嫁ごうものなら、 もう二度とここに住む両親や兄弟には会えないのだ。 それでも幸せを求めて国境を越える花嫁と、 それを送り出す家族の物語。

家族各人の問題も取り込んだグランドホテル形式になっていて、 説明も少ないので正直わかりにくかった。 しかしそれらの問題のほどんどが領土問題に起因するようで、 結婚式当日にもビザのスタンプひとつでイスラエル・シリア両国の担当官がもめて、 UNが右往左往するも結局 入国は許可されない。 このバカバカしいやりとりこそが問題のすべてなのだと。 映画を製作したのはイスラエルということから、 イスラエル内にも批判的な意見のあることを窺い知ることができる。

領土問題以外に、 アマルという '元' シリア人女性の意識の変化も大きく取り上げられる。 これから大学へ行って学ぼうとする彼女を、 妻が勉強なんて男の沽券に関わるのでやめてくれと夫は言う。 "宗教上、演技は許されない" 女は、 あなたたち男が作った世界は今このありさまよ、 と言わんばかりに強い意志を持って状況の打開に向かっている。 つまらない意地の張り合いで入国を拒否された花嫁も、決めた道を後戻りはできないと歩き出す。

中東情勢に一歩詳しくなると同時に、 山積みの問題をかかえている人にも何らかの励みをくれる作品に違いない。


シリアの花嫁 (2004イスラエル・フランス・ドイツ) 日本公開2009.02.21〜
The Syrian Bride 公式サイト&予告編 
監督 エラン・リクリス *モントリオールグランプリ 
ヒアム・アッバス クララ・フーリ マクラム・J・フーリ 
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