12.03.2009

夢の残骸を洗う 「サンシャイン・クリーニング」



夏に見逃して悔やんでいたが今 見ることができた。 タイトルに反して冬のほうが似合う映画という気がする。 DVDリリースにはまだ早かったようだがエントリーしておく。

リトル・ミス・サンシャイン」 のスタッフが贈る、 と宣伝されていたのは覚えているが、 よく見てみると製作者の数人が同じだけで監督も脚本 その他も、 ぜんぜん違うではないか。 サンシャインという言葉とサンダンス系というだけで引っかけてるのか。 。

内容もかなり違って 「リトル・ミス・・」 のような弾けた部分はないが、 後になって思い出すことの多いシーンのある映画だと言える。 しょっぱなから、 弾丸だけを持参して銃刀店を訪れる男。 手に取った銃に弾を込めて自らの顎に当て・・ というショッキングなシーンで始まる。 けっして太陽サンサンではなく、 それはあくまでタイトルの綾、 社名の下に Since 19xx などと書いて信頼感を補強する 'ビジネス上のレトリック' と同じニュアンスで捉えればいい。

しかし何をやっても上手く行かない人というのはいるのだ。 と人ごとのように言ってるが。 。 アメリカで本作が公開されたのは2008年の初頭であり、 その頃の気分を思い出して見ないと変に暗さだけが印象に残るかもしれない。 姉妹、 あるいは家族の物語であり、 姉妹の母は、 二人が幼少の頃に自殺している。 姉ローズとともにバイオハザード・クリーニングをモグリ起業して、 クライアント宅を清掃中にふとその記憶をフラッシュバックさせてしまう妹ノラ。 母は映画に出てたの、 と自慢げに語るノラ。 だが母のセリフは "お薦めはペカン・パイです" の一言だった。

母の役柄と同じウェートレスの仕事をクビになったノラは、 姉の仕事を手伝いながらも、 その部屋で亡くなったのが誰かの母だと知って、 部屋に残された子供の頃の写真、 そこに写っている娘に "あなたの母さんが死んだのよ" と伝えたくなる。 それは規則違反の行為だったし、 結果として "飲んだくれの母のことなんて どうでもいい" との返事が返ってくるだけのことだったが、 死者はいつも母にリンクしていた。

最近 殺人や自殺が多くて、 この手の清掃業者は流行るよ、 とローズに教えた男は、 ハイスクール時代からのボーイフレンド。 ローズはチアリーダーで高校時代は輝かしい日々を送ったが、 男は別の人と結婚、 にもかかわらず関係は続いている。 そう言えば、 死体洗いのバイト、 なるものが一時期 流行った。 あれは都市伝説とのことだが、 これは現実にニーズがあるものと思われる。

姉妹の父は、 小学生の孫にはビジネスの心得を説くくせに、 自分は失敗ばかりを重ねてきたような男で、 いまは海鮮品の横流し的なことをしているが、 今回もバスタブで大量のエビを腐らせた。 この男の孫であり姉の息子は学校で問題ばかりを起こし、 薬物治療を勧められたので学校には行かせないことにする。

こうして、 ざっと書き出すだけでも太陽サンサンとは裏腹な内容が見え隠れすることだろう。 あげくの果てには、 そうして起こしたビジネスも大きな負債を抱えてしまうこととなる。 この先、 彼らに行く道はあるのか。 最後は、 ほんの一抹の希望の光が差し込まれたところで終わる。 「リトル・ミス・・」 を期待して見に行った人は概ね期待外れな感想を持ったようだが、 それは宣伝が間違っているのだ。

世の中には一生かけても見切れない数の映画が存在し、 かつ毎月毎年 追い切れないほど作られるわけで、 そんな多くの映画の中から、 わざわざこの二つの映画を関連させる必要はまったくないと言える。 彼女たちが始めた素人ビジネス以下のことを平気でやる配給系のノイズは 一旦シャットアウトした映画とのつきあい方を試みたいものだが、 そう心がける自分もノイズに毒されてるわけだから なかなか難しい。

ノラが鉄橋を駆け上がり、 走る列車のレールの下で叫ぶシーン、 ラスト近く、 テレビで放送される母の映画・・ このあたりはグッと来る。 スクリーン上の母役はallcinemaのクレジットには出て来ないがマリア・ボーヴェという人。 見直すと他にも味わい深いニュアンスが何通りも再発見できそうな作品なので、 今年を何とか生き延びた人は来年早々にでも、 それを祝う意味で見てほしい^ ^



サンシャイン・クリーニング SUNSHINE CLEANING (2008) 日本公開2009 
監督 クリスティン・ジェフズ  公式サイト 
エイミー・アダムス エミリー・ブラント アラン・アーキン 
ジェイソン・スペヴァック クリフトン・コリンズ・Jr マリア・ボーヴェ 
サンシャイン・クリーニング [DVD][DVD]


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