1.25.2010

魂のキャプテン 「インビクタス」



ネルソン・ロリハラハラ・マンデラ・・ 敬意を表してミドルネームも表記してみた^ ^ そして70にして なお "征服されざる" 多作男イーストウッド。 今回はモーガン・フリーマン製作総指揮、 自ら主演のもと、 再び素晴らしい映画を届けてくれた。

南アフリカの話と聞いて、 アパルトヘイトはすでに過去のようにも思え、 また唐突にそっちに行くのだなと思ったが、 物語はマンデラの大統領就任から始まる。 予想に反して社会派には行かず、 スポーツへと話は展開する。 しかし これこそが、 マンデラという人を語るには最良の物語だったのだ。

アパルトヘイト反対を唱えたことで国家反逆罪として27年間 投獄される。 にもかかわらず解放されてすぐ、 投獄した者を許す。 多忙な国務の合間にラグビーを観戦、 解体が叫ばれる自国の弱いチームに肩入れをする。 このラグビーチームのキャプテンがデイモンだが、 黒人の大統領が誕生し、 白人の自分は追い出されるのだろうと思っていた彼は、 マンデラの次の言葉により、 それはとんでもない誤解だったと悟る。

We must exceed our own expectation.

自分が思う以上の自分になれ、 というようなニュアンスだろう。 そのためにはインスピレーションが大事なのだよ、 と よくわからないことを言っては、 1年後 自国で開催されるラグビー・ワールドカップでの善戦を引き出そうとする。 本来であれば予選落ちのチームに、 これほどまでに多大な期待をかけてくる。 27年間の苦難を乗り越えてきた人の、 希望を見る力、 それは確かにキャプテンの心に伝搬した。

この国は変わる、 だから俺たちも変わるんだとチームにハッパをかけ、 実際に快進撃を始める。 最低だったチームが生まれ変わり、 準決勝、 決勝へと進む。 テレビ中継を見守る人々は変化を肌で感じる。 貧しいスラムの子供はパトカーのラジオを盗み聞きしながらも、 いつしか警官と抱き合って勝利を喜ぶ。 これこそがマンデラが狙っていたものだったのだ。 しかし政治的手腕と言うよりは、 国際会議の席でもゲームの勝敗が気になる、 人間マンデラの姿がそこにはあった。

アメフトやサッカー、 野球はあっても、 ラグビーの映画は珍しかったし、 イーストウッド演出は これまた力強いスクラムのシーンを見せてくれる。 気負いや空回りのない、 ストレートかつ、 インスピレーションのある映画だ。 マンデラがヘリコプターでグランドに降り立つシーンにかかる音楽のせいで、 一瞬70年代の香りがしたり、 いかにも この役がやりたかった、 という顔のフリーマン。 2時間10分も短く思えた。

ネルソンとキャプテンの関係を軸にしながら もう一方、 マンデラのセキュリティを務めるスタッフにもスポットが当たる。 最初は慣れない黒人と白人の混成チームが、 やがては信頼でつながるようになる。 映画は一言で言えばリーダー論、 いま変化のときであるこの国で、 果たしてどのような反響が生まれるだろうか。

最後にもう一つ、 素敵なセリフを。 "どんなにつらい事態でも 私の魂が征服されることはなかったことを神に感謝する。 私こそは、 私の運命の主であり、 私の魂のキャプテンなのだ。"


インビクタス 負けざる者たち Invictus (2009) 2/5〜 公式サイト&予告
監督 クリント・イーストウッド 原作 ジョン・カーリン  象のロケット 
モーガン・フリーマン (製作総指揮 兼) マット・デイモン 

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