部屋へ行くと

じいちゃんはベッドへ横になっていた。

 

 

布団や枕カバーには

昨夜の大騒ぎの名残か

少しだけ血が付いている。

 

縫うほどではなかったとはいえ

多少の出血はあったようだ。

 

部屋はカーテンと窓が開けられ

外から爽やかな風が入っていた。

 

ここに入所してすぐの頃

 

 

昼夜に関わらずカーテンと窓がピッチリ閉められており

いつも薄暗い部屋で寝ていたじいちゃん。

ショート滞在中からその傾向だったが

 

おそらくスタッフの気長な働きかけがあったのだろう。

やっと素直に穴倉から出てくる気になったか。

 

深い眠りではなかったようで

一声かけると

 

 

じいちゃんはすぐに目を覚ました。

 

聞いてみると今回は転んだことの自覚はあるようだ。

 

 

昼間起きている時は自覚があっても

眠りから覚めてすぐは自分一人では歩けないことを

忘れてしまうらしい。

 

脳内は完全に昔歩けていた頃に一旦戻り

 

 

「ワシ、そう言えば歩けなかったんだ」と気づいた時には

ひっくり返ってる。・・・そんな感じ。

 

数年前頻発していたばあちゃんの『覚醒』の場合は

身体の方は元々動ける力が残っているので

 

 

時に

思わぬ力を発揮して

普段では出来そうもないことが出来てしまう

 

それとは少々勝手が違うようだ。

 

・・・まぁ

どっちにしても厄介だけどね。

 

 

 

一郎がこの老健にじいちゃんを見舞うのは

この日が初めてだ。

 

孫の見舞いに

じいちゃんちょっぴり嬉しそう。

 

一郎も

気長にじいちゃんの『いつもの話』に耳を傾けてくれた。

 

 

結局

施設に入ってしまえば

見聞きするのはこの小さな世界の

中だけのものになってしまう。

 

テレビをみても

新聞を読んでも頭に入っていかないし

 

たとえお隣の国からミサイルが飛んで来たとしても

じいちゃんにとっちゃ、どーでもいいこと。

 

何度も聞いた老健内での話ばかりが続いて

 

で、最終的には

 

 

ここに行きつくのだ。

 

 

小一時間くらい話をしていたら

 

 

 

昼食の時間になった。

 

フロアへ連れて行って

じいちゃんの席につかせ

 

 

ワタシたちは帰ることに。

 

この日は最後まで

「ロープ持って来てくれ」は

出てこなかった。

 

 

 

いろいろ難しかったじいちゃんだけど

だいぶ体力は落ちてるようで。

 

孫の前でカッコつけられるだけ

『まだマシ』ってことかしらね。

 

 

 

取りあえず

 

何とか無事な様子で

一安心。

 

 

 

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