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~ナースえいや三十にして立つ~
アメリカでCNA→ICU RN→NP

ラスベガス銃乱射事件①ERがドアを閉める時

2017-11-03 00:43:22 | 【アメリカ】RN(看護師)
今回の乱射事件については
色々と書きたいことがありますが
何せ、家庭に仕事に学業に忙しくて
なかなかブログまで手が回らないのが実情です。
忘れないうちにボチボチ書いていきたいと思います。
(でも次回はいつになるか不明(^^;))

私の勤務する病院は
事件現場から一番近い病院かつ
トラウマセンター(外傷センター)でもあるので
運ばれてきた患者さんは最も多かったです。

少し離れた所(車で5分くらい)にも
同規模の病院/トラウマセンター(A病院とします)があるんですが
この病院は100人受け入れたのに対し
うちの病院は200人にも上りました。

ここで私が不思議に思ったこと。
同じような規模の病院、
しかも両方ともトラウマセンターなのに
なぜ100人もの違いが出てくるのか?と。

救急車で運ばれてきた人もいますが
自家用車やタクシーなどで運ばれてきた人も多く
一般の人から見れば
「一番近い病院へ」となるのは至極当然。
そこが100人の違いだったのかな~?と思っていたところ
事実は全く違いました。










A病院/トラウマセンター、
運ばれてきた被害者が100人を超えたところで
それ以上の受け入れを停止しました






その分うちの病院に来た人が多かったのもあるようです。
これは全く報道されていないので知る人は少ないです。
こういった大規模な災害時において
病院の機能・能力を超えてしまった場合には
患者の受け入れを停止する事は合法なのだそうです。

私はこの話を聞いた時に
EMTALA的にはどうなんだ?と疑問に思ったんですが
EMTALAは支払い能力に応じて
患者の受け入れを拒否してはいけないという法律なので
こういった事態には適応されないとの事。
支払い能力に応じて拒否しているわけではなく
全ての人に対してERのドアを閉ざしているので
差別しているわけでもないし
合法的な措置なんだそうです。

それを聞いた時は衝撃的でしたが
よくよくA病院のキャパを考えてみると
この対応は仕方無かったのかも。
私の勤務病院も、この病院も、
提供できるサービスやベッド数など
規模的には同じくらいです。

ただ、決定的な違いは
うちの病院は市内に姉妹病院が2つあるから
軽症な患者はそちらへ搬送することが可能。
そして、姉妹病院にも外傷患者の手術が出来る外科医がいるので
その人達にも応援を頼んでOR(オペ室)フル回転だったし、
姉妹病院のナースも動員して
外傷患者の対応に当たりました。

対して、A病院には姉妹病院がないので
軽症患者の搬送も出来なければ
応援を頼めるような外科医やナースもいない。
基本的に自分たちで全て回さなければいけない。

もちろん、必要があれば、
姉妹病院、提携病院に関係なく
病院間で患者の搬送は出来るはずです。
非常事態ですし。

ただ、医療業界の常をお話ししますと、
Higher level of careを理由に
患者さんを病院間で搬送する事はあっても、
高度医療を提供できる病院から
設備や提供できるサービスに限度のある病院への搬送は、
あまりないんですね。

少なくとも、うちの病院は
Higher level of careで市内からも州外からも
患者さんを受け入れる側の病院なのですが、
うちの病院から他の病院への搬送はほぼゼロです。
あるとしたら、患者さんの健康保険が
うちの病院をカバーしない時に
他の病院へ搬送することもありますが
あくまでも、その患者さんの容態が安定していて、
なおかつ、搬送先の病院でも管理出来るような
比較的安定した患者さんであることが前提です。
この辺の話は複雑なアメリカの医療システムの話になるので
これ以上の言及は控えますが
私が言いたかったのは
A病院から他の病院への搬送は
ほぼ行われることがないだろうな、ということ。

あくまでも私の推測でしかありませんが、
今回の事件の患者の重症度を考えると、
100人以上を受け入れるのは
A病院のキャパ的には難しいと判断したのでしょうね。
だからこそ、その100人の患者さん&他の患者さんの
安全(Safety)を考えてERのドアを閉めざるを得なかったのだと思います。

こういったMass Casualty Incident(多数傷病者事故)は
なかなか経験するものではありません。
この経験を通していろいろ学ぶことが多く、それを糧に、
看護師としてもナースプラクティショナーとしても
今後に活かせていけたらと思っています。


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2 コメント

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ベストを尽くしてくれて (きよたけ)
2017-11-06 15:34:07
ありがとうございました!
これが、お世話になったご本人と関係者の気持ちでしょう。世の中それぞれに、いろんな都合がありますよね。
今回のような事が、テキサスの方でまた起きているようです。えいやサンも、気を付けて引き続き仕事に家庭に頑張って下さいね。
きよたけさん (えいや(管理人))
2017-11-08 04:58:31
最近はLV、NY、TXと痛ましい事件の連続で心が痛いです。不運にも巻き込まれてしまった被害者の方、ご家族の方が本当に気の毒でなりません。医療従事者として命を救えるように最善を尽くしますが医療には限度があります。そこが一番苦しいですね。救いたい命を救えない時の悲しさ、無力さ、無念など、色々複雑に感じるものはありますが、これからも最善を尽くしていくのみです。ありがとうございます。

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