毎シーズン、国内だけでも約1千万人が感染する季節性インフルエンザウィルスは、医学・公衆衛生上、最も対策が必要な病原体の1つです。ワクチンは、インフルエンザの予防法として最も有効ですが、発症を完全に予防することはできません。

治療法として、体内でのウィルス増殖を抑える抗インフルエンザ薬が開発されていますが、近年は抗インフルエンザ薬に耐性を持つウィルスが流行するようになりました。また、肺で強い炎症を起こし、肺炎の重症化メカニズムの解明なども含め、インフルエンザウィルスを制圧するための課題は山積みです。

一方、インフルエンザウィルス研究において、生体内でのウィルスがどの細胞に感染しているか、感染細胞を判別することは、最も重要で基本となる情報の1つです。

今度、東京大学医科学研究所の河岡義裕教授と福山聡特任准教授らは、4種類の蛍光タンパク質を発現するインフルエンザウィルス「Color-flu(カラフル)」の作製に成功しました。カラフルは蛍光タンパク質を利用して感染細胞を光らせるので、インフルエンザウィルスの感染によって起こる炎症など、生体内でウィルス感染が広がる様子をさまざまな手法で画像分析することが可能となります(2015年3月25日リリース)。

本研究グループでは「インフルエンザ制圧を目指した次世代ワクチンと新規抗ウィルス薬の開発」プロジェクトが昨年より開発されており、本研究成果は革新的なインフルエンザ治療薬の開発などに役立つことが期待されます。