脳や脊髄の障害後の死亡原因の第1位は感染症です。免疫機能の低下により感染症にかかると考えられますが、免疫機能が低下するメカニズムは不明でした。

今度、科学技術振興機構の上野将紀さきがけ研究員、シンシナティ小児病院の吉田富准教授、オハイオ州立大学のフィリップ・ポポビッチ教授らの研究グループは、脊髄損傷後に起こる免疫機能の低下が、免疫を制御する神経回路の異常な活動により引き起こされることを発見しました(2016年4月19日リリース)。

本研究グループは、免疫器官である脾臓と接続する神経回路に着目しました。脊髄損傷により一度神経回路が破綻すると、免疫器官を制御する神経回路が、脊髄内で代償的に新たな回路網を形成することを見い出しました。

さらに、新たな回路内での神経細胞の活動を遮断すると、免疫機能の低下が回復することも明らかにしました。

本研究は、脳や脊髄の中枢神経障害後に神経の作用が元で起こる免疫機能低下の新たな病態のメカニズムを明らかにしました。神経系を制御して免疫機能を改善する新たな治療法の開発につながると期待されます。